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四二八
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「じゃあよ、早速見てみようぜ」
カルタスが言った。
そうだな。
とにかく見てみない事には話が進まない。
俺は近い扉を開けて部屋の中へと入った。
ここにはたくさん部屋がある。
ほとんどが何も使っていない部屋だが、必要になれば何にでも使える部屋なのだと以前令子が言っていた。
俺はセクトビートルを取り出すと、収集した記録を吐き出させた。
ぴっ
テーブルの上でセクトビートルが光を発する。
同じテーブルの上で小さな映像が、まるで本物のように様子を再現した。
「なんだこれ……彫刻か……?」
カルタスが映像を手で触ろうとする。
「無駄だ。それはただの光なんだそうだ」
「ひかり?」
「理屈は判らんが、光をここへ集めて実際に見聞きしたものを再現しているらしい。立体映像と言うんだそうだ」
「立体映像……」
オレコもカルタスも狐につままれたような顔をしている。
実は俺だってそうだ。
さも判ったように説明したが、ただの説明文の受け売りだ。
実際、彼らの技術は凄まじい。
数々の魔法のアイテムを造り出すドワーフをしのぐと言っても過言ではない。
彼らは違うと言うが、俺たちにとってはもはや、魔法との違いなんて無いに等しかった。
映像の視点から察するに部屋の天井、それも角の方から記録したような映像だった。
部屋に窓がない事から、おそらくここが地下の部屋なのだろう。
ろうそくの明かりが薄暗く部屋の中を照らしている。
しばらく見ていたが別に何も起こらない。
空振りか。
「おかしな様子は無いみたいね」
オレコが呟く。
仕方がない。
少し先の映像を見てみよう。
俺は映像に大きな動きが見られる箇所まで時間を飛ばした。
「なんだ?」
カルタスが身を乗り出す。
映像の中の銀猫は、ここまでずっと静かに机に向かっていた。
何をしているのかは判らないが、じっと座っていたのだ。
ところが突然銀猫は、誰かと話を始めたのだ。
相手は映っていない。
映像は、部屋の中のほぼ全体を映しているのにもかかわらずだ。
「誰と話している?」
カルタスが映像に近付く。
『俺に出来る事はもう無い。後はどこへでも好きな所へ行くが良い!』
銀猫は確かにそう言った。
かなり強い口調だ。
『いや、君にはまだ出来る事があるよ。それも一番肝心な役目が残っている』
何者かが銀猫に答えた。
『お前の要求は飲んだ筈だ。頼む、もう出て行ってくれ……!』
銀猫は苦しそうにそう言った。
あの男勝りの銀猫が、ここまで懇願するとは。
相手はいったい何者なんだ?
何を要求しているのか。
『ふふふ。悪いがまだそうはいかないんだ。予定外の登場人物が来てしまったからね。本当はもっと先の予定だったんだが……シナリオは変更された』
謎の声はそう言って不気味に笑った。
カルタスが言った。
そうだな。
とにかく見てみない事には話が進まない。
俺は近い扉を開けて部屋の中へと入った。
ここにはたくさん部屋がある。
ほとんどが何も使っていない部屋だが、必要になれば何にでも使える部屋なのだと以前令子が言っていた。
俺はセクトビートルを取り出すと、収集した記録を吐き出させた。
ぴっ
テーブルの上でセクトビートルが光を発する。
同じテーブルの上で小さな映像が、まるで本物のように様子を再現した。
「なんだこれ……彫刻か……?」
カルタスが映像を手で触ろうとする。
「無駄だ。それはただの光なんだそうだ」
「ひかり?」
「理屈は判らんが、光をここへ集めて実際に見聞きしたものを再現しているらしい。立体映像と言うんだそうだ」
「立体映像……」
オレコもカルタスも狐につままれたような顔をしている。
実は俺だってそうだ。
さも判ったように説明したが、ただの説明文の受け売りだ。
実際、彼らの技術は凄まじい。
数々の魔法のアイテムを造り出すドワーフをしのぐと言っても過言ではない。
彼らは違うと言うが、俺たちにとってはもはや、魔法との違いなんて無いに等しかった。
映像の視点から察するに部屋の天井、それも角の方から記録したような映像だった。
部屋に窓がない事から、おそらくここが地下の部屋なのだろう。
ろうそくの明かりが薄暗く部屋の中を照らしている。
しばらく見ていたが別に何も起こらない。
空振りか。
「おかしな様子は無いみたいね」
オレコが呟く。
仕方がない。
少し先の映像を見てみよう。
俺は映像に大きな動きが見られる箇所まで時間を飛ばした。
「なんだ?」
カルタスが身を乗り出す。
映像の中の銀猫は、ここまでずっと静かに机に向かっていた。
何をしているのかは判らないが、じっと座っていたのだ。
ところが突然銀猫は、誰かと話を始めたのだ。
相手は映っていない。
映像は、部屋の中のほぼ全体を映しているのにもかかわらずだ。
「誰と話している?」
カルタスが映像に近付く。
『俺に出来る事はもう無い。後はどこへでも好きな所へ行くが良い!』
銀猫は確かにそう言った。
かなり強い口調だ。
『いや、君にはまだ出来る事があるよ。それも一番肝心な役目が残っている』
何者かが銀猫に答えた。
『お前の要求は飲んだ筈だ。頼む、もう出て行ってくれ……!』
銀猫は苦しそうにそう言った。
あの男勝りの銀猫が、ここまで懇願するとは。
相手はいったい何者なんだ?
何を要求しているのか。
『ふふふ。悪いがまだそうはいかないんだ。予定外の登場人物が来てしまったからね。本当はもっと先の予定だったんだが……シナリオは変更された』
謎の声はそう言って不気味に笑った。
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