見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五一一

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「貴様!見えているのか!?」

「俺は眼は良いぞ。全方位同時に見えているし、昼間でも星が見える。土星の輪までハッキリとな」

 それは俺も知らなかった。
昼間でも星が見えるだって?
ドセイノワって何だ?

「幻覚は……幻覚は見えていないのか!?」

「機械の目に幻覚なんか効くかよ」

 それは言われてみれば確かにそうだ。
機械の目と言われてもバーデンにはきっとチンプンカンプンな筈だが。

「く……!訳の判らない事を!だが、麻痺して動けないのは事実のようだな。そして俺が強化により更に人間離れした能力を得ている事もまた事実だ!まだ俺の優勢は変わらない!」

 バーデンは一瞬動揺したが、すぐに平常心を取り戻した。

「貴様には驚かされてばかりだな。そこの男の上司と言うだけはある。ヤツよりも強い」

 バーデンが俺をアゴで指した。

「そいつぁ、どうも」

 オオムカデンダルがやる気無く返事をした。

「俺の部下に欲しいくらいだ。もっと良い待遇を用意してやるぞ?……だが、それはこの責任を貴様が償ってからだ!」

 バーデンが剣を両手で構える。

「藍眼鉱には魔法が効かんからな、エンチャント・ウェポンも掛からない。だから……」

 そう言って腰を落とす。

「技で斬る!」

 言うと同時に剣を振り下ろし、瞬間的に同じ軌跡で振り上げた。
速い。
地面に透明な陽炎のような何かが一瞬だけ見えた。

 次の瞬間。

 バアァーンッ!

 轟音が轟いてオオムカデンダルが砂煙に巻かれる。
何だ?
何が起きた。

「秘剣、一条燕」

 バーデンが得意気に言う。

「貴様は目が良いんだったな。見えたか?地を這う高速の燕が」

「高速の燕?ただのソニックブームだろ。生身の人間にこんな真似が出来ると言う所は褒めてやろう。さすが勇者様」

「!」

 バーデンの独り言に、オオムカデンダルが即答した。
無傷だ。
全く効いていない。
徐々に薄れていく砂煙の中から、オオムカデンダルの姿が現れる。

「ば、馬鹿な!?」

「大方、もしも自分が魔王と戦ったらこうだ、と言うのを想像して編み出した技なんだろ?俺は魔王とは会った事は無いが、良い線いくんじゃないか?たぶん」

 良い線か。
俺も言われたが微妙だな。
それに、ヴァンパイアは魔王だぞ。
会った事は無いとか言ってやるなよ。

「……くっ!まるで自分は魔王よりも強いと言いたげだな」

 バーデンが悔しそうな表情を浮かべて、オオムカデンダルを睨み付けた。

「この世界の事が段々と判ってきた所だ。一部を除いて大した事は無い」

 事実だろうが、なんだかムカつくな。
俺はこの世界の住人だ。
チョロい世界みたいに言うな。

「お前など瞬殺だが、これじゃ弱い者いじめだな。軽くお仕置きするにとどめよう」
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