見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
712 / 826

七一一

しおりを挟む
 俺は使者をボードから降ろした。

「必ず後悔するぞ!」

 使者は最後にまた同じ事を言った。
オオムカデンダルがしないと言ったらしないだろう。
まあ、それを俺が言っても詮無い事だが。

「さっきオオムカデンダルが言っていたが、俺たちは誰も排除していない。商売したけりゃ誰でもして良いんだ。王国の商会や商売人も受け入れる。代わりに何かを要求してもいない」

 一応俺は一言言っておいた。
彼が理解するかどうかは判らないが、ま、一応だ。

「俺たちのする事は放っておいた方が得策だと思うぞ。どうせ俺たちは世界をどうこうしようだ等とは思っていないからな」

 使者が疑わしい目で俺をねめつける。

「はっ!悪党の言う事など信じられんわ!」

 その悪党に正式な文書を持って通告に来たのは誰なんだよ。
と言う事は言わずにおこう。

「だが、王女は何故こんな奴らにわざわざ……」

 使者はそう独りごちる。
彼も一応疑問には思っていたのか。

「まあ、信じる信じないは相手の決める事だ。だが我々は退かないぞ。来るなら覚悟して来る事だ」

 俺はそう言い残して、返事も聞かずにボードを滑り出させた。
こう言うのはあんまり話しても意味が無い。
ましてや、ただの伝令役と行動隊長ではな。
俺はそのままアジトへと戻った。

 広間へと戻る。
組織は忙しいが俺個人はする事が無い。
何かを手伝おうとしても、大丈夫だからと住民が遠慮してやらせてくれない。
かと言って作戦も今の所は無い。

「あー暇だ……」

 俺は椅子に座るとテーブルに突っ伏した。

「たまには良いんじゃねえか?お前ずっと何かしてるもんな」

 カルタスが隣の席で果物を頬張りながら言った。
カルタスの前には大きな皿に山盛りの果物が乗っていた。
もう半分ほど無くなってはいるが。

「そうね。少しは休息だと思ってのんびりしたら?」

 オレコもそう言って珈琲を口にした。

「何かしてないと、余計な事ばかり考えちまう」

 俺は何を見るでも無く、焦点を合わせる事も無いままにそう言った。

「そうそう、どうせまたヘタレヴァルキリーがちょっかい出して来るだろうから、少し休んでろ」

 オオムカデンダルが椅子をクルクル回転させながら言う。
また来るの?
でもまあ、住民であれだけ対応出来るんだから問題ないだろ。
俺の出番はどうせ無い。

 と言うか、あれだけヤられたらもう来ないんじゃないのか。
普通は手出ししないと思うが。

「普通はな」

 ヴァルキリーは普通の考えはしないのか?
いや、オオムカデンダルにとってもヴァルキリーの事なんか何も知らないだろう。
思わず納得しそうになった。

「何故そう思うんだ?」

 俺は何気無く根拠を尋ねた。
オオムカデンダルの事だ、どうせ根拠なんて無いんだろうが。

「だって、ほれ。あれ見てみ?」

 オオムカデンダルが巨大モニターをアゴで指した。
そこには地図が映し出されていて、何かが光っている。

 この地図は、ひょっとして王国周辺か。
じゃあこの光点は?

「生体反応」

 オオムカデンダルが興味無さそうに答える。
生体反応?
何の?

「人間は青、それ以外は黄色、それとも違うのは赤」

 ほとんど青だがわずかに黄色が点在している。
家畜かペットか野良か。

王国の外側に大量に光っているこの赤は、じゃあ何なんだ。

「だからそれ以外だって」

 オオムカデンダルは椅子の回転を止めて俺を見た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。

聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな
ファンタジー
 ティアラ・クリムゾンは伯爵家の令嬢であり、シンクレア王国の筆頭聖女である。  そして、王太子殿下の婚約者でもあった。  だが王太子は公爵令嬢と浮気をした挙句、ティアラのことを偽聖女と冤罪を突きつけ、婚約破棄を宣言する。 「聖女の地位も婚約者も全て差し上げます。ごきげんよう」  父親にも蔑ろにされていたティアラは、そのまま王宮から飛び出して家にも帰らず冒険者を目指すことにする。  

魔王統譚レオサーガ・ラシード伝 ~聖戦の獅子王~

鳳洋
ファンタジー
遥か遠い昔、神に背いて楽園を滅ぼした一人の男がいた。 禁断の果実を取って食べたその男は恐るべき魔人【ゼノク】と化し、その血に刻み込まれた魔性の呪い――ゼノクの力は彼の子孫たちへも受け継がれることになった。 それから永い時が流れ――世界は動乱の時代を迎えていた。 聖地エスティムの奪回を掲げ、アレクジェリア大陸の諸国は神の名の下に連合軍を組んで東方のラハブジェリア大陸へと侵攻。 折しも、激戦が続くエスティムの街では超人的な力を持った怪物たち――ゼノクの出現が相次いで報告される。 そんな中、エスティムの攻略を目指すリオルディア王国軍のメリッサ・ディ・リーヴィオ伯爵は、防戦するアラジニア王国軍のマムルークであるラシード・アブドゥル・バキという記憶喪失の青年と戦場で出会い、十年前に死んだはずのリオルディア王家の落胤レオナルド・オルフィーノの面影を彼に見るのだが…… 渦巻く戦乱と怪異。 神に背いた原罪がもたらす流血の時代に果たして終わりは訪れるのか。 神々と人間たちがかつてない戦いを繰り広げる混迷の世紀が、今始まる!

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜 誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。 スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。 そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。 「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。 スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。 また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。

当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

千技の魔剣士 器用貧乏と蔑まれた少年はスキルを千個覚えて無双する

大豆茶
ファンタジー
とある男爵家にて、神童と呼ばれる少年がいた。 少年の名はユーリ・グランマード。 剣の強さを信条とするグランマード家において、ユーリは常人なら十年はかかる【剣術】のスキルレベルを、わずか三ヶ月、しかも若干六歳という若さで『レベル3』まで上げてみせた。 先に修練を始めていた兄をあっという間に超え、父ミゲルから大きな期待を寄せられるが、ある日に転機が訪れる。 生まれ持つ【加護】を明らかにする儀式を受けたユーリが持っていたのは、【器用貧乏】という、極めて珍しい加護だった。 その効果は、スキルの習得・成長に大幅なプラス補正がかかるというもの。 しかし、その代わりにスキルレベルの最大値が『レベル3』になってしまうというデメリットがあった。 ユーリの加護の正体を知ったミゲルは、大きな期待から一転、失望する。何故ならば、ユーリの剣は既に成長限界を向かえていたことが判明したからだ。 有力な騎士を排出することで地位を保ってきたグランマード家において、ユーリの加護は無価値だった。 【剣術】スキルレベル3というのは、剣を生業とする者にとっては、せいぜい平均値がいいところ。王都の騎士団に入るための最低条件すら満たしていない。 そんなユーリを疎んだミゲルは、ユーリが妾の子だったこともあり、軟禁生活の後に家から追放する。 ふらふらの状態で追放されたユーリは、食料を求めて森の中へ入る。 そこで出会ったのは、自らを魔女と名乗る妙齢の女性だった。 魔女に命を救われたユーリは、彼女の『実験』の手伝いをすることを決断する。 その内容が、想像を絶するものだとは知らずに――

処理中です...