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五二八
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俺は首筋の管を引き抜いた。
ピーッ
オオムカデンダルがこっちを見た。
「何だ?何をする気だ」
「俺が外に出る」
「なに?」
「このままではラチが明かない。アンタは操縦で手一杯だろ。だったら行くのは俺しかいない」
自分でも何を言っているのかと思う。
だが、このまま死ぬなら何かやって死んでも同じ事だ。
ミーア
俺の中に妹の面影が浮かび上がる。
兄ちゃんが必ず助けてやる。
こんな所で死んでたまるか。
「……ふふふ。良い顔になったじゃないか」
オオムカデンダルが笑う。
仮面の下の顔なんて判る筈が無いが、オオムカデンダルはそう言って前を向いた。
「良い事があったら連絡しろ。悪い報告は要らん」
「……判った」
俺は一言そう言うと、センチピーダーを開けて外へと身を乗り出した。
薄暗い。
口の中なのだから当然か。
センチピーダーの発光で、多少はほの暗く照らされている。
だが、俺の目は暗闇でも問題なく見える。
「急げよ。また酸が吐き出されるぞ」
オオムカデンダルの声が聞こえる。
そんな事は判っている。
俺は一気にジャンプすると、肉壁に飛び付いた。
クソ熱いな。
身を焼かれるような熱さだ。
さっき見た限りだと四〇〇〇度は越えている。
普通の人間ならば、この距離で既に死んでいるんじゃないのか。
よじ登り、すぐに肉の天井へ到達する。
ここはニーズヘッグの上顎か。
さっきからセンチピーダーを飲み込もうと、筋肉が波のようにうねり律動している。
「急げ、律動が早くなってるぞ。もう酸が来る」
オオムカデンダルが警告する。
判ってると言っているだろ。
俺はイラつきながら五指を突き立てる。
「スクリューシェイブクロウ!」
ギャアアアアアアアアアアンッ!
手首が高速で回転する。
いきなりマックススピードだ。
「うおおおっ!」
回転する手をニーズヘッグの肉の天井へ突き立てる。
「ぎにゃああああああっ!」
大音響で叫び声が体に当たってくる。
声だけで吹き飛ばされそうだ。
肉がグチャクチャに飛び散って血が噴き出る。
構うもんか、このまま進むんだ。
俺は肉と血を掻き分けて、奥へ奥へと掘り進む。
「……お前、意外とエグいな」
オオムカデンダルの声が聞こえる。
放っておいてくれ。
グチャグチャグチャグチャッ!
「来たぞ!」
俺が肉の中に完全に埋まった時、その下を強酸が津波のように過ぎて行く。
じゅううぅぅ!
肉が焼けるような音と悪臭が立ち込める。
「ぐっ……!」
足先が焼けるような痛みを感じる。
酸がここまで入って来ている。
急がなければ。
俺は必死で奥へと入って行った。
どかっ
急に手応えが無くなった。
どうした?
俺はもがきながら先へ進むと、ぽっかりと開けた空間に出た。
「……なんだここは」
俺は辺りを見渡した。
何もない。
ただの空間だ。
脳はどうした。
何かが有るんじゃ無かったのか。
ピーッ
オオムカデンダルがこっちを見た。
「何だ?何をする気だ」
「俺が外に出る」
「なに?」
「このままではラチが明かない。アンタは操縦で手一杯だろ。だったら行くのは俺しかいない」
自分でも何を言っているのかと思う。
だが、このまま死ぬなら何かやって死んでも同じ事だ。
ミーア
俺の中に妹の面影が浮かび上がる。
兄ちゃんが必ず助けてやる。
こんな所で死んでたまるか。
「……ふふふ。良い顔になったじゃないか」
オオムカデンダルが笑う。
仮面の下の顔なんて判る筈が無いが、オオムカデンダルはそう言って前を向いた。
「良い事があったら連絡しろ。悪い報告は要らん」
「……判った」
俺は一言そう言うと、センチピーダーを開けて外へと身を乗り出した。
薄暗い。
口の中なのだから当然か。
センチピーダーの発光で、多少はほの暗く照らされている。
だが、俺の目は暗闇でも問題なく見える。
「急げよ。また酸が吐き出されるぞ」
オオムカデンダルの声が聞こえる。
そんな事は判っている。
俺は一気にジャンプすると、肉壁に飛び付いた。
クソ熱いな。
身を焼かれるような熱さだ。
さっき見た限りだと四〇〇〇度は越えている。
普通の人間ならば、この距離で既に死んでいるんじゃないのか。
よじ登り、すぐに肉の天井へ到達する。
ここはニーズヘッグの上顎か。
さっきからセンチピーダーを飲み込もうと、筋肉が波のようにうねり律動している。
「急げ、律動が早くなってるぞ。もう酸が来る」
オオムカデンダルが警告する。
判ってると言っているだろ。
俺はイラつきながら五指を突き立てる。
「スクリューシェイブクロウ!」
ギャアアアアアアアアアアンッ!
手首が高速で回転する。
いきなりマックススピードだ。
「うおおおっ!」
回転する手をニーズヘッグの肉の天井へ突き立てる。
「ぎにゃああああああっ!」
大音響で叫び声が体に当たってくる。
声だけで吹き飛ばされそうだ。
肉がグチャクチャに飛び散って血が噴き出る。
構うもんか、このまま進むんだ。
俺は肉と血を掻き分けて、奥へ奥へと掘り進む。
「……お前、意外とエグいな」
オオムカデンダルの声が聞こえる。
放っておいてくれ。
グチャグチャグチャグチャッ!
「来たぞ!」
俺が肉の中に完全に埋まった時、その下を強酸が津波のように過ぎて行く。
じゅううぅぅ!
肉が焼けるような音と悪臭が立ち込める。
「ぐっ……!」
足先が焼けるような痛みを感じる。
酸がここまで入って来ている。
急がなければ。
俺は必死で奥へと入って行った。
どかっ
急に手応えが無くなった。
どうした?
俺はもがきながら先へ進むと、ぽっかりと開けた空間に出た。
「……なんだここは」
俺は辺りを見渡した。
何もない。
ただの空間だ。
脳はどうした。
何かが有るんじゃ無かったのか。
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