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三九一
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「証拠でもあるのか」
俺はあからさまに男を疑ってかかる。
どう見ても彼らの仲間には見えない。
彼らは子供の集まりだった。
コイツは明らかに大人だ。
しかも結構良い歳だろう。
「証拠だと?そんなもんある訳ねぇだろ」
男がイライラしてきた。
「じゃあこれは渡せんな」
「良いから渡せ」
「渡せ?」
返せじゃなく渡せ、か。
段々と馬脚を現しつつあるな。
「俺が自分で返す。お前はそれまで大人しく待ってろよ」
「テメエ、人が下手に出てりゃいい気になりやがって」
「いつお前が下手に出てたんだ。普通の対応しかしてなかったぞ」
「うるせえ!」
判りやすくて助かる。
オオムカデンダルや、蜻蛉洲みたいなタイプだったら俺の手には負えない。
俺はメモ書きを懐にしまった。
「欲しければ奪ってみろ。取れたらくれてやる」
「へっ、最初からそうすりゃ良かったぜ」
気の早い野郎だ。
「ただし、取れなかったらお前に聞きたい事がある」
「そりゃあ、永遠に無理だぜ!」
男が目の前に立ちはだかった。
この距離で仁王立ちか。
相当な自信だ。
「掛かってこい」
俺は男を人差し指で招いた。
「はっ!大物ぶりやがって。それはこっちのセリフだ。先に殴らせてやるよ、テメエが来い」
なら遠慮なく。
たっ!
俺は男が言い終わった瞬間に、地面を蹴って走り出した。
どむっ!
男の腹に俺の右拳がめり込む。
たいした力は加えていない。
「……かっ!……くはっ!」
男の体はくの字に曲がって膝から崩れ落ちる。
ま、期待はしてなかったが。
「おい、俺の勝ちで良いか?まだやるのか?」
俺はしゃがみこんで男の顔を下から覗き込む。
「……くそっ!ふざけやがって!」
男が苦しそうに呟く。
俺は男の首に手を掛けて持ち上げる。
「うお!おおわああ!」
男の足が地面から離れる。
足をバタつかせるが、その先に触れる物は何も無い。
「俺の勝ちで良いか?まだやるのか?」
俺は同じ言葉を繰り返した。
「わ……わかった!俺の敗けでいい!」
敗けでいいだと。
プライドだけは見上げるほど高いな。
俺は男を下ろした。
「な、何者だ。アンタ?」
男が首をさすりながら尋ねた。
「俺はネオジョルトの行動隊長だ。そのうち嫌でも知るようになる。覚えておくがいい」
「ネ、ネオジョルト?」
「そんな事よりもお前は何者だ。何故このメモが欲しい」
男は一瞬黙ったが、すぐに話し始めた。
「俺はアントンってんだ。そのメモは金額と合言葉が書いてある……筈だ」
筈?
どう言う事だ。
「あいつらは金を貯めている。しかもかなりの金額だ。このスラムで金を使わず貯めるなんて事をするヤツはいねえ。日々の食い物にも困るような所だ」
なるほど、一理あるな。
俺はあからさまに男を疑ってかかる。
どう見ても彼らの仲間には見えない。
彼らは子供の集まりだった。
コイツは明らかに大人だ。
しかも結構良い歳だろう。
「証拠だと?そんなもんある訳ねぇだろ」
男がイライラしてきた。
「じゃあこれは渡せんな」
「良いから渡せ」
「渡せ?」
返せじゃなく渡せ、か。
段々と馬脚を現しつつあるな。
「俺が自分で返す。お前はそれまで大人しく待ってろよ」
「テメエ、人が下手に出てりゃいい気になりやがって」
「いつお前が下手に出てたんだ。普通の対応しかしてなかったぞ」
「うるせえ!」
判りやすくて助かる。
オオムカデンダルや、蜻蛉洲みたいなタイプだったら俺の手には負えない。
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「へっ、最初からそうすりゃ良かったぜ」
気の早い野郎だ。
「ただし、取れなかったらお前に聞きたい事がある」
「そりゃあ、永遠に無理だぜ!」
男が目の前に立ちはだかった。
この距離で仁王立ちか。
相当な自信だ。
「掛かってこい」
俺は男を人差し指で招いた。
「はっ!大物ぶりやがって。それはこっちのセリフだ。先に殴らせてやるよ、テメエが来い」
なら遠慮なく。
たっ!
俺は男が言い終わった瞬間に、地面を蹴って走り出した。
どむっ!
男の腹に俺の右拳がめり込む。
たいした力は加えていない。
「……かっ!……くはっ!」
男の体はくの字に曲がって膝から崩れ落ちる。
ま、期待はしてなかったが。
「おい、俺の勝ちで良いか?まだやるのか?」
俺はしゃがみこんで男の顔を下から覗き込む。
「……くそっ!ふざけやがって!」
男が苦しそうに呟く。
俺は男の首に手を掛けて持ち上げる。
「うお!おおわああ!」
男の足が地面から離れる。
足をバタつかせるが、その先に触れる物は何も無い。
「俺の勝ちで良いか?まだやるのか?」
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「わ……わかった!俺の敗けでいい!」
敗けでいいだと。
プライドだけは見上げるほど高いな。
俺は男を下ろした。
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「ネ、ネオジョルト?」
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「俺はアントンってんだ。そのメモは金額と合言葉が書いてある……筈だ」
筈?
どう言う事だ。
「あいつらは金を貯めている。しかもかなりの金額だ。このスラムで金を使わず貯めるなんて事をするヤツはいねえ。日々の食い物にも困るような所だ」
なるほど、一理あるな。
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