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六七七
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「理由は幾つかあるが……同性で無ければ憑依出来ない。それから波長が近くなければこれも無理だ」
誰にでも憑ける訳では無いのか。
「後は、その辺の人間では襲われた時に身を守れん。王女なら護衛も充実しているからな、少しはマシだろ?」
その為にどれだけの兵士が死ぬと思っているんだ。
「それに権力があった方が、無いよりも良いと思ってな」
もう良い。
これ以上ヴァルキリーの言う事を聞いていたくない。
「……なるほど」
オニヤンマイザーが納得したように返事をした。
「話は判ったが、それが我々に何の関係があるのかね?」
「なに?」
オニヤンマイザーが冷たく突き放した。
「まあ、百足ならおかしな事を言い出す可能性もあるが、僕は君を好きじゃない。九条晃が断った以上、僕らは君とは何の関係も無い」
「待ってくれ……!」
「いいや、待たない。僕らには『敵』か『味方』か『服従』かの三つしか無い。君は味方では無いし、敵で無いと言うのなら服従してもらうしかない。僕らの庇護の下で暮らす住民のようにだ。もちろんネオジョルトの為に働いてもらって、その替わりに守ってやると言う関係だ」
オニヤンマイザーがヴァルキリーを冷たく見据える。
「出来るかね?君に。無理だろう。神に仕える身ならば尚更だ。我々以外に仕えるべき主を持つ者などネオジョルトには必要ない。ネオジョルトにのみ服従を誓えないのなら去るが良い」
見事だ。
さすがは蜻蛉洲と言ったところか。
板に流れる水の如しだ。
「晃もそれで良いな?」
「……ああ」
九条晃はそう言うと、無言で踵を反した。
「レオ。ジャバウォックとヒポグリフを積み込んでくれ」
「あ、ああ。判った」
俺はオニヤンマイザーの言葉に慌てて頷く。
その時。
「た、大変です!」
後方から兵士が走って来た。
「どうした」
「何者か判りませんが、後方から魔物の攻撃を受けています」
「なに?ちっ……感づかれたか」
ヴァルキリーは舌打ちをした。
「ウィザードに攻撃させろ。出し惜しみするな。敵の規模は?」
「そ、それが魔法使い一人です!」
「リッチか……!」
真っ昼間からリッチが攻めて来るとは。
にわかには信じ難いが。
「伝令ー!」
更に兵士が馳せ参じる。
「魔法が全く効きません!」
魔法を操る事に関してはリッチ以上の存在は居ない。
高位魔法職であるウィザードを以てしても、リッチにとっては赤子同然だ。
魔法職ならドラゴンクラスのセイジでやっと話になるかどうかだろう。
つまり、うちの賢者サルバスだ。
それでも互角とまでは言えまい。
ウィザードが何人束になろうと敵う筈が無かった。
リッチとはそれほどの存在なのだと言う。
「た、頼む!力を貸してくれ!」
ウィザードが地面に跪いてオニヤンマイザーに懇願した。
「な、サンドラ様……!?」
兵士たちが驚いた。
無理も無い。
盗賊団と思っていたネオジョルトに、自国の王女が頭を下げたのだ。
「……」
オニヤンマイザーは無反応だ。
「……少し恩を売ってやればどうだ」
仕方無くと言った雰囲気で、九条晃がオニヤンマイザーを促す。
「頼む!」
王女は地面へと頭をくっ付けた。
山よりもプライド高いくせに、ここまでやるのか。
ヴァルキリーにはヴァルキリーで、どうしてもここでは死ねない訳があると言う事か。
「ふぅ……仕方が無い。ただし恩には着てもらう。良いな?」
「あ、ああ。判った!」
「ふふ、良い返事だな」
オニヤンマイザーはそう言うと、羽を広げて真上へと飛び立った。
誰にでも憑ける訳では無いのか。
「後は、その辺の人間では襲われた時に身を守れん。王女なら護衛も充実しているからな、少しはマシだろ?」
その為にどれだけの兵士が死ぬと思っているんだ。
「それに権力があった方が、無いよりも良いと思ってな」
もう良い。
これ以上ヴァルキリーの言う事を聞いていたくない。
「……なるほど」
オニヤンマイザーが納得したように返事をした。
「話は判ったが、それが我々に何の関係があるのかね?」
「なに?」
オニヤンマイザーが冷たく突き放した。
「まあ、百足ならおかしな事を言い出す可能性もあるが、僕は君を好きじゃない。九条晃が断った以上、僕らは君とは何の関係も無い」
「待ってくれ……!」
「いいや、待たない。僕らには『敵』か『味方』か『服従』かの三つしか無い。君は味方では無いし、敵で無いと言うのなら服従してもらうしかない。僕らの庇護の下で暮らす住民のようにだ。もちろんネオジョルトの為に働いてもらって、その替わりに守ってやると言う関係だ」
オニヤンマイザーがヴァルキリーを冷たく見据える。
「出来るかね?君に。無理だろう。神に仕える身ならば尚更だ。我々以外に仕えるべき主を持つ者などネオジョルトには必要ない。ネオジョルトにのみ服従を誓えないのなら去るが良い」
見事だ。
さすがは蜻蛉洲と言ったところか。
板に流れる水の如しだ。
「晃もそれで良いな?」
「……ああ」
九条晃はそう言うと、無言で踵を反した。
「レオ。ジャバウォックとヒポグリフを積み込んでくれ」
「あ、ああ。判った」
俺はオニヤンマイザーの言葉に慌てて頷く。
その時。
「た、大変です!」
後方から兵士が走って来た。
「どうした」
「何者か判りませんが、後方から魔物の攻撃を受けています」
「なに?ちっ……感づかれたか」
ヴァルキリーは舌打ちをした。
「ウィザードに攻撃させろ。出し惜しみするな。敵の規模は?」
「そ、それが魔法使い一人です!」
「リッチか……!」
真っ昼間からリッチが攻めて来るとは。
にわかには信じ難いが。
「伝令ー!」
更に兵士が馳せ参じる。
「魔法が全く効きません!」
魔法を操る事に関してはリッチ以上の存在は居ない。
高位魔法職であるウィザードを以てしても、リッチにとっては赤子同然だ。
魔法職ならドラゴンクラスのセイジでやっと話になるかどうかだろう。
つまり、うちの賢者サルバスだ。
それでも互角とまでは言えまい。
ウィザードが何人束になろうと敵う筈が無かった。
リッチとはそれほどの存在なのだと言う。
「た、頼む!力を貸してくれ!」
ウィザードが地面に跪いてオニヤンマイザーに懇願した。
「な、サンドラ様……!?」
兵士たちが驚いた。
無理も無い。
盗賊団と思っていたネオジョルトに、自国の王女が頭を下げたのだ。
「……」
オニヤンマイザーは無反応だ。
「……少し恩を売ってやればどうだ」
仕方無くと言った雰囲気で、九条晃がオニヤンマイザーを促す。
「頼む!」
王女は地面へと頭をくっ付けた。
山よりもプライド高いくせに、ここまでやるのか。
ヴァルキリーにはヴァルキリーで、どうしてもここでは死ねない訳があると言う事か。
「ふぅ……仕方が無い。ただし恩には着てもらう。良いな?」
「あ、ああ。判った!」
「ふふ、良い返事だな」
オニヤンマイザーはそう言うと、羽を広げて真上へと飛び立った。
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