見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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四三九

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 もう訳が判らん。
何でもありか。
カルタスが起き上がり再び剣を構える。

「どうするんだ。ヤツを倒したら銀猫は……」

 カルタスがそこまで言って言葉を濁した。
そうだ。
銀猫は助からない。
最悪な事に、倒しても倒さなくても、おそらく助からないのだ。
ヴァンパイアの言葉を信じるならば。

「……だからと言って倒さん訳にはいかん」

「お、おい」

 俺だって出来れば助けたい。
しかし、どうすれば良いのか。

「そうやっていつまでも迷っているがいい!」

 ヴァンパイアはこちらの都合などお構いなしに襲ってくる。

「くっ!」

 あっという間にヴァンパイアが間合いを詰める。
とっさにガードするのが精一杯だ。

 どかっ!

 俺はヴァンパイアの強烈なタックルを受け止めた。
しかし、その勢いは止められない。

 バキイッ!がらっしゃーん!

 勢い余って、俺の身体は店の壁をぶち抜いた。

「はあっはっはっはっはっはっ!」

 ヴァンパイアの高笑いが聞こえる。
ここは二階だ。
俺の身体は二階の壁から外の通りへと宙を舞う。

 どがらがしゃーん!

 下の道にはいくつもテーブルが並べられ、飲食を楽しむ客が大勢居た。
その真上へ俺が落ちてきたのだ。
テーブルごと食器は砕け散り、料理も酒も辺りへぶちまけた。

「きゃああああああ!」

 客たちの悲鳴が上がる。
辺りは一瞬で騒然となった。

「な、なななんだ!?」

「おい!見ろ!化け物だ!」

 客たちが口々に叫ぶ。
本物の化け物はあっちだって誰か教えてやれよ。

 俺はふらつきながら立ち上がった。
たいした威力だ。
確かにさっきまでとはパワーが違う。

「うおおおおっ!?」

「きゃああああっ!」

 二階から今度は続けざまに、カルタスとオレコが降ってくる。
おい、順番にしろ!

 俺は二人を右手と左手で交互に受け止めた。

「よ、よお、悪いな」

「ありがとうレオ」

 二人はそう言って腕から降りた。

「ふん、こうなったからには気にしてなど居れん。人間どもめ、全員僕の食事にしてやる!」

 ヴァンパイアはそう叫ぶと、二階から俺たちめがけて飛び降りた。

「きゃああああっ!」

 それを見ていた客たちが、更に叫び声をあげる。
無理もない。
今のヴァンパイアの姿は完全に、凶悪かつ、醜悪なモンスターのソレである。
人々は我先にと逃げ惑う。

「きゃああっ!」

 逃げ遅れた女性客の一人がヴァンパイアに捕まった。

「た、たすけ……ッ!」

 ガブッ!
ぶしゃああああーっ!

 ヴァンパイアが構わず女に噛みついた。
首から鮮血が、間欠泉の如くに噴き上がる。

「野郎……殺りやがった……!」

 カルタスが呟く。

「てめえ!殺りやがったなあああっ!」

 堰を切ったようにカルタスが叫ぶ。
同時にカルタスソードを引きずって、ヴァンパイアへ向かって走り出した。
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