見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四四三

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 ドカアアッ!

 ヴァンパイアと俺の体が激しくぶつかった。

「ダアアアアアアアアアアーッ!」

 激突の瞬間、ヴァンパイアが雄叫びをあげた。

「オオオオオオオオオオオーッ!」

 俺も渾身の力でヴァンパイアの突進を受け止める。

 ズザザザザザザザザザザザザーッ!

 地面が砂煙をあげる。
俺の体はヴァンパイアを受け止めるも、そのままの体勢で大きく後ろへと押されていく。

「ぬ……!くあっ!」

 何とか堪えようとするが、足の裏が滑って地面を捉えきれない。

「レオ……!」

 カルタスの声が聞こえる。
だが、ずいぶん遠くになってしまっている。
かなりの距離を押されている事が判る。

「アアアアアアアアアアアアッ!」

 ヴァンパイアはまだ声をあげていた。
突進のパワーも収まるどころか増してさえいる。

 ドゴアッ!ガラガラガラ……ッ!

 背後に衝撃を感じたと同時に、それは砕けて頭上から降り注ぐ。

 壁だ。

 どこかの建物にぶつかり、壁をぶち抜いたらしい。
瓦礫が体に当たる。
人々が悲鳴をあげて逃げ惑う気配がするが、滅茶苦茶で訳が判らない。
テーブルや椅子や戸棚や食器など、あらゆる物を破壊しながらヴァンパイアは突き進んだ。

「く……!この野郎……いい加減にしやがれえっ!」

 俺は更に全身の力を込めて、ヴァンパイアを下からすくい上げる。
止められないならひっくり返してやる。
力の方向が変わって、ヴァンパイアはあっけなく地面に転がった。

「うおおっ!」

 意表を突かれてヴァンパイアは驚きの声をあげる。
俺はその隙を見逃さない。
間髪入れずにヴァンパイアに馬乗りになる。

 ドカドカドカドカドカドカドカドカッ!

 連続でヴァンパイアの顔面を殴り続けた。

「ぶっ!ぐっばっがっ!ぶふっ!ごのやっ!ろうっ!」

 ヴァンパイアが必死に抵抗する。
あんまりしゃべるんじゃねえよ、何言ってるかどうせ聞き取れん。

 人間離れしたモンスターが戦い合っても、規模が大きくなるだけでやってる事はただの取っ組み合いだ。
理屈もへったくれも無い殺し合いなら、戦闘なんてそんな物なんだろう。

「じねえええッ!」

 ヴァンパイアが苦し紛れに俺の首を掴まえた。

「くっ!この!汚ねえ手を……離しやがれえ……ッ!」

「誰が離ずがあ……ごのッ腐れクラゲエッ!じねッ!じねッ!じねええええッ!」

 信じられないパワーでヴァンパイアが俺の首を絞めた。
これは……絞殺などではなく、首を折りにきている。

 視界の端に、危険を報せる文字が表示される。
警告だと?
うるせえ邪魔だ。
消せないのかこの表示は。

「あーあ。どうしてこんな戦い方になるかねえ」

 オオムカデンダルの声が聞こえた。

「アラート鳴ってるじゃねえか。いい加減にしろよ」

 オオムカデンダルの声はいつに無く、呆れ返っていた。
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