見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六一五

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 オオムカデンダルの言葉にも、四人は頑として九条晃の元を離れようとはしない。
良くもこれだけ慕われた物だ。
それとも何らかの術にでも掛かっているのか。

 俺は思い出した。
コイツら何者かに吹き込まれて俺を敵視しているようだった。
ひょっとして、その何者かは九条晃なのか?

「晃。どうしても話を聞かせてもらうぜ。嫌とは言わせん」

 オオムカデンダルがベクターシードにそう言った。

「ふ……ふふふ。お前が俺に聞きたい事だと?天才が俺に何のようだ」

「お前、今何歳だ?」

「知らん」

「なに?」

「歳などとうに数えるのを止めた。だから知らん」

「……お前、百年は人々の為に戦ったと言っていたな。いったいお前は何年ここに居るんだ」

 ベクターシードが苦しそうに息をする。
ダメージは相当な筈だ。
俺にも何故生きていられるのか不思議だった。
ベクターシードのマスクも、体も、大きく割れて中身が露見している。

 これはもう、使い物になるまい。

「だから知らんと言っている……最低でも数百年は居るんだろうな」

 九条晃が苦しそうに言う。

「お前……ひょっとして魔法で生きながらえているのか?」

 オオムカデンダルが尋ねた。

「そうだとしたら……どうなんだ」

「すげえな」

「……」

「ウチに居る賢者のじいちゃんが言っていた。不老不死の研究は、この世界でも長年の夢なんだとな。権力者や研究者がずっと探し続けていると。どこの世界でも人間のやる事は変わらんな」

 それに九条晃が辿り着いたと言うのか。
賢者サルバスでさえ知りえない不老不死の秘術にか。

「芝居はやめろ。どうせ瀕死の重傷もすぐに回復するんだろ?」

 九条晃がマスクの裂け目からオオムカデンダルを見た。

「……お前は何か勘違いをしている」

「なに?」

「……不老不死と不死身は似て非なるものだ」

 言われてみればそんな気もする。
死なない為の条件が違うのか。

「俺には『老い』は無い。だが物理的には死ぬ事もある。不死身はその名の通りだ。死なない。ただしその生き方には色んな形態があるがな……」

「なんだ、その形態とは」

「例えばヴァンパイアだ。あれは不死身の代表格だが、正確には超再生だ。死ぬより速く回復するから死なないだけだ。それを上回るスピードで殺せば死ぬ」

 確かにヴァンパイアは殺した。
不死身と言えど弱点などの条件下では、ちゃんと死ぬのだ。

「じゃあお前は……」

 オオムカデンダルが何かに気付いた。

「俺は不老長寿にはなれたが……不死身は無理だった……」

「それでも十分凄い事だ。生身でありながら俺たちに並ぶとはな……だが、何がお前をそこまでさせた?」

 オオムカデンダルの質問に九条晃が一瞬沈黙した。

「……決まっている。帰る為だ」

「帰る?」

「……自分の世界に帰る為だよ」

 今度はオオムカデンダルが言葉に詰まった。
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