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六七〇
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「アンタに俺たちは敵わない。ここは大人しく引き下がろうと思う。見逃してくれるか?」
隊長は平静を装って言ったが、声が微妙に震えている。
オニヤンマイザーが恐ろしいのだ。
しかしそれは正しい。
相手と自分の力の差が判らないのは、馬鹿か戦闘訓練を受けていない一般人だ。
その点でさっきの兵士は若いと言わざるをえない。
怒りに我を忘れて突っ込むのは下策だ。
「ふむ。そうだな、条件はあるが……」
「二度と僕らに刃向かわないと約束したまえ。もし、もう一度攻めてきたらその時は警告なしで殲滅する。女も王族も関係無い。根絶やしだ」
根絶やしとは、また刺激的な表現を。
「隊長!」
「これは命令だ。違反は許さん」
隊長は兵士に対して強く命じた。
こんな所で助かる命を、無駄に散らす事も無い。
なかなか出来た隊長だ。
「判った。少なくとも我々は、もうこの作戦に参加しない。寛大な処置に感謝する」
隊長はそう言うと、馬を立て直した。
全員を先に行かせてから、後ろから隊長がそれを追った。
あの隊長も管理職だもんな。
気持ちは判る。
「首尾はどうだ?」
オオムカデンダルが入ってきた。
「今、諦めて撤退して行った」
「で、恩にきそうか?」
「感謝すると言っていた。恩にはきている筈だ」
「ふむ。結構」
俺の返事にオオムカデンダルは気分を良くした。
「メタルシェルを頼む。モンスター二体だ」
オニヤンマイザーがオオムカデンダルに輸送の手配を要請する。
「判った。すぐ向かわせよう」
オオムカデンダルはそう言って通信を終えた。
「そう言えばこれまでに集めたサンプルはどうなったんだ?」
俺はオニヤンマイザーに尋ねた。
「全て冷凍保存の上、厳重に保管してある。細胞から生態に到るまで詳しく調べ上げた。なかなか満足のいく内容だ」
蜻蛉洲がここまで言うのは珍しい。
ご満悦で何よりだ。
「お陰でこの世界のモンスターがどう言う物かも少し判ってきた。モンスターが居る理由も、その進化の過程もだ」
そこまで行くと、さすがに俺にはチンプンカンプンだ。
専門的な話はパスしよう。
「ん?」
オニヤンマイザーが麓の方を見た。
なんだ?
視界には多数の反応が近付いて来るのが映し出された。
「やれやれ。もう約束を破ったのか」
そうなのか?
まさか。
しかし、反応を示す赤い光点は大軍勢を示している。
間違いなく麓で待機していた本隊だ。
あの隊長、嘘を吐いたのか。
それとも進言を受け入れてもらえなかったのか。
「……」
オニヤンマイザーは本隊が近付いて来るのを黙って見つめている。
せっかく助けてやったのに、これではオオムカデンダルにどやされる。
「本当に警告なしで殲滅するのか?」
「ああ。そう言った筈だ。彼らも理解していると思ったんだがな」
俺は少し考えてから本隊に向かって歩いた。
「レオ」
「判っている。確認するだけだ。駄目ならアンタの好きにしてくれ」
俺はオニヤンマイザーにそう返事をすると、まっすぐに本隊に向かって歩いた。
先頭に居るのはさっきの隊長たちだ。
俺に気付くと、こちらを指差して隣に居る人物に何かを告げた。
隊長は平静を装って言ったが、声が微妙に震えている。
オニヤンマイザーが恐ろしいのだ。
しかしそれは正しい。
相手と自分の力の差が判らないのは、馬鹿か戦闘訓練を受けていない一般人だ。
その点でさっきの兵士は若いと言わざるをえない。
怒りに我を忘れて突っ込むのは下策だ。
「ふむ。そうだな、条件はあるが……」
「二度と僕らに刃向かわないと約束したまえ。もし、もう一度攻めてきたらその時は警告なしで殲滅する。女も王族も関係無い。根絶やしだ」
根絶やしとは、また刺激的な表現を。
「隊長!」
「これは命令だ。違反は許さん」
隊長は兵士に対して強く命じた。
こんな所で助かる命を、無駄に散らす事も無い。
なかなか出来た隊長だ。
「判った。少なくとも我々は、もうこの作戦に参加しない。寛大な処置に感謝する」
隊長はそう言うと、馬を立て直した。
全員を先に行かせてから、後ろから隊長がそれを追った。
あの隊長も管理職だもんな。
気持ちは判る。
「首尾はどうだ?」
オオムカデンダルが入ってきた。
「今、諦めて撤退して行った」
「で、恩にきそうか?」
「感謝すると言っていた。恩にはきている筈だ」
「ふむ。結構」
俺の返事にオオムカデンダルは気分を良くした。
「メタルシェルを頼む。モンスター二体だ」
オニヤンマイザーがオオムカデンダルに輸送の手配を要請する。
「判った。すぐ向かわせよう」
オオムカデンダルはそう言って通信を終えた。
「そう言えばこれまでに集めたサンプルはどうなったんだ?」
俺はオニヤンマイザーに尋ねた。
「全て冷凍保存の上、厳重に保管してある。細胞から生態に到るまで詳しく調べ上げた。なかなか満足のいく内容だ」
蜻蛉洲がここまで言うのは珍しい。
ご満悦で何よりだ。
「お陰でこの世界のモンスターがどう言う物かも少し判ってきた。モンスターが居る理由も、その進化の過程もだ」
そこまで行くと、さすがに俺にはチンプンカンプンだ。
専門的な話はパスしよう。
「ん?」
オニヤンマイザーが麓の方を見た。
なんだ?
視界には多数の反応が近付いて来るのが映し出された。
「やれやれ。もう約束を破ったのか」
そうなのか?
まさか。
しかし、反応を示す赤い光点は大軍勢を示している。
間違いなく麓で待機していた本隊だ。
あの隊長、嘘を吐いたのか。
それとも進言を受け入れてもらえなかったのか。
「……」
オニヤンマイザーは本隊が近付いて来るのを黙って見つめている。
せっかく助けてやったのに、これではオオムカデンダルにどやされる。
「本当に警告なしで殲滅するのか?」
「ああ。そう言った筈だ。彼らも理解していると思ったんだがな」
俺は少し考えてから本隊に向かって歩いた。
「レオ」
「判っている。確認するだけだ。駄目ならアンタの好きにしてくれ」
俺はオニヤンマイザーにそう返事をすると、まっすぐに本隊に向かって歩いた。
先頭に居るのはさっきの隊長たちだ。
俺に気付くと、こちらを指差して隣に居る人物に何かを告げた。
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