見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
391 / 826

三九一

しおりを挟む
「証拠でもあるのか」

 俺はあからさまに男を疑ってかかる。
どう見ても彼らの仲間には見えない。
彼らは子供の集まりだった。
コイツは明らかに大人だ。
しかも結構良い歳だろう。

「証拠だと?そんなもんある訳ねぇだろ」

 男がイライラしてきた。

「じゃあこれは渡せんな」

「良いから渡せ」

「渡せ?」

 返せじゃなく渡せ、か。
段々と馬脚を現しつつあるな。

「俺が自分で返す。お前はそれまで大人しく待ってろよ」

「テメエ、人が下手に出てりゃいい気になりやがって」

「いつお前が下手に出てたんだ。普通の対応しかしてなかったぞ」

「うるせえ!」

 判りやすくて助かる。
オオムカデンダルや、蜻蛉洲みたいなタイプだったら俺の手には負えない。
俺はメモ書きを懐にしまった。

「欲しければ奪ってみろ。取れたらくれてやる」

「へっ、最初からそうすりゃ良かったぜ」

 気の早い野郎だ。

「ただし、取れなかったらお前に聞きたい事がある」

「そりゃあ、永遠に無理だぜ!」

 男が目の前に立ちはだかった。
この距離で仁王立ちか。
相当な自信だ。

「掛かってこい」

 俺は男を人差し指で招いた。

「はっ!大物ぶりやがって。それはこっちのセリフだ。先に殴らせてやるよ、テメエが来い」

 なら遠慮なく。

 たっ! 

 俺は男が言い終わった瞬間に、地面を蹴って走り出した。

 どむっ!

 男の腹に俺の右拳がめり込む。
たいした力は加えていない。

「……かっ!……くはっ!」

 男の体はくの字に曲がって膝から崩れ落ちる。
ま、期待はしてなかったが。

「おい、俺の勝ちで良いか?まだやるのか?」

 俺はしゃがみこんで男の顔を下から覗き込む。

「……くそっ!ふざけやがって!」

 男が苦しそうに呟く。
俺は男の首に手を掛けて持ち上げる。

「うお!おおわああ!」

 男の足が地面から離れる。
足をバタつかせるが、その先に触れる物は何も無い。

「俺の勝ちで良いか?まだやるのか?」

 俺は同じ言葉を繰り返した。

「わ……わかった!俺の敗けでいい!」

 敗けでいいだと。
プライドだけは見上げるほど高いな。
俺は男を下ろした。

「な、何者だ。アンタ?」

 男が首をさすりながら尋ねた。

「俺はネオジョルトの行動隊長だ。そのうち嫌でも知るようになる。覚えておくがいい」

「ネ、ネオジョルト?」

「そんな事よりもお前は何者だ。何故このメモが欲しい」

 男は一瞬黙ったが、すぐに話し始めた。

「俺はアントンってんだ。そのメモは金額と合言葉が書いてある……筈だ」

 筈?
どう言う事だ。

「あいつらは金を貯めている。しかもかなりの金額だ。このスラムで金を使わず貯めるなんて事をするヤツはいねえ。日々の食い物にも困るような所だ」

 なるほど、一理あるな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

バスト・バースト!

世々良木夜風
ファンタジー
オトメ・アイリンは可愛いものが大好きな女の子! 毎日、おしゃれには気を使っています。 しかし、もうすぐ16になるのに、女の子必須のあのアイテムを持っていないのです。 なんで、買ってくれないの~~~! その理由を知り、意気消沈したオトメ。 しかし、伝説の街・オーパイに行けばその問題が解決することを知ります。 しかし、オーパイはどこにあるかも分からず、長い旅路の果てにようやくたどり着ける場所。 そこでオトメは冒険者になって、オーパイを目指すことにしますが... その過程でも問題は山積み。 果たして、オトメは旅に出ることができるのか? 仮に旅に出れたとして、まともな冒険者生活を送れるのか? マイペースキャラからいじられキャラに変貌していくオトメの受難劇。 是非、ご覧ください! 〇小説家になろう様にも掲載しています。

ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。

彩世幻夜
ファンタジー
「働きもせずぐうたら三昧なんてつまんないわ!」 お嬢様はご不満の様です。 海に面した豊かな国。その港から船で一泊二日の距離にある少々大きな離島を領地に持つとある伯爵家。 名前こそ辺境伯だが、両親も現当主の祖父母夫妻も王都から戻って来ない。 使用人と領民しか居ない田舎の島ですくすく育った精霊姫に、『玉の輿』と羨まれる様な縁談が持ち込まれるが……。 王道中の王道の俺様王子様と地元民のイケメンと。そして隠された王子と。 乙女ゲームのヒロインとして生まれながら、その役を拒否するお嬢様が選ぶのは果たして誰だ? ※5/4完結しました。

さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~

みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。 生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。 夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。 なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。 きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。 お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。 やっと、私は『私』をやり直せる。 死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。

幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。 そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。 頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります! エメルロ一族には重大な秘密があり……。 そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。

アカシの小さな冒険

ハネクリ0831
ファンタジー
彼の名はアカシ。外見はどこにでもいる普通の大学生だ。ただ一つだけ、他の人とは決定的に違う点がある。それは、彼が自分の意思で身体のサイズを自由に縮小できるという能力だ。縮小できるサイズは、驚くべきことに原子レベルにまで達する。 この能力を持つ彼の生活は、平凡とは程遠い。スリルを求めて小さくなることもあれば、時にはこの力を使って誰かを助けることもある。アカシの日々は一見普通に見えるが、実際には驚きと危険に満ちている。 これは、そんな彼のある日常を描いた物語である。 週に一回の投稿を予定しています。

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...