見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三三四

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 仕方なく、俺はカルタスたちを連れて令子の下へ向かった。

「あら、もう来たのね」

 広間に行くと令子とフィエステリアームが居た。
どうやらお茶を飲んでいたらしい。
優雅なものだ。

「なに?」

 フィエステリアームが令子を見る。

「百足君に頼まれてるの。彼らの実力を測って欲しいって」

 令子はそう言うと、最後の一口を飲み干した。

「じゃあ早速始めましょうか。付いていらっしゃい」

 令子はそのまま歩き出す。
俺たちは黙ってその後に続いた。

「えっと、トラゴスさんだっけ?彼女も?」

 外に出た令子は振り返って尋ねた。

「トラゴスは良いんだ。俺とオレコだけだ」

 カルタスが答える。

「そう。なら二人一緒で良いわ。かかっていらっしゃい」

 令子は平然とそう言った。

「なんだって?」

 カルタスが驚いた。
いや、オレコも驚いたし俺もちょっと驚いた。
令子も改造人間だ。
相当な実力なのは判っているが、具体的には良く判らないと言うのが正直な感想だった。
これは俺も興味深い。

「いや、アンタたちが強いんだろうと言うのは判るんだが……」

 カルタスが明らかに困惑している。
驚きと、舐められてると言う気持ちとが混ざって複雑な顔をしていた。
この男は正直すぎて判りやすい。

「気分を害したかしら。でも大丈夫だから本気でいらっしゃい。でないと怪我するわよ」

 令子か優しい口調で言った。
だが、どこか凄みを感じる。

「オレコ、カルタス。遠慮はするな、危険だぞ」

 俺は二人に声をかけた。
アドバイスなどではない。
警告だ。

「……判ったよ。やってやらあ」

 カルタスがその気になった。
オレコもカルタスにならう。

 しゃらっ

 カルタスが剣を抜いた。
普通の両手剣、いわゆるグレートソードと呼ばれる剣だ。
普通の剣よりも二回り大きな大剣だったが、カルタスはそれを背中から軽々と抜いて片手で構えた。

 左腕には手甲が装着されている。
とても頑丈そうな大きな手甲だ。
カルタスはこれを盾の代わりにしている。
その分、普通の手甲よりも大きく重たかった。

 オレコは対照的に片手で扱える小剣を構えた。
左手には何も持ってはいなかったが、特殊な形状の鞄を肩から斜めに掛けていた。
おそらくアイテムバッグだ。
オレコは火力よりも臨機応変に手を尽くして戦う。
レンジャーらしいスタイルだ。
もっともオレコはレンジャーではなく、上位職のソルジャーだ。

「いつでもどうぞ」

 令子は変身もせずに言った。

「変わらなくて良いのかい?」

 カルタスが言った。

「変身が必要ならそうするわ。余計な心配は無用よ」

 令子は普段と変わらない言葉で答えた。

 じゃりっ

 令子の言葉が終わると同時に、カルタスは地面を蹴って走り出した。
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