見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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五〇一

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 バーデンはまだか。
俺は縦横無尽に暴れながらも、バーデンの姿を探していた。
だが、その姿はまだ見えない。

 しかし、きっと見ている筈だ。
出陣した直後にこれだけの被害を受けているのだ。
気づかない筈はない。
それでも現れないと言う事は、やはり逆にこの状況を見ているからだろう。
何を考えているのかは知らないが。

 前線の兵士はあらかた片付いた。
だが後続が現れなくなってきた。
やはり警戒している。
これ以上誘い出すのは難しいかもしれない。
さすがに全軍を相手にするつもりは無い。
なんとかバーデンだけを倒したい所だが。

「あんまり出てこなくなったな」

 カルタスが言った。

「どうするの?突入する?」

 オレコも言った。
俺は少し考えた。
城内に俺たちを入れると言う選択肢は無い筈だ。
如何に作戦と言えど敵を、ましてや俺たちを城内に誘い込むなど、俺が逆の立場なら絶対に認められない。
入られればもう後が無い。
万が一の事を考えれば、そんな事は考えもつかない筈だ。

 だいたい帝国の城と言う事は、皇帝陛下の居城と言う事だ。
栄光と権威ある皇帝の居城に、賊の侵入を許すと言う事自体が、絶対に許される事ではないのだ。

「……罠か」

 俺は警戒していた。
バーデンは常識通りの動きはしない。
帝国将軍としての誇りなど、最初から持ち合わせていない。
だから自国民を巻き添えにしたり、捨て石にする事にも頓着しない。

 だったら、皇帝の居城を利用する事もするかもしれない。

 俺はここに来て迷っていた。
だが、罠だとしてもこのままには出来まい。
カルタスたちまで巻き添えには出来んな。

「……俺が突入する。お前たちはここで待機だ」

「は?なんだよそれは」

 カルタスがあからさまに不満を口にした。

「俺一人の方が城内では動きやすい。それに罠だった場合の為に、お前たちはそこに居てくれ」

 カルタスは犬の如く、ウーと唸った。

「……判ったわ。でも無理はしないで。何かあったらすぐに言って頂戴。いつでも突入出来るから」

「判った」

 オレコにそう返事を告げると、俺は城門に向けて走った。

「放てえ!」

 どこからともなく、声が聞こえた。
それと同時に城門上の砦から、射手がズラッと現れた。

 ひゅん!ひゅん!ひゅん!ひゅん!

 矢が大量に放たれる。
まるで雨のように矢が降り注ぐ。
とてもかわせるような量では無い。

「ふん、矢など俺には通じん」

 そうだ。
俺には矢など刺さらない。
雨のような矢は、文字通りの雨程度の意味しか無かった。

 筈だった。

 ボォンッ!ボボボボボオオォンッ!

 矢は地面に当たると爆発した。

「なんだと!?」

 俺は降り注ぐ矢を手で払い除ける。

 ボォンッ!

 払い除けた矢は、やはり爆発した。
全てを払うのは無理がある。
俺は体中に矢を受けて、大量の爆発に巻き込まれた。
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