見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五二二

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 しかし、それ以外の部分には効いているように見える。
胴体の比較的柔らかそうな部分は、弾丸を浴びて無数に穴が開いている。

「ち……特殊徹甲弾でも破れないのか」

 オオムカデンダルが舌打ちをする。
歯だ。
歯が破壊出来ないでいる。
しかしこれだけ胴体にダメージを与えられるなら、別に頭部へのダメージにこだわらなくても良さそうに思うのだが。

「良く見ろよ」

 オオムカデンダルが言う。
何だ。
俺はニーズヘッグをまじまじと観察する。

「あ!」

 ニーズヘッグに開いた無数の穴からは、血の一滴も流れていない。
それどころか、時間が経つと少しずつ塞がっている。
内側から穴を塞ぐように、新しい皮膚が再生している。

「不死身か……!?」

 俺は背筋に冷たいものが走った。
今さらこんな事を言うのも何だが、無敵とか不死身とか反則じゃないのか。
ヴァンパイアもそうだが、なぜこんな生物が存在するのか。
神様は不公平だ。

「なーに言ってやがる。当たり前だろ。神は最初から不公平なんだよ」

 オオムカデンダルが操縦しながら鼻で笑った。
俺は意外だった。
オオムカデンダルなら神の存在自体を否定するかと思ったからだ。

「否定なんかするかよ。見たことの無い物をどうやって否定するんだ。それにこっちの世界じゃ神職系の魔法もあるじゃないか。居るんじゃないの?」

 そんな風に考えていたとは。
意外と柔軟だな。

「……ただ、ムカついてはいるけどな」

 やっぱり神にも、一言言いたい事はあるらしい。
別に尊敬したり崇拝したりするつもりは無いのか。

「……なんで神はこんなに不公平な存在を作ったんだろうな」

 俺はオオムカデンダルが何と言うか、興味本位で呟いてみた。

「んなモン決まってるだろ。神は人間なんか愛して無いからだよ」

 俺は衝撃を受けた。
そんな事を言うヤツは見た事がない。
彼らの世界がどうかは知らないが、こっちの世界にもド悪党は掃いて捨てるほど居る。
神をも恐れない不届き者だ。

 だがそんな彼らも今際の際には神に懺悔をする者も少なくないし、神を否定する者でも『神は人間を愛していない』なんて考えてる者は皆無だ。

 そんな風に思った事は一度も無い。

 これは罰当たりなのか。
それとも何か確信めいた物があるのだろうか。

「おい、ぼさっとするな。駆動効率が〇.二パーセント落ちてるぞ」

 オオムカデンダルが言う。

「言っただろ。俺たちはセンチピーダーその物だ。集中しろ」

 そうだったな。
俺は戦闘に集中した。

「頭だ。龍だろうが何だろうが、頭を潰して死なないヤツは居ない。どうやってあの白くてピカピカの自慢の歯をへし折ってやるか……」

  オオムカデンダルはそう言ったものの、その声はどこか楽しげだ。
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