見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五三三

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 あまり体格は大きくない。
やはり女なのか。

「貴様、何者だ」

 ルドムが尋ねた。

「……」

 だが、女は答えない。

「持っていくつもりなのか?どうやって運ぶ?」

 今度はオオムカデンダルが面白がって尋ねる。
そうだ、女が一人で運べる筈は無い。

「心配は無用だ。我々は人間とは違う」

 人間じゃない?
じゃあモンスターなのか。
しかし、どう見てもこの女は人間だ。
人の言葉もしゃべっている。

「ふふふ、ますます興味深いな。どうだい、少し茶でも飲みながら話さないか?」

 オオムカデンダルが言う。
どこまで本気なのか。

「断る」

 にべもなく断られた。
ザマミロ。
俺は内心笑った。

 と同時に不思議な感覚にも包まれていた。
どこかで会った事のあるような、そんな感覚だ。
知り合いか?

 いや、俺にモンスターの知り合いはいない。
トラゴスはどっちに含まれるんだ。
山羊か。モンスターか。

「このニーズヘッグはお前のトコの物なのか?」

「……違うが、もらう権利はある」

 オオムカデンダルの質問に女が答えた。
どういう意味だ。

「違うならやれんな。これは俺たちが倒した俺たちの獲物だ。獲物の横取りは良くないぜ」

 オオムカデンダルはそう言った。
これはルドムに対しても言っている。

「この勇者崩れにペンダントをやったのは我々だ。人間に興味など無いがコイツはもう人間じゃない。ペンダントを使用した後の肉体は我々が預かると言う約束だったのだ。部外者は関係無い。引っ込んでいろ」

 女はそう冷たく言い放った。
バーデンをニーズヘッグに変えたのは、コイツらにもらったアイテムのせいだったのか。
と言う事は、バーデンは化け物どもと繋がっていたのか。

「バーデン将軍が貴様らと通じていただと?嘘を吐くんじゃない!」

 ルドムが怒鳴った。

「嘘では無い。別に繋がりなどないが、どこまでも力を望む男だったからな。プレゼントしてやったら大喜びで受け取ったぞ」

 女は感情の感じられない、抑揚の無い声でそう言った。
やはりこんな女は知らない。
だが何故かとても惹かれる声だ。

「そんな事はどうでも良い。この獲物はやれんと言ったんだ。帰れ」

 オオムカデンダルは女の話に付き合わなかった。
そんな事は知らんと言わんばかりだ。
いや、言っているが。

「そうはいかない。これは餌だからな」

 餌?
なんの餌だ。

「……貴様らには教えん」

「……ぷっ!はっはっはっはっはっ!」

 女の言葉にオオムカデンダルが大笑した。

「教えん、か。はっはっはっはっはっ!こりゃあ良い」

 何が可笑しいんだ。
相変わらず、この男の考えている事は判らん。

「あれだろ?えーと何て言ったっけな。おい、レオ。あれの名前なんだ?」

 なんの事だ。

「あれだよ。ほれ、プニプニとか何とか」

「!?」
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