501 / 826
五〇一
しおりを挟む
バーデンはまだか。
俺は縦横無尽に暴れながらも、バーデンの姿を探していた。
だが、その姿はまだ見えない。
しかし、きっと見ている筈だ。
出陣した直後にこれだけの被害を受けているのだ。
気づかない筈はない。
それでも現れないと言う事は、やはり逆にこの状況を見ているからだろう。
何を考えているのかは知らないが。
前線の兵士はあらかた片付いた。
だが後続が現れなくなってきた。
やはり警戒している。
これ以上誘い出すのは難しいかもしれない。
さすがに全軍を相手にするつもりは無い。
なんとかバーデンだけを倒したい所だが。
「あんまり出てこなくなったな」
カルタスが言った。
「どうするの?突入する?」
オレコも言った。
俺は少し考えた。
城内に俺たちを入れると言う選択肢は無い筈だ。
如何に作戦と言えど敵を、ましてや俺たちを城内に誘い込むなど、俺が逆の立場なら絶対に認められない。
入られればもう後が無い。
万が一の事を考えれば、そんな事は考えもつかない筈だ。
だいたい帝国の城と言う事は、皇帝陛下の居城と言う事だ。
栄光と権威ある皇帝の居城に、賊の侵入を許すと言う事自体が、絶対に許される事ではないのだ。
「……罠か」
俺は警戒していた。
バーデンは常識通りの動きはしない。
帝国将軍としての誇りなど、最初から持ち合わせていない。
だから自国民を巻き添えにしたり、捨て石にする事にも頓着しない。
だったら、皇帝の居城を利用する事もするかもしれない。
俺はここに来て迷っていた。
だが、罠だとしてもこのままには出来まい。
カルタスたちまで巻き添えには出来んな。
「……俺が突入する。お前たちはここで待機だ」
「は?なんだよそれは」
カルタスがあからさまに不満を口にした。
「俺一人の方が城内では動きやすい。それに罠だった場合の為に、お前たちはそこに居てくれ」
カルタスは犬の如く、ウーと唸った。
「……判ったわ。でも無理はしないで。何かあったらすぐに言って頂戴。いつでも突入出来るから」
「判った」
オレコにそう返事を告げると、俺は城門に向けて走った。
「放てえ!」
どこからともなく、声が聞こえた。
それと同時に城門上の砦から、射手がズラッと現れた。
ひゅん!ひゅん!ひゅん!ひゅん!
矢が大量に放たれる。
まるで雨のように矢が降り注ぐ。
とてもかわせるような量では無い。
「ふん、矢など俺には通じん」
そうだ。
俺には矢など刺さらない。
雨のような矢は、文字通りの雨程度の意味しか無かった。
筈だった。
ボォンッ!ボボボボボオオォンッ!
矢は地面に当たると爆発した。
「なんだと!?」
俺は降り注ぐ矢を手で払い除ける。
ボォンッ!
払い除けた矢は、やはり爆発した。
全てを払うのは無理がある。
俺は体中に矢を受けて、大量の爆発に巻き込まれた。
俺は縦横無尽に暴れながらも、バーデンの姿を探していた。
だが、その姿はまだ見えない。
しかし、きっと見ている筈だ。
出陣した直後にこれだけの被害を受けているのだ。
気づかない筈はない。
それでも現れないと言う事は、やはり逆にこの状況を見ているからだろう。
何を考えているのかは知らないが。
前線の兵士はあらかた片付いた。
だが後続が現れなくなってきた。
やはり警戒している。
これ以上誘い出すのは難しいかもしれない。
さすがに全軍を相手にするつもりは無い。
なんとかバーデンだけを倒したい所だが。
「あんまり出てこなくなったな」
カルタスが言った。
「どうするの?突入する?」
オレコも言った。
俺は少し考えた。
城内に俺たちを入れると言う選択肢は無い筈だ。
如何に作戦と言えど敵を、ましてや俺たちを城内に誘い込むなど、俺が逆の立場なら絶対に認められない。
入られればもう後が無い。
万が一の事を考えれば、そんな事は考えもつかない筈だ。
だいたい帝国の城と言う事は、皇帝陛下の居城と言う事だ。
栄光と権威ある皇帝の居城に、賊の侵入を許すと言う事自体が、絶対に許される事ではないのだ。
「……罠か」
俺は警戒していた。
バーデンは常識通りの動きはしない。
帝国将軍としての誇りなど、最初から持ち合わせていない。
だから自国民を巻き添えにしたり、捨て石にする事にも頓着しない。
だったら、皇帝の居城を利用する事もするかもしれない。
俺はここに来て迷っていた。
だが、罠だとしてもこのままには出来まい。
カルタスたちまで巻き添えには出来んな。
「……俺が突入する。お前たちはここで待機だ」
「は?なんだよそれは」
カルタスがあからさまに不満を口にした。
「俺一人の方が城内では動きやすい。それに罠だった場合の為に、お前たちはそこに居てくれ」
カルタスは犬の如く、ウーと唸った。
「……判ったわ。でも無理はしないで。何かあったらすぐに言って頂戴。いつでも突入出来るから」
「判った」
オレコにそう返事を告げると、俺は城門に向けて走った。
「放てえ!」
どこからともなく、声が聞こえた。
それと同時に城門上の砦から、射手がズラッと現れた。
ひゅん!ひゅん!ひゅん!ひゅん!
矢が大量に放たれる。
まるで雨のように矢が降り注ぐ。
とてもかわせるような量では無い。
「ふん、矢など俺には通じん」
そうだ。
俺には矢など刺さらない。
雨のような矢は、文字通りの雨程度の意味しか無かった。
筈だった。
ボォンッ!ボボボボボオオォンッ!
矢は地面に当たると爆発した。
「なんだと!?」
俺は降り注ぐ矢を手で払い除ける。
ボォンッ!
払い除けた矢は、やはり爆発した。
全てを払うのは無理がある。
俺は体中に矢を受けて、大量の爆発に巻き込まれた。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
三度目の創世 〜樹木生誕〜
湖霧どどめ
キャラ文芸
国単位で起こる超常現象『革命』。全てを無に帰し、新たなる文明を作り直す為の…神による手段。
日本で『革命』が起こり暫く。『新』日本は、『旧』日本が遺した僅かな手掛かりを元に再生を開始していた。
ある者は取り戻す為。ある者は生かす為。ある者は進む為。
--そして三度目の創世を望む者が現れる。
近未来日本をベースにしたちょっとしたバトルファンタジー。以前某投稿サイトで投稿していましたが、こちらにて加筆修正込みで再スタートです。
お気に入り登録してくださった方ありがとうございます!
無事完結いたしました。本当に、ありがとうございます。
元悪の組織の怪人が異能力バトルなどに巻き込まれる話(旧題:世の中いろんなヤツがいる)
外套ぜろ
ファンタジー
狼谷牙人は、いわゆる「悪の組織」に改造手術を受けた「悪の怪人」だった。
その組織が正義のヒーローに敗れて滅亡してからはや一年。正体を隠してフリーター生活を送っていた彼は、ひょんなことから路地裏で「異能力」を操る者たちの戦闘に巻き込まれる。
「君の力も、異能力だ」
「違うな」
謎の勘違いをされた牙人は、異能力の世界へと足を踏み入れることになる……。
どうやら、この現代社会には、牙人のように「不可思議な事情」を抱えた者たちがそれなりに暮らしているらしい。
——これは、そんな彼らの織り成す、少し変わった青春の物語。
不定期更新。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる