見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
659 / 826

六五九

しおりを挟む
「悪いが俺は妹も助けなければならない。仲間の為にもプニーフタールは必ず倒す。邪魔はしないでもらいたい」

 これは俺の絶対に譲れない部分だ。
倒すなと言う事には賛同できない。

「倒すなとは言っていない。待ってくれと言っている」

 俺にとっては、待つのも苦痛に感じる程だが。

「お前の妹は今ここに居るのだろう?」

「ああ」

「ならば待つくらい出来るだろう」

「記憶が無くなっている。俺の事も兄と認識していない」

 俺は晃に鋭い視線を向けた。
別に敵愾心がある訳では無い。
ただ、俺を阻むなと言う気持ちが行動に出てしまっているだけだ。

「……妹はたぶん、インプに操られているんだと思う」

 晃が静かに言った。

「インプだと?」

 インプと言うのは小さな妖精だ。
そんな者に操られていると言うのか。

「これは聞いた話だが、インプと言うのは悪魔サタンの分岐した姿だと言う。つまりサタンの一部だ」

 悪魔サタンだと。
大悪魔、いや、悪魔の中の悪魔じゃないか。
マンモンでさえもサタンと比べる事は出来ない。
それほどの存在だ。
なにせ、神に挑んだと言われる程の悪魔なのだから。

 その分身とも言える存在がインプだと。
それがなぜプニーフタールに与しているのか。

「我々はそれぞれ別の思惑の下に集まっていた。利害だけは一致していると言う以外、何の共通項も無い」

 晃が話を続ける。

「なんだそれは」

「済まんがそれは俺にも判らん。全員が曲者揃いだからな。その内の何名かはお前たちに倒された。今やつらは優先順位を入れ換えて、ネオジョルト排除を一番に据えている」

「ほう」

 オオムカデンダルが嬉しそうに声をあげる。

「キメラ、ワイト、レイス、それに荷担させられたお前の妹。そしてこの俺もお前たちに破れたと言う訳だ」

 晃はフッと笑った。

「インプと言うのは?」

「お前が片足もぎ取ったと聞いたが?」

 ああ、アイツが。
アイツがインプだったのか。
俺はミーアに対するヤツの態度を思い出し、ムカついた。

「まあ、再起不能とは言えないが、一度破れた事は事実だ。完全では無いとは言え、悪魔サタンだからな。ヤツらには相当衝撃が走ったと思うぞ」

 衝撃が走ったくらいでは俺の気は済まん。
確実にトドメを刺さなければ安心は出来ない。

「他にはどんな面子が居るんだ?」

 オオムカデンダルが尋ねる。

「後はバルログ、それからリッチ……バルキリーだったと思う」

 バルキリー?
バルキリーってあのバルキリーか。

「そうだ。あのバルキリーだ」

 何故だ。
バルキリーと言えば、神の尖兵だろう。
それがプニーフタールの手先だと言うのか。

「さっきも言ったように、それぞれの理由は判らん。全員がプニーフタールに何らかの利用価値を見出だしているのだ」

 俺は頭が痛くなってきた。
この世は、神も悪魔もごちゃ混ぜなのか。
人間はどうなるのだ。

「ふふ、どうもならん」

 オオムカデンダルが笑う。

「神は神、悪魔は悪魔だ。だとすれば人間も人間だろ?人の事は人が決める。神も悪魔もお呼びじゃ無いんだよ」

 オオムカデンダルの言葉に、俺は何故か安堵した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜

むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。 そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。 それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……? のんびりほのぼのとした現代スローライフです。 他サイトにも掲載中。

Dマシンドール 迷宮王の遺産を受け継ぐ少女

草乃葉オウル
ファンタジー
世界中にダンジョンと呼ばれる異空間が現れてから三十年。人類はダンジョンの脅威に立ち向かうため、脳波による遠隔操作が可能な人型異空間探査機『ダンジョン・マシンドール』を開発した。これにより生身では危険かつ非効率的だったダンジョンの探査は劇的に進み、社会はダンジョンから得られる未知の物質と技術によってさらなる発展を遂げていた。 そんな中、ダンジョンともマシンとも無関係な日々を送っていた高校生・萌葱蒔苗《もえぎまきな》は、突然存在すら知らなかった祖父の葬儀に呼ばれ、1機のマシンを相続することになる。しかも、その祖父はマシンドール開発の第一人者にして『迷宮王』と呼ばれる現代の偉人だった。 なぜ両親は祖父の存在を教えてくれなかったのか、なぜ祖父は会ったこともない自分にマシンを遺したのか……それはわからない。でも、マシンを得たならやるべきことは1つ。ダンジョンに挑み、モンスターを倒し、手に入れた素材でマシンをカスタム! そして最強の自分専用機を造り上げる! それが人を、世界を救うことに繋がっていくことを、蒔苗はまだ知らない。

離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね? 魔道具師として自立を目指します!

椿蛍
ファンタジー
【1章】 転生し、目覚めたら、旦那様から離縁されていた。   ――そんなことってある? 私が転生したのは、落ちこぼれ魔道具師のサーラ。 彼女は結婚式当日、何者かの罠によって、氷の中に閉じ込められてしまった。 時を止めて眠ること十年。 彼女の魂は消滅し、肉体だけが残っていた。 「どうやって生活していくつもりかな?」 「ご心配なく。手に職を持ち、自立します」 「落ちこぼれの君が手に職? 無理だよ、無理! 現実を見つめたほうがいいよ?」 ――後悔するのは、旦那様たちですよ? 【2章】 「もう一度、君を妃に迎えたい」 今まで私が魔道具師として働くのに反対で、散々嫌がらせをしてからの再プロポーズ。 再プロポーズ前にやるのは、信頼関係の再構築、まずは浮気の謝罪からでは……?  ――まさか、うまくいくなんて、思ってませんよね? 【3章】 『サーラちゃん、婚約おめでとう!』 私がリアムの婚約者!? リアムの妃の座を狙う四大公爵家の令嬢が現れ、突然の略奪宣言! ライバル認定された私。 妃候補ふたたび――十年前と同じような状況になったけれど、犯人はもう一度現れるの? リアムを貶めるための公爵の罠が、ヴィフレア王国の危機を招いて―― 【その他】 ※12月25日から3章スタート。初日2話、1日1話更新です。 ※イラストは作成者様より、お借りして使用しております。

傭兵少女のクロニクル

なう
ファンタジー
 東部戦線帰りの英雄、凄腕の傭兵、武地京哉(たけちきょうや)は旅客機をハイジャックした。  しかし、そのもくろみは失敗に終り旅客機は墜落してしまう。  からくも一命を取り留めた彼だったが、目を覚ますと、なぜか金髪碧眼の美少女になっていた。  運がいい、そう思ったのも束の間、周囲には墜落を生き延びた乗客、修学旅行中の高校生まるごと1クラスがいた。  彼がハイジャック犯だとばれたら命はない。 「わ、私はナビーフィユリナ11歳。ハイジャック犯ですか? し、知らないですねぇ……、くっ……、くっころ……」  そう、こんな少女の身体ではすぐに捕まってしまう……。  だが、しかし、 「え? これが、私?」  そう、痛んだ髪をしっかりトリートメントされ、汚れた服も白いワンピースに着替えさせられてしまったのだ。 ※小説家になろう様、ハーメルン様、カクヨム様にも投稿しています。

元悪の組織の怪人が異能力バトルなどに巻き込まれる話(旧題:世の中いろんなヤツがいる)

外套ぜろ
ファンタジー
 狼谷牙人は、いわゆる「悪の組織」に改造手術を受けた「悪の怪人」だった。  その組織が正義のヒーローに敗れて滅亡してからはや一年。正体を隠してフリーター生活を送っていた彼は、ひょんなことから路地裏で「異能力」を操る者たちの戦闘に巻き込まれる。 「君の力も、異能力だ」 「違うな」  謎の勘違いをされた牙人は、異能力の世界へと足を踏み入れることになる……。  どうやら、この現代社会には、牙人のように「不可思議な事情」を抱えた者たちがそれなりに暮らしているらしい。  ——これは、そんな彼らの織り成す、少し変わった青春の物語。  不定期更新。  カクヨム、小説家になろうでも連載中。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

Angel's Ring

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
おっちょこちょいの天使ディディエの冒険ストーリーです。 【天使の探しもの10題】 01 探し物は見つかりますか 02 強大な力の使い道 03 分けられた自分と試練 04 石が告げた言葉 05 人の体と天使の心 06 はじめて経験したこと 07 知らない場所の生活 08 どこにもいない 09 人間の愛をもてあそぶ 10 二人がいなくなった世界 お題配布元 ぴんくのもも様 ※このお題は「ぴんくのもも」様の「あなたのオリキャラお題企画」にて、作っていただいたものです。 「天使の探しもの」の登場人物・ブルーとノワールで作っていただいたのですが、それを今回は天使・ディディエで書いていこうと思っています。 お題は順不同で消化していきます。 ※ものすごく長い間、途中で放置していた作品をなんとか仕上げようと思います。(;^_^A ややコメディ。

処理中です...