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六三四
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「遊園地のお化け屋敷みたいで楽しそうだな。俺も行けば良かったぜ」
オオムカデンダルの声がする。
ユウエンチとは何だ。
こんなモノが楽しそうと感じるとは、変態め。
「大丈夫か?やれるか?」
オオムカデンダルが尋ねてくる。
「……問題ない」
「マジかあ。逞しくなりやがって、俺の楽しみが減ったじゃないか」
どんな言い草だ。
「俺が行くまで取っておけよ」
「……断る」
その間に他の連中がピンチになる可能性だってある。
時間は掛けたくない。
「すぐ行くからさ。な?そのままにしておけ」
「嫌だ」
オオムカデンダルがムッとした。
「お前ねぇ……」
「別に遊んでる訳じゃないんだ。来たけりゃ来れば良いが、別に待ちはしない」
俺はオオムカデンダルの言葉を遮って、そう言い切った。
何だか良く判らんが、楽しみにしていると言うのなら断ってやる。
ザマミロ。
「クソ!おま……」
オオムカデンダルが声を荒らげた瞬間に、音声を切った。
こっちはそれどころでは無いのだ。
俺が俺に向かってゆらりと立ち上がった。
レイスやドッペルゲンガーの類いでは無さそうだが、さて。
俺がショートソードを抜いた。
左手にはスモールシールドがある。
装備まで俺と同じって訳か。
壁の左側に残ったわずかな鏡には、俺が数名ひしめき合っている。
あれもこっちへ出てくるのか。
時間は掛けられんな。
しゅ!
目の前の俺が剣を振って来る。
がきん!
俺はスモールシールドで打ち払いながら、後ろへ下がる。
太刀筋も俺と同じだ。
見た目だけじゃない。
何もかも俺を丸写しだ。
それが十人程度居るのか。
あの鏡を割ったらアイツらも出てきてしまうのか?
それとも割ったら出てこれないのか。
どっちだ。
放置すれば確実に全員が出てきてしまう。
俺は迷った。
ガシャーン!
その瞬間に鏡は割れた。
考える暇も無いとは。
ざっと俺が十一人。
十一対一。
俺はふと思った。
コイツら、変身も出来るのだろうか。
変身できるとすればかなりのピンチだ。
オオムカデンダルに来てもらわないと収拾がつかない。
だが、もし変身出来ないんだとすれば。
俺は一か八か変身する。
「変身」
クルリとその場で回転する。
一瞬で俺の姿はサフィリナックスへと変わった。
さあ、どうだ。
しかし、誰も同じように変身しようとする者は居ない。
やはりそうか。
鏡に写ったモノは何でも同じ物を出せるが、写ってないモノは出せない。
コイツらは姿形は俺と同じだが、変身後の能力までは持っていないのだ。
つまり、見たまんましか複製出来ない。
隠された力などは後付け出来ないのだ。
鏡が全て割れる前に変身しなくて良かったぜ。
怪人が十体も相手では、さすがに俺に勝ち目は無い。
「人を見た目で判断するなとは、良く言ったもんだな」
俺はそう呟いた。
だっ!
十一人の俺が一斉に襲い掛かってくる。
がぎんっ!
しかし、剣は俺の体表で弾かれる。
「如何に俺でも、この体は斬れんぞ」
俺を退けるのは複雑な気分だ。
だが。
「サフィリナックスブレード!」
前腕に光の線が現れる。
俺の腕は刃と化した。
ズバッ!ズババッ!
ビュシュッ!ジュバッ!
「!?」
ヤツらは一言も発する事無く、真っ二つになった。
斬られた事にも一瞬気付かない、そんな表情だった。
オオムカデンダルの声がする。
ユウエンチとは何だ。
こんなモノが楽しそうと感じるとは、変態め。
「大丈夫か?やれるか?」
オオムカデンダルが尋ねてくる。
「……問題ない」
「マジかあ。逞しくなりやがって、俺の楽しみが減ったじゃないか」
どんな言い草だ。
「俺が行くまで取っておけよ」
「……断る」
その間に他の連中がピンチになる可能性だってある。
時間は掛けたくない。
「すぐ行くからさ。な?そのままにしておけ」
「嫌だ」
オオムカデンダルがムッとした。
「お前ねぇ……」
「別に遊んでる訳じゃないんだ。来たけりゃ来れば良いが、別に待ちはしない」
俺はオオムカデンダルの言葉を遮って、そう言い切った。
何だか良く判らんが、楽しみにしていると言うのなら断ってやる。
ザマミロ。
「クソ!おま……」
オオムカデンダルが声を荒らげた瞬間に、音声を切った。
こっちはそれどころでは無いのだ。
俺が俺に向かってゆらりと立ち上がった。
レイスやドッペルゲンガーの類いでは無さそうだが、さて。
俺がショートソードを抜いた。
左手にはスモールシールドがある。
装備まで俺と同じって訳か。
壁の左側に残ったわずかな鏡には、俺が数名ひしめき合っている。
あれもこっちへ出てくるのか。
時間は掛けられんな。
しゅ!
目の前の俺が剣を振って来る。
がきん!
俺はスモールシールドで打ち払いながら、後ろへ下がる。
太刀筋も俺と同じだ。
見た目だけじゃない。
何もかも俺を丸写しだ。
それが十人程度居るのか。
あの鏡を割ったらアイツらも出てきてしまうのか?
それとも割ったら出てこれないのか。
どっちだ。
放置すれば確実に全員が出てきてしまう。
俺は迷った。
ガシャーン!
その瞬間に鏡は割れた。
考える暇も無いとは。
ざっと俺が十一人。
十一対一。
俺はふと思った。
コイツら、変身も出来るのだろうか。
変身できるとすればかなりのピンチだ。
オオムカデンダルに来てもらわないと収拾がつかない。
だが、もし変身出来ないんだとすれば。
俺は一か八か変身する。
「変身」
クルリとその場で回転する。
一瞬で俺の姿はサフィリナックスへと変わった。
さあ、どうだ。
しかし、誰も同じように変身しようとする者は居ない。
やはりそうか。
鏡に写ったモノは何でも同じ物を出せるが、写ってないモノは出せない。
コイツらは姿形は俺と同じだが、変身後の能力までは持っていないのだ。
つまり、見たまんましか複製出来ない。
隠された力などは後付け出来ないのだ。
鏡が全て割れる前に変身しなくて良かったぜ。
怪人が十体も相手では、さすがに俺に勝ち目は無い。
「人を見た目で判断するなとは、良く言ったもんだな」
俺はそう呟いた。
だっ!
十一人の俺が一斉に襲い掛かってくる。
がぎんっ!
しかし、剣は俺の体表で弾かれる。
「如何に俺でも、この体は斬れんぞ」
俺を退けるのは複雑な気分だ。
だが。
「サフィリナックスブレード!」
前腕に光の線が現れる。
俺の腕は刃と化した。
ズバッ!ズババッ!
ビュシュッ!ジュバッ!
「!?」
ヤツらは一言も発する事無く、真っ二つになった。
斬られた事にも一瞬気付かない、そんな表情だった。
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