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七一一
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俺は使者をボードから降ろした。
「必ず後悔するぞ!」
使者は最後にまた同じ事を言った。
オオムカデンダルがしないと言ったらしないだろう。
まあ、それを俺が言っても詮無い事だが。
「さっきオオムカデンダルが言っていたが、俺たちは誰も排除していない。商売したけりゃ誰でもして良いんだ。王国の商会や商売人も受け入れる。代わりに何かを要求してもいない」
一応俺は一言言っておいた。
彼が理解するかどうかは判らないが、ま、一応だ。
「俺たちのする事は放っておいた方が得策だと思うぞ。どうせ俺たちは世界をどうこうしようだ等とは思っていないからな」
使者が疑わしい目で俺をねめつける。
「はっ!悪党の言う事など信じられんわ!」
その悪党に正式な文書を持って通告に来たのは誰なんだよ。
と言う事は言わずにおこう。
「だが、王女は何故こんな奴らにわざわざ……」
使者はそう独りごちる。
彼も一応疑問には思っていたのか。
「まあ、信じる信じないは相手の決める事だ。だが我々は退かないぞ。来るなら覚悟して来る事だ」
俺はそう言い残して、返事も聞かずにボードを滑り出させた。
こう言うのはあんまり話しても意味が無い。
ましてや、ただの伝令役と行動隊長ではな。
俺はそのままアジトへと戻った。
広間へと戻る。
組織は忙しいが俺個人はする事が無い。
何かを手伝おうとしても、大丈夫だからと住民が遠慮してやらせてくれない。
かと言って作戦も今の所は無い。
「あー暇だ……」
俺は椅子に座るとテーブルに突っ伏した。
「たまには良いんじゃねえか?お前ずっと何かしてるもんな」
カルタスが隣の席で果物を頬張りながら言った。
カルタスの前には大きな皿に山盛りの果物が乗っていた。
もう半分ほど無くなってはいるが。
「そうね。少しは休息だと思ってのんびりしたら?」
オレコもそう言って珈琲を口にした。
「何かしてないと、余計な事ばかり考えちまう」
俺は何を見るでも無く、焦点を合わせる事も無いままにそう言った。
「そうそう、どうせまたヘタレヴァルキリーがちょっかい出して来るだろうから、少し休んでろ」
オオムカデンダルが椅子をクルクル回転させながら言う。
また来るの?
でもまあ、住民であれだけ対応出来るんだから問題ないだろ。
俺の出番はどうせ無い。
と言うか、あれだけヤられたらもう来ないんじゃないのか。
普通は手出ししないと思うが。
「普通はな」
ヴァルキリーは普通の考えはしないのか?
いや、オオムカデンダルにとってもヴァルキリーの事なんか何も知らないだろう。
思わず納得しそうになった。
「何故そう思うんだ?」
俺は何気無く根拠を尋ねた。
オオムカデンダルの事だ、どうせ根拠なんて無いんだろうが。
「だって、ほれ。あれ見てみ?」
オオムカデンダルが巨大モニターをアゴで指した。
そこには地図が映し出されていて、何かが光っている。
この地図は、ひょっとして王国周辺か。
じゃあこの光点は?
「生体反応」
オオムカデンダルが興味無さそうに答える。
生体反応?
何の?
「人間は青、それ以外は黄色、それとも違うのは赤」
ほとんど青だがわずかに黄色が点在している。
家畜かペットか野良か。
王国の外側に大量に光っているこの赤は、じゃあ何なんだ。
「だからそれ以外だって」
オオムカデンダルは椅子の回転を止めて俺を見た。
「必ず後悔するぞ!」
使者は最後にまた同じ事を言った。
オオムカデンダルがしないと言ったらしないだろう。
まあ、それを俺が言っても詮無い事だが。
「さっきオオムカデンダルが言っていたが、俺たちは誰も排除していない。商売したけりゃ誰でもして良いんだ。王国の商会や商売人も受け入れる。代わりに何かを要求してもいない」
一応俺は一言言っておいた。
彼が理解するかどうかは判らないが、ま、一応だ。
「俺たちのする事は放っておいた方が得策だと思うぞ。どうせ俺たちは世界をどうこうしようだ等とは思っていないからな」
使者が疑わしい目で俺をねめつける。
「はっ!悪党の言う事など信じられんわ!」
その悪党に正式な文書を持って通告に来たのは誰なんだよ。
と言う事は言わずにおこう。
「だが、王女は何故こんな奴らにわざわざ……」
使者はそう独りごちる。
彼も一応疑問には思っていたのか。
「まあ、信じる信じないは相手の決める事だ。だが我々は退かないぞ。来るなら覚悟して来る事だ」
俺はそう言い残して、返事も聞かずにボードを滑り出させた。
こう言うのはあんまり話しても意味が無い。
ましてや、ただの伝令役と行動隊長ではな。
俺はそのままアジトへと戻った。
広間へと戻る。
組織は忙しいが俺個人はする事が無い。
何かを手伝おうとしても、大丈夫だからと住民が遠慮してやらせてくれない。
かと言って作戦も今の所は無い。
「あー暇だ……」
俺は椅子に座るとテーブルに突っ伏した。
「たまには良いんじゃねえか?お前ずっと何かしてるもんな」
カルタスが隣の席で果物を頬張りながら言った。
カルタスの前には大きな皿に山盛りの果物が乗っていた。
もう半分ほど無くなってはいるが。
「そうね。少しは休息だと思ってのんびりしたら?」
オレコもそう言って珈琲を口にした。
「何かしてないと、余計な事ばかり考えちまう」
俺は何を見るでも無く、焦点を合わせる事も無いままにそう言った。
「そうそう、どうせまたヘタレヴァルキリーがちょっかい出して来るだろうから、少し休んでろ」
オオムカデンダルが椅子をクルクル回転させながら言う。
また来るの?
でもまあ、住民であれだけ対応出来るんだから問題ないだろ。
俺の出番はどうせ無い。
と言うか、あれだけヤられたらもう来ないんじゃないのか。
普通は手出ししないと思うが。
「普通はな」
ヴァルキリーは普通の考えはしないのか?
いや、オオムカデンダルにとってもヴァルキリーの事なんか何も知らないだろう。
思わず納得しそうになった。
「何故そう思うんだ?」
俺は何気無く根拠を尋ねた。
オオムカデンダルの事だ、どうせ根拠なんて無いんだろうが。
「だって、ほれ。あれ見てみ?」
オオムカデンダルが巨大モニターをアゴで指した。
そこには地図が映し出されていて、何かが光っている。
この地図は、ひょっとして王国周辺か。
じゃあこの光点は?
「生体反応」
オオムカデンダルが興味無さそうに答える。
生体反応?
何の?
「人間は青、それ以外は黄色、それとも違うのは赤」
ほとんど青だがわずかに黄色が点在している。
家畜かペットか野良か。
王国の外側に大量に光っているこの赤は、じゃあ何なんだ。
「だからそれ以外だって」
オオムカデンダルは椅子の回転を止めて俺を見た。
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