見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五三四

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 プニーフタール!
コイツは例のプニーフタールを復活させようと目論む一味か!

 女は何も答えなかった。
図星か。

「なら益々やれんな。お前らの事を恨みに思ってる奴がいてね。お前らの喜ぶ事は全て却下だ」

 オオムカデンダルが言う。

「な、そうだろ?」

 そして俺に向かって同意を求めた。
ムカつくヤツだがその通りだ。
コイツらの思い通りになんて、させてたまるか。

 仲間の仇。
そしてミーアを取り返す。
その為に俺は人間の体を捨てた。
その為に俺はオオムカデンダルの仲間になったのだ。
後悔は無い。

 俺は動かない体にムチ打った。
何とか首を持ち上げて女を見る。
コイツが、奴らの一味だとは。
こんな時に何故、俺は動けないんだ。

「お前あれだろ?最初から俺たちが目的でバーデンをけしかけたんだろ。悪いヤツだ」

 オオムカデンダルが言った。

「そこまで気付いていたか」

「そんな事よりも、もう無いのか?そのニーズヘッグになれるペンダントってのは。土産に一つ欲しいんだが」

 オオムカデンダルがとぼけた言い方をした。
観光土産じゃあるまいし。

「これはニーズヘッグになる石ではない。その者の内面に相応しいモンスターに変える石だ」

 つまりバーデンの内面はニーズヘッグに相応しかったと言う訳か。
強さに貪欲で、どこまでも自己顕示欲が肥大していた。
相手の自由を奪い、攻撃してくる。
確かにバーデンらしいと言えば、らしかった。

「あるんならくれよ。何でも良いからよ」

 オオムカデンダルはまだ催促している。
意外としつこいな。
いや、子供みたいだと言うべきか。

「ルドム将軍!」

 後方から他の将軍たちも駆けつけた。
帝国軍のオールスター勢揃いだ。
バーデン以外だが。

「……なんだ、あれは」

 ライエル将軍が、女を見て呟いた。
ただの人間でない事はすぐに判ったようだ。

「ニーズヘッグも……死んでいる」

 マザ将軍がニーズヘッグの死体を見て唖然としている。

「……なんだよ、その巨大な鉄人は」

 メルドルム将軍がセンチピーダーを見て呟いた。
全員バラバラの感想だ。

「うるさくなって来たな。少し引っ込んでいてもらおうか」

 女はそう言うと両手を広げた。

 ばっ!

 ローブが風になびく。

 ピシャアアアンッ!
ゴロゴロゴロゴロ……
ドオオォォンッ!
ドゴオォォンッ!

 突然青い雷が落ちてきた。
魔法か。
兵士たちが後ろへ下がる。
将軍の乗る馬も驚いて暴れた。

「静まれっ!どう!どう!」

 ライエル将軍が馬を抑える。

「面白い。センチピーダーで相手をするには惜しいな。どれ」

 そう言うとセンチピーダーの乗り込み口が開いた。
わざわざ出てくるのか。
中からオオムカデンダルが顔を出す。

「ちょっとだけつまみ食いさせてもらおう」
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