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四八四
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トラゴスは一人、黒い煙の中に立っていた。
まったく何の影響も無いように見える。
「トラゴス……」
カルタスがうずくまりながら、トラゴスを見た。
バーデンが眉をひそめる。
「……なぜ平気なのだ」
その疑問はもっともだ。
だが、トラゴスの正体はバフォメットである。
元々山羊だった物が邪神の力で人間に転生した物と俺は理解している。
おそらく、バフォメットの依り代としてトラゴスを利用しようとしたのだろう。
結果としてトラゴスは自我を保ったまま、普段のバフォメットは基本的に表に出てきていない。
プニーフタールを蘇らせようと言う連中のもくろみは、最後の所で失敗している。
この状況は、カルタスを含めたトラゴス自身が危機に瀕しているのを察知して、バフォメットが表に出てきたのではないか。
俺はそう思った。
彼女の主たる人格はあくまでトラゴスであり、バフォメットはそれに従する低次の人格と言う事になる。
「我に恐怖があると思うか」
トラゴス……いや、バフォメットがバーデンに真っ向から対峙した。
「……貴様、何者だ?」
バーデンがトラゴスを警戒している。
俺はと言えば、黒い煙の届かない範囲で成り行きを見守っているだけだった。
「人間風情が身の程を知るがよい」
バフォメットが右手をあげる。
その指先が黒く光を放つ。
「ぬ……!?」
バーデンが苦しそうに表情を歪める。
「こ、これは……」
「判るか?これが真の恐怖だ。お前の物はまだまだ幼稚」
バフォメットはそう言ったが、この力はバーデンと同質でありながら、それを遥かに上回っている。
なにせ黒い光が放たれた瞬間、俺までも地面に膝をついていたのだ。
とても逃げられるような物ではない。
どの程度の範囲まで力が及んでいるのか。
見当も付かない。
見渡す限り、立っているのはバフォメットだけである。
敵も味方も、民衆も、その全員が地面に這いつくばっている。
「ト、トラゴス……やめるんだ」
カルタスが必死で訴える。
「これでは街の人間も壊れてしまう……!」
確かに。
この精神攻撃は強すぎる。
一般人ならすぐに限界が来るのは、想像に難くなかった。
「……お前が言うのならやめよう」
バフォメットはそう言うと、あげた手を下ろした。
それと同時に心の中の恐怖心も薄くなっていく。
これがバフォメットの力の片鱗か。
上級六大悪魔の一人と言われているが、片手間でこの力とは、力の底がまったく見えない。
「ならばトラゴスを護って見せよ」
バフォメットはカルタスにそう言うと、その気配を消した。
「あら?カルタス様?」
トラゴスは突然我に返った。
「カルタス、オレコ!今のうちだ!トラゴスを連れて走れ!」
まったく何の影響も無いように見える。
「トラゴス……」
カルタスがうずくまりながら、トラゴスを見た。
バーデンが眉をひそめる。
「……なぜ平気なのだ」
その疑問はもっともだ。
だが、トラゴスの正体はバフォメットである。
元々山羊だった物が邪神の力で人間に転生した物と俺は理解している。
おそらく、バフォメットの依り代としてトラゴスを利用しようとしたのだろう。
結果としてトラゴスは自我を保ったまま、普段のバフォメットは基本的に表に出てきていない。
プニーフタールを蘇らせようと言う連中のもくろみは、最後の所で失敗している。
この状況は、カルタスを含めたトラゴス自身が危機に瀕しているのを察知して、バフォメットが表に出てきたのではないか。
俺はそう思った。
彼女の主たる人格はあくまでトラゴスであり、バフォメットはそれに従する低次の人格と言う事になる。
「我に恐怖があると思うか」
トラゴス……いや、バフォメットがバーデンに真っ向から対峙した。
「……貴様、何者だ?」
バーデンがトラゴスを警戒している。
俺はと言えば、黒い煙の届かない範囲で成り行きを見守っているだけだった。
「人間風情が身の程を知るがよい」
バフォメットが右手をあげる。
その指先が黒く光を放つ。
「ぬ……!?」
バーデンが苦しそうに表情を歪める。
「こ、これは……」
「判るか?これが真の恐怖だ。お前の物はまだまだ幼稚」
バフォメットはそう言ったが、この力はバーデンと同質でありながら、それを遥かに上回っている。
なにせ黒い光が放たれた瞬間、俺までも地面に膝をついていたのだ。
とても逃げられるような物ではない。
どの程度の範囲まで力が及んでいるのか。
見当も付かない。
見渡す限り、立っているのはバフォメットだけである。
敵も味方も、民衆も、その全員が地面に這いつくばっている。
「ト、トラゴス……やめるんだ」
カルタスが必死で訴える。
「これでは街の人間も壊れてしまう……!」
確かに。
この精神攻撃は強すぎる。
一般人ならすぐに限界が来るのは、想像に難くなかった。
「……お前が言うのならやめよう」
バフォメットはそう言うと、あげた手を下ろした。
それと同時に心の中の恐怖心も薄くなっていく。
これがバフォメットの力の片鱗か。
上級六大悪魔の一人と言われているが、片手間でこの力とは、力の底がまったく見えない。
「ならばトラゴスを護って見せよ」
バフォメットはカルタスにそう言うと、その気配を消した。
「あら?カルタス様?」
トラゴスは突然我に返った。
「カルタス、オレコ!今のうちだ!トラゴスを連れて走れ!」
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