見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六六一

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 俺と蜻蛉洲は外へ出る。
ここからだと敵の先頭までは、まだだいぶ距離がある。

「君は姿を消して斥候になってくれ」

「判った」

 俺は蜻蛉洲の指示に従って、敵の斥候に出た。
変身して姿を消す。

 たたたたたっ

 透明になったまま山を下る。
山頂から中腹辺りまではほぼ禿山だ。
しかし、中腹から麓辺りに掛けては緑が多くなってくる。
敵の進行ルートからすれば、雑木林を抜けて比較的木々の多いこの道を、山肌にそって蛇行しながら登ってくる筈だ。

 俺は森に入ると木の上へ飛び上がった。
そこから枝から枝へと飛び移る。
麓近くの木の上から遠くを見渡す。

 先頭から長く戦列が伸びている。
本体はずいぶん後方だな。

 先陣には騎馬が二十人といった所か。
たいした事は無いが……

 俺は後方の本体を見る。
格好からするに魔法職が結構居るな。
大規模火力と自軍の底上げを想定しているな。

 これはかなり本気の侵攻作戦だな。
殲滅戦か。
帝国に向けての物とも受け取れるが。

 しばらく待つ。
三十分ほどすると、先頭が麓へ到着した。
騎馬隊が森へと足を踏み入れた。

「奴ら迂回しないぞ。今、先陣が山を登り始めた。目標は俺たちだ」

 俺は蜻蛉洲に通信を送った。

「ふむ……僕らとやり合うつもりか」

「へへっ、盛り上がってきたじゃないか」

 オオムカデンダルが割り込んで来た。

「お前は黙っていろ。ややこしくなる」

「良いじゃないか。手出しはしない。任せるからさ」

 蜻蛉洲が神経質にオオムカデンダルを気にする。
気持ちは良く判るが、あんまり気にすると禿げるぞ。

 この先は本格的にモンスターが出没する。
特にこのルートは森が深い分、他所のルートよりも高レベルなモンスターが多い。
今の季節だとローテーション的にオウルベアや、バジリスク、それにヒポグリフ辺りが出る。

 特に注目は先々月辺りから出没しているヒポグリフだ。
グリフォンに馬を足したかのような見た目で、ライオンの足が馬の足に置き換わっている。
とにかく気性が荒く、スピードが尋常では無い。
昼と夜で姿が代わり、変身時に苦痛を伴う事から明け方と日没時に荒れ狂う。

 ネオジョルトでも改造人間以外のメンバーは、ヒポグリフを相手にする事は極力避けていた。
何故ならメタルシェルで飛行していても、ヒポグリフの荒れ狂っている時間は空まで追ってくるからだ。

 メタルシェルのスピードに追いすがり、体当たりを仕掛けてくる。
その度に蜻蛉洲が修理する羽目になり、傷付いたメタルシェルを見ると蜻蛉洲は舌打ちをするのである。

「さて、無事にここまで来られるかな」

 オオムカデンダルが楽しそうに独りごちた。
俺は黙って先頭が森の中を行くのを見守る。

 後続は森の入り口で進軍を止めた。
どうやら先頭の斥候から連絡があるまでは、入山を待つつもりだ。

「ミスリル銀山を良く調べているな」

 蜻蛉洲が言う。
確かに力押しで通れもするが、余計な戦力を消耗する事になるだろう。

「俺たちに気付かれないようにだろうな」

 オオムカデンダルが言う。
だが、もう既に監視されているとは夢にも思うまい。
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