514 / 826
五一四
しおりを挟む
「うう……うぐぐぐ……んあああっ!」
バーデンが叫び声をあげて、のたうち回る。
オオムカデンダルはそれを黙って見ている。
何をしているんだ。
早くトドメを刺すんだ。
俺は何とか動こうとしたが、まだ完全にはバーデンの力が消えてはいなかった。
震える四肢を自分でコントロール出来ないでいた。
やがてバーデンの体は赤黒い炎によって燃え尽きた。
焼死したのか。
そんな馬鹿な。
俺はもがきながら、つい今さっきまでバーデンだった物を見つめた。
モゾ……モゾ
バーデンの燃えカスが、不気味に動いた。
俺はギョッとする。
嫌な予感が加速する。
早く、トドメを。
モゾモゾ……
ぴょこ
「きー」
何かが飛び出た。
鳴いている?
「きーきー」
俺は自分の心臓の鼓動が大きくなるのを感じていた。
やめろ、これは駄目だ。
不安が大きくなる。
子犬くらいか。
正体不明の小動物が動いている。
何だかは良く判らなかった。
「なんだこりゃ」
オオムカデンダルが首をかしげる。
「きー」
目の錯覚か、さっきよりも少し大きくなったか。
「きーきーきー」
いや、錯覚などでは無い。
鳴き声をあげる度に、大きくなっている。
「おいおい。気持ち悪いな」
オオムカデンダルが感心したように言う。
いや、アンタの見た目もだいぶグロテスクだぞ。
それは、俺もだが。
そんな事を言っている場合か。
俺は自戒した。
ソレは、あっと言う間にオオムカデンダルぐらいの大きさに育った。
育ったと言って良いのか疑問だが、それもすぐに追い抜いた。
二周り、三周り、どんどん大きくなる。
「おおー、でけえ」
オオムカデンダルがソレを見上げる。
何と言う名前なのかも判らない。
ただただ、不気味で不快だ。
無理に形容すると、巨大な幼虫に見える。
青白い体表。
蛇腹状の体。
産毛がうっそうと生えており、人間の赤ん坊のような手が両脇から何十本と生えていた。
赤ん坊のような手と言っても巨大だ。
一本一本は丸太のように太く、形だけが赤ん坊のようなのである。
そして顔だ。
顔はあって無いような物だった。
顔全体が口である。
女性の、それも肥え太ったような女性の口が、頭全体であった。
巨大で肉厚な唇。
それが開くと巨大で頑丈そうな歯が、整然と並ぶ。
形容として正しいのかは判らなかったが、美しい歯並びだった。
そしてそれが、逆に恐ろしく不気味に感じられた。
この大きさ。
それだけで力と頑丈さを感じる。
今やその大きさは城壁の内側に収まりきれずに、城の外にまで溢れ出ようとしていた。
「ひゃあああ!ば、化け物!」
「ぎゃああああ!」
兵士たちが口々に恐怖と断末魔をあげた。
ある者は押し潰され、ある者は這いつくばりながらも逃げ出した。
俺も何とか、這ってその場を離れようともがく。
バーデンが叫び声をあげて、のたうち回る。
オオムカデンダルはそれを黙って見ている。
何をしているんだ。
早くトドメを刺すんだ。
俺は何とか動こうとしたが、まだ完全にはバーデンの力が消えてはいなかった。
震える四肢を自分でコントロール出来ないでいた。
やがてバーデンの体は赤黒い炎によって燃え尽きた。
焼死したのか。
そんな馬鹿な。
俺はもがきながら、つい今さっきまでバーデンだった物を見つめた。
モゾ……モゾ
バーデンの燃えカスが、不気味に動いた。
俺はギョッとする。
嫌な予感が加速する。
早く、トドメを。
モゾモゾ……
ぴょこ
「きー」
何かが飛び出た。
鳴いている?
「きーきー」
俺は自分の心臓の鼓動が大きくなるのを感じていた。
やめろ、これは駄目だ。
不安が大きくなる。
子犬くらいか。
正体不明の小動物が動いている。
何だかは良く判らなかった。
「なんだこりゃ」
オオムカデンダルが首をかしげる。
「きー」
目の錯覚か、さっきよりも少し大きくなったか。
「きーきーきー」
いや、錯覚などでは無い。
鳴き声をあげる度に、大きくなっている。
「おいおい。気持ち悪いな」
オオムカデンダルが感心したように言う。
いや、アンタの見た目もだいぶグロテスクだぞ。
それは、俺もだが。
そんな事を言っている場合か。
俺は自戒した。
ソレは、あっと言う間にオオムカデンダルぐらいの大きさに育った。
育ったと言って良いのか疑問だが、それもすぐに追い抜いた。
二周り、三周り、どんどん大きくなる。
「おおー、でけえ」
オオムカデンダルがソレを見上げる。
何と言う名前なのかも判らない。
ただただ、不気味で不快だ。
無理に形容すると、巨大な幼虫に見える。
青白い体表。
蛇腹状の体。
産毛がうっそうと生えており、人間の赤ん坊のような手が両脇から何十本と生えていた。
赤ん坊のような手と言っても巨大だ。
一本一本は丸太のように太く、形だけが赤ん坊のようなのである。
そして顔だ。
顔はあって無いような物だった。
顔全体が口である。
女性の、それも肥え太ったような女性の口が、頭全体であった。
巨大で肉厚な唇。
それが開くと巨大で頑丈そうな歯が、整然と並ぶ。
形容として正しいのかは判らなかったが、美しい歯並びだった。
そしてそれが、逆に恐ろしく不気味に感じられた。
この大きさ。
それだけで力と頑丈さを感じる。
今やその大きさは城壁の内側に収まりきれずに、城の外にまで溢れ出ようとしていた。
「ひゃあああ!ば、化け物!」
「ぎゃああああ!」
兵士たちが口々に恐怖と断末魔をあげた。
ある者は押し潰され、ある者は這いつくばりながらも逃げ出した。
俺も何とか、這ってその場を離れようともがく。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
三度目の創世 〜樹木生誕〜
湖霧どどめ
キャラ文芸
国単位で起こる超常現象『革命』。全てを無に帰し、新たなる文明を作り直す為の…神による手段。
日本で『革命』が起こり暫く。『新』日本は、『旧』日本が遺した僅かな手掛かりを元に再生を開始していた。
ある者は取り戻す為。ある者は生かす為。ある者は進む為。
--そして三度目の創世を望む者が現れる。
近未来日本をベースにしたちょっとしたバトルファンタジー。以前某投稿サイトで投稿していましたが、こちらにて加筆修正込みで再スタートです。
お気に入り登録してくださった方ありがとうございます!
無事完結いたしました。本当に、ありがとうございます。
元悪の組織の怪人が異能力バトルなどに巻き込まれる話(旧題:世の中いろんなヤツがいる)
外套ぜろ
ファンタジー
狼谷牙人は、いわゆる「悪の組織」に改造手術を受けた「悪の怪人」だった。
その組織が正義のヒーローに敗れて滅亡してからはや一年。正体を隠してフリーター生活を送っていた彼は、ひょんなことから路地裏で「異能力」を操る者たちの戦闘に巻き込まれる。
「君の力も、異能力だ」
「違うな」
謎の勘違いをされた牙人は、異能力の世界へと足を踏み入れることになる……。
どうやら、この現代社会には、牙人のように「不可思議な事情」を抱えた者たちがそれなりに暮らしているらしい。
——これは、そんな彼らの織り成す、少し変わった青春の物語。
不定期更新。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる