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四九〇
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「ふうん。こんな所にねえ」
オオムカデンダルは建物を見て呟いた。
「どうぞ」
使いの者が扉を開けて中へ招き入れる。
俺たちは意外と長い廊下を歩く。
この奥の部屋にソル皇子は居る筈だ。
使いの者が最後の扉を開けた。
中の部屋にはテーブルがあり、やはりソル皇子が座っていた。
皇子が座るにはあまりに質素な椅子とテーブルだ。
皇子は俺たちを見ると少し驚いたような表情を見せた。
「なんじゃ。お主も来たのか」
すぐにいつもの調子に戻ると、ソル皇子はオオムカデンダルに言った。
「ああ、ちょっと釘を刺しにな」
オオムカデンダルはそう言ったが、ソル皇子にあまり関心を示さなかった。
部屋の中をキョロキョロと見回している。
「釘を刺すとな?」
「あんまり俺の部下を自分の部下のように呼びつけないでもらおうか。営業妨害だ」
秘密結社が営業妨害とは、なんの冗談か。
「……なるほど。それは誠にあい済まんかった」
ソル皇子はオオムカデンダルに言われて素直に謝った。
使いの者も、俺も、驚いた。
皇子から謝罪を引き出すなんて。
どっちが悪いとかではない。
皇族は謝らないもの。
それが世の常識である。
やはりこの皇子は俺の知っている皇族とは違う。
「……それで、私に用とは」
俺は話を変えるように、ソル皇子に尋ねた。
使いの者も、ホッと安堵の表情を浮かべる。
「実はの、兄上がまた動き出した」
それは……知っている。
「お主たちであろう。西の繁華街を独立させようとしているのは」
俺は言葉に詰まった。
さすがに正面切って問いただされると、言いにくい物がある。
「ああ。そうだ」
一人だけそうじゃない男が居た。
オオムカデンダルは特に興味無さそうに答えた。
「やはりか」
ソル皇子も特に驚かずにそう言った。
「帝国を滅ぼすつもりか?」
「いや、特にそう思っている訳じゃないがね。俺たちの目標は世界征服だからよ、その中に帝国も入っているだけの事だ」
それはつまりそう言う事だろうが。
「そうか……それは困ったのう」
ソル皇子も他人事のように言った。
なんなんだ、この二人の会話は。
俺はともかく使いの男は、表情がこわばりっぱなしだ。
「まあ、それはともかくじゃ。兄上が西の繁華街独立を認める筈がない。お主たちが首謀者だと知ってはなおさらじゃ」
そうだろうな。
「ああ、さっきなんとかって言う将軍が文句を言いに来てたぞ」
バーデン将軍だ。
陳情に来たみたいに言うんじゃない。
名前も覚えてやれ。
「して、どうなった?」
「帰って行ったよ。急用を思い出したらしい」
「お主が相手を?」
「いいや、そこに居るうちの行動隊長が相手をした」
そう言ってオオムカデンダルは、俺をアゴで指した。
オオムカデンダルは建物を見て呟いた。
「どうぞ」
使いの者が扉を開けて中へ招き入れる。
俺たちは意外と長い廊下を歩く。
この奥の部屋にソル皇子は居る筈だ。
使いの者が最後の扉を開けた。
中の部屋にはテーブルがあり、やはりソル皇子が座っていた。
皇子が座るにはあまりに質素な椅子とテーブルだ。
皇子は俺たちを見ると少し驚いたような表情を見せた。
「なんじゃ。お主も来たのか」
すぐにいつもの調子に戻ると、ソル皇子はオオムカデンダルに言った。
「ああ、ちょっと釘を刺しにな」
オオムカデンダルはそう言ったが、ソル皇子にあまり関心を示さなかった。
部屋の中をキョロキョロと見回している。
「釘を刺すとな?」
「あんまり俺の部下を自分の部下のように呼びつけないでもらおうか。営業妨害だ」
秘密結社が営業妨害とは、なんの冗談か。
「……なるほど。それは誠にあい済まんかった」
ソル皇子はオオムカデンダルに言われて素直に謝った。
使いの者も、俺も、驚いた。
皇子から謝罪を引き出すなんて。
どっちが悪いとかではない。
皇族は謝らないもの。
それが世の常識である。
やはりこの皇子は俺の知っている皇族とは違う。
「……それで、私に用とは」
俺は話を変えるように、ソル皇子に尋ねた。
使いの者も、ホッと安堵の表情を浮かべる。
「実はの、兄上がまた動き出した」
それは……知っている。
「お主たちであろう。西の繁華街を独立させようとしているのは」
俺は言葉に詰まった。
さすがに正面切って問いただされると、言いにくい物がある。
「ああ。そうだ」
一人だけそうじゃない男が居た。
オオムカデンダルは特に興味無さそうに答えた。
「やはりか」
ソル皇子も特に驚かずにそう言った。
「帝国を滅ぼすつもりか?」
「いや、特にそう思っている訳じゃないがね。俺たちの目標は世界征服だからよ、その中に帝国も入っているだけの事だ」
それはつまりそう言う事だろうが。
「そうか……それは困ったのう」
ソル皇子も他人事のように言った。
なんなんだ、この二人の会話は。
俺はともかく使いの男は、表情がこわばりっぱなしだ。
「まあ、それはともかくじゃ。兄上が西の繁華街独立を認める筈がない。お主たちが首謀者だと知ってはなおさらじゃ」
そうだろうな。
「ああ、さっきなんとかって言う将軍が文句を言いに来てたぞ」
バーデン将軍だ。
陳情に来たみたいに言うんじゃない。
名前も覚えてやれ。
「して、どうなった?」
「帰って行ったよ。急用を思い出したらしい」
「お主が相手を?」
「いいや、そこに居るうちの行動隊長が相手をした」
そう言ってオオムカデンダルは、俺をアゴで指した。
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