見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六四九

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「貴様……本気か」

「勿論だ」

 オオムカデンダルは迷い無く断言した。

「おかしな人間も居たものだな。いや、人間では無いのか……」

「元人間としておいてくれ。今でも心は人間だがね」

 心も違うだろと思ったが黙っておく。

「まあいい。この世の管理者か……もう判っているのだろう?」

「一応、確認だ。俺の居た世界じゃ有り得ない事なんでな」

 マンモンの問いにオオムカデンダルが答える。
黒幕を知っているのか。
いや、このスケールの話なら該当者は一人しか居ない。
本当は俺も薄々感じてはいた。

 だがしかし……

「神だ。世界の管理者は神だ。他に居る筈も無い」

「やっぱそうだよなあ。信じられんが本当に神が管理しているのか」

 オオムカデンダルはため息混じりにそう言った。
しかし、その声はどこか嬉しそうだ。

「神との契約と言う話も喩えでは無く、本当に神との契約か」

 オオムカデンダルはそう言って、くくくと笑った。
何が面白いんだ。
この性格破綻者め。

「神について他に知っている事があれば教えてくれ」

「……無いな」

「無い?」

「あれは別の次元に居て、そこからこちらを覗き見ている。人間が会おうと思って会える相手では無い」

 そりゃそうだろう。
人間の都合で会いに行ける神など、聞いた事が無い。

「次元を越えなければならんのか。面倒だな」

 何だ。
出来ない事も有るのか。
意外だったな。

「お前が屋敷に住んでいるくらいだから、神も避暑地でバカンスでも楽しんでいるのかと思ったんだが……違うのか」

「ふふふ……ふざけたヤツめ。残念ながら神と我とでは格が違う。あれはもっと高次の存在だ」

「少し軌道修正が必要か……」

 珍しくオオムカデンダルの声のトーンが下がった。
悩んでいるのか。
しかし、出来ないとは言わない所にこの男の凄さを感じる。

「この世は『神』と『それ以外』に分けられる。我らは全てまとめて『それ以外』だ。我も貴様もな」

 マンモンが言った。

「天地開闢以来、神以外が管理者の座に着いた事は無い。それを試みた者も居ない」

「だったら史上初のチャンピオン交代だ」

「どれ、我の心の臓が所望だったな。持って行け。久しぶりに面白い話が出来た。駄賃だ」

 マンモンはそう言うと、自らの胸に右手を突き立てた。

 ザブッ

 そのまま心臓を引きずり出す。
悪魔だからって規格外過ぎるだろ。

「アンタ、大丈夫なのか……?」

 俺は呆気にとられながら尋ねた。

「その辺の小悪魔と一緒にするな。心の臓を失ったくらいで死ぬ筈があるまい」

 じゃあどうやったら死ぬんだよ。
さっきはあんなに抵抗しやがって。

「心の臓の有る無しは関係無い。ダメージが致死量に達すれば死ぬ。神と言えどもな」

「なるほどな」

オオムカデンダルが良い事を聞いたと、声が明るくなった。

「ふふ、助かる」

「無理だと思うが、お前が神に喧嘩を売る所を見てみたい。あれにアゴで使われるのは我としてももう飽きた……心の臓が戻るまで、我は三百年程大人しくしていよう」

 三百年は派手な悪さは出来ないと言う事か。
それはそれで良かったが、三百年後が大変だな。
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