見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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六一一

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「その傷だらけのバトルスーツを見れば想像は付く。修理もロクに出来ない状態でも、この世界でなら通用するからな」

「……黙れ」

「たった一人で良く頑張ったもんだとは思うが……生身のお前が何故生きている?お前は俺たちと同じ時期に来たのでは無いのか?」

 オオムカデンダルが九条晃に問い掛ける。

「俺たちが来てから、けして短くない時間が流れた。普通に考えれば二十代かそこらだったお前が、まだ生きながらえている筈が無いんだ。どうしてあの時のままの姿で居られる?」

「……悪いか?」

「なに?」

「生きていちゃ悪いのかと……言っている」

 九条晃が初めてオオムカデンダルの質問に声を発した。

「たった一人で良く頑張った?貴様らに何が判るんだ。人間辞めて永遠に生き続ける機械仕掛けのお前たちに、生きる苦しみが判るとでも言うつもりか?笑わせるな」

「……」

 九条晃が初めて感情を露にした。
けして前向きでは無い、何か滲み出るような苦渋の感情だった。

「貴様らがいつこの世界に辿り着いたかなんてどうでも良い。興味も無い」

 オオムカデンダルは黙って九条晃の話を聞いている。

「俺は思い知ったよ。一人の人間の力では何も変えられない。自分の世界での常識や価値観など少しも意味が無い。奴隷が居て、モンスターが居て、差別など当たり前にあって、人権や自由など概念さえも存在しない」

 九条晃の言葉の意味を正確に理解できるのは、おそらくオオムカデンダルとフィエステリアームだけだ。
俺にも半分くらいしか理解できていない。

「じゃあこの世界で俺の守るべき物は何だ!この世界には俺の守るべきものなど無かった!……俺は自分の世界に帰る方法を探した。何年にも渡ってこの世界を旅した」

「なら、守るべき人間が居る事も気付いたんじゃ無いのか?愚かで、弱くて、それでも正直に生きている人間だって居ただろう。正義の味方のくせに一人も見なかったと言うのか」

 オオムカデンダルが言った。

「ふふ。もちろん居たよ。俺も最初の百年くらいはそう言う人々の為に戦った」

 なに?
百年?
百年だと言ったのか?

「だがな、どんなに力があっても一人では守りきれない。世界も変えられない。弱い人々は結局元の生活に戻りたがる。全てを諦めて、虐げられる人生の方が楽だからと。ずっと戦い続ける事などこの世界の人間には出来やしない……俺はもう疲れた」

「……」

 オオムカデンダルはいつしか構えを解いて、九条晃の話を聞いていた。

「貴様らには判るまい。いや、判ってもらおうとも思わんが……せめて邪魔はやめてもらおう」

「邪魔?」

「おっと。しゃべり過ぎたな。とにかく俺の邪魔はさせん」

 どう言う意味だ。

「まだ、お前がどうしてご長寿さんなのか聞かせてもらって無いんだがな」

「さあてね。何故かな」

九条晃が、いや、ベクターシードが再び構える。
オオムカデンダルもそれに合わせて構えをとった。

「……仕方ないか」

 オオムカデンダルが呟いた。
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