見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七〇四

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「敵の数はいくつだ?」

「およそ一万と二千程度と思われます」

「一二〇〇〇か。ま、初陣には丁度良いか」

 管理人の報告にオオムカデンダルは一人ごちた。
一二〇〇〇だぞ。
初陣には荷が勝ち過ぎだろ。

「問題ない」

 オオムカデンダルは平然とそう言ったが、西の繁華街の住民は、先日ようやく六〇〇〇を越えた所だぞ。
それまでは三〇〇〇人弱の小さなスラムと繁華街だったのだ。

 全員かき集めても、良いところ四〇〇〇ちょっとだ。
全員が戦闘員な訳では無い。
子供も年寄も居る。

 本当に大丈夫なのか。
俺は不安にかられた。

「量より質だよ。どの程度やれるか良いテストだ」

 オオムカデンダルは全く動じていなかった。
俺は黙ってモニターを凝視した。

 街の中心にある高い塔。
鐘を鳴らす為の鐘楼だ。
それが、そこから更に十数メートル伸びた。

 目測で三〇メートルはあるだろうか。
めちゃくちゃ高い。
この辺りであれより高いのは皇帝の居城だけだ。
どうやって造ったんだ。

「驚くのはまだ早い」

 蜻蛉洲が言う。
まだ何かあるのか。

 俺が驚く間にも、鐘楼は姿を変えていく。

「なんだありゃあ……」

 ガイが呟く。
鐘楼の前部が開き、砲身らしきものが現れた。
まさか、撃つのか。
あそこから?

 あの高さならどこまでも届くだろう。
どうせ蜻蛉洲が造ったモノなのだ。
射程も馬鹿みたいに長いのは、聞かなくても想像できる。
しかし、どんな口径だ。
見たこともないほど巨大だ。
俺の知っている大砲などとは比べ物にならない。

「一発撃ったら勝負は決まるな」

 オオムカデンダルが笑う。

「撃たんだろう。一応念の為に準備しているだけだ」

 蜻蛉洲が言う。
本当か。
撃つんじゃないのか?

「ま、撃っても構わんが」

 あれ一発で何人死ぬのか、想像もつかない。

「全員配置についたぜ!」

「こっちもいつでも構わないよ!」

 オヤジとおばさんが声を揃える。

「よし、全員攻撃開始!」

 それを受けて銀猫が勇ましく号令を掛けた。

 ヒュンヒュンヒュン

 繁華街の一番外側に城壁が出現する。
その壁を越えて、建物の到る所から何か黒い玉が飛んでいく。

 ドゴォーン!
ボカァーン!

 王国軍の前線が、突然爆発した。
何名も兵士が宙を舞う。

「爆発したぞ!?」

「魔法か!?」

 カルタスとガイが同時に驚きの声をあげた。

「いや、ただの手榴弾だ」

 オオムカデンダルが答える。
シュリュウダン?
また何か訳の判らん武器を与えたのか。

「訳が判らんのは知らんだけだろ。原始的な武器だ。原理を知ってりゃ誰でも作れる。それを遠くに投擲する為の道具と合わせて配っただけだ」

 だけだ……って。
必殺の威力じゃ無いか。

「こんな物はただのコケ脅しだよ。本気だったら奴らは城から出る前に死んでいる」

 オオムカデンダルはそう言って笑ったが、まったく冗談に聞こえない。
勝負にさえなっていなかった。
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