見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七一〇

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「自分で突っ掛かって来てボコボコにされた上、思い知ったかってか。センスあるな」

 オオムカデンダルが改めて噴き出すように笑った。

「あの王女思ったよりも面白い」

 笑っている場合か。
ふざけた内容でも王国の正式な命令だぞ。

「命令?誰に?まさか俺たちにか?冗談は止せよ」

「な、なな……不敬であるぞ!」

「なあにが不敬だ。さっきまでレオに抱えられてたじゃないか」

 オオムカデンダルが半笑いで使者を見据える。

 しかし、何故こんな事をするのか。
俺たちが奪ったと言うならまだしも、この街はもともと王国の物では無い。
しかも完全敗北したのに賠償を俺たちに求めるのか。

 どう言う事なんだ。

「西の繁華街は、我々カッパー王国が担う重要な貿易拠点の場を奪ったでは無いか!」

 使者が突然大声を張り上げた。

「……それで?」

 オオムカデンダルが悪びれもせずに問いただす。

「そ、それでだと!」

「それがどうしたのかと聞いているんだ。商売とはそう言う物じゃ無いのか?これまで王国がしてきた事を今度は俺たちがやるってだけだ。何の問題があるんだ」

 使者は顔を紅潮させた。
しかし、オオムカデンダルは構わずに続ける。

「他にも商売したい奴はたくさん居ただろう。それを許さずに独占してきたんじゃないのか?自分は良いが他人は駄目とは神様じゃあるまいし。いや、神様でも俺は認めんが」

「な、なななんと不敬な……ッ!?」

「良いか、帰って馬鹿王女に伝えろよ。『文句があったら掛かってこい』ってな」

 また子供みたいな事を。

「王女は聖女様でもあらせられるのだぞ!貴様のような悪党など……!」

「……悪党など?」

 オオムカデンダルがギラリとした視線を使者に向ける。

「く……くくっ」

 使者が言葉に詰まった。
圧が半端じゃない。

「ま、良いさ。どうせこの件は俺たちの勝ちだ。泣こうが喚こうが揺さぶろうが、こちらは無視で良い。王国に出来る事など何も無い」

 本当にそれで良いのか。

「あのヘタレヴァルキリーが聖女などとのたまっているのが笑えるが」

「聖女様に対して何と恐れ多い……!」

「普通の一般人にはとても効果があるようだな。聖女効果とでも名付けるか」

 オオムカデンダルはまったく意に介していない。

「さ、用件が済んだなら帰った帰った。こっちも暇じゃ無いんでね。なんせ交易が盛んで忙しいったらありゃしない」

 オオムカデンダルはオーバーに額の汗を手の甲で拭う素振りを見せた。

「くくぅ……!後悔するぞ!」

「後悔なんかしないさ。それに独占しているつもりも無い。俺たちは王国から紙一枚奪っちゃいない。みんなが勝手に集まって来たんだ。つまり王国は今までボリ過ぎたんだよ」

 オオムカデンダルはそう言うと、手のひらをヒラヒラと振った。
もう行けと言う事らしい。
俺は憤慨する使者を連れて、再び麓まで送り届けた。

 それにしても冷静に考えれば、うちの組織は親切だな。
まさか送迎付きとは。
俺はしみじみそう思った。
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