見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六四六

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 ボオオオ

 火は全身に回ったが、装甲の表面が燃えているだけだ。
改造人間に対する理解が足りないと、こう言う無意味な攻撃に終始する事になる。

「貴様……どういう」

 マンモンが眉を動かす。
動揺しているな。

「じゃあ今度は俺の番だな」

 俺は全身の機能検索を使う。
俺はずいぶんと強くなった。
何度も死にかけたりしたお陰で、その都度体が強化されている。

 新たな能力や武器の獲得も著しいが、それらを全て把握出来ていない。
だから検索するしかないのだ。

 お、何気にサフィリナックスミラージュの使用時間が伸びているな。
他には……サフィリナックスフレイム。
クイックナパーム、アシッドバルカン……

 結構増えているな。
こんなに搭載していたのか。
大丈夫なのか、俺の体。

 要らぬ心配が一瞬脳裏をよぎったが、まあそれは今は良い。

「サフィリナックスフレイム!」

 かしゃっ!

 マスクの口が開いた。

 ごおおおおおおぉぉっ!

 同時に口から炎が飛び出す。

「なに!?」

 マンモンが目を見開く。
遅いぜ。

 ぼおおお!

 たちまちマンモンは火だるまになった。

「くっ!なんだこれは!貴様ッ!」

 魔力が働いた形跡も無く、これだけの炎を噴出する。
マンモンにとっては不意打ちも甚だしい事だろう。
訳が判らず混乱している筈だ。

 それにしても飛距離と温度がとてつもない事になっている。
十メートル以上、炎が棒状になって噴き出している。
炎系の魔法である、ファイヤーボールとは根本的に違った。
持続的に敵を焼き払っている。

 ファイヤーボールを灼熱の魔法と良く表現するが、これはそんな生易しい物では無かった。
いや、むしろこれこそが『真の灼熱』と呼ぶに相応しい。

 例えて言うならば、ドラゴンが吐く火炎がこんな感じだろうか。
一瞬で人は消し炭となり、木造の家屋は吹き飛ぶ。

 火を噴くだけの武装が、この段階でしか解禁されない理由に俺は納得した。

「ぐおおっ!」

 マンモンは炎に包まれて地面を転がった。
たいした事無かったな。

「なめるなあっ!」

 マンモンが俺の心を読んだのか。
反応するように叫んだ。

 ぼしゅうっ

 気合一閃。
マンモンの叫びと同時に、体を包む炎が消えた。
どうやって消したのか。
理由は判らんが、悪魔だからとしか言えなかった。

「小僧……!」

「まだホンの序章だぜ」

「……抜かせッ!」

 マンモンが凄むと突風が吹いた。

「うおっ!?」

 俺は簡単に吹き飛ばされて壁に激突した。

 ばきい!
がらがらがらがら

 壁をぶち抜いて俺は礼拝室に戻って来た。
カルタスたちが驚いて飛び退く。

「おい!大丈夫か?」

「……問題ない」

 とは言え、俺を一撃でこれだけ吹き飛ばすとは。
ただの突風だったが、体感的にヴァンパイアの一撃よりも強力だった。

 こんな芸当も出来るのか。

 俺は立ち上がると、再びマンモンの部屋へと戻る。

「ふふ。やるな」

 マンモンが笑った。

「まだまだ。これからだ」

 俺は走り出すと、マンモンに一直線に殴りかかった。
単調か。
いや、これで良い。
俺には物理攻撃しか効かない。
一方、マンモンも炎を消し去るような特殊な能力を持っているのなら、殴った方がダメージはある筈だ。

 マンモンも肉弾戦に応じるしか無い。

 だったら最短で殴る。
一秒でも先に殴る。
これで良い。

「むンッ!」

 俺は渾身の力を込めて、マンモンを殴り付けた。
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