見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三一九

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『撮影』と言う物をすると、像を音と一緒に保管出来るらしい。
オオムカデンダルはこの尋問も記録として残すつもりなのだろう。

「レイスは悪霊だ。お前が言う事を鵜呑みにすると思うなよ」

 そう言って俺はレイスに近付いた。

「くそっ!貴様なんぞに!貴様らなんぞにぃ!」

 レイスが恨みの言葉を吐く。
だが、それはお門違いだし、俺たちに通用する理屈でもない。

「何の罪もない人間をたくさん殺してきただろうが。自分だけ楽に死ねるなんて虫の良い事を言うなよ」

 俺はレイスに見せつけるように手刀を構えた。

「くっ!呪ってやるッ!呪い殺してくれるからなあッ!」

「ふん……それが精々か。俺たちに呪いなどと言うものが通用するか試してみるがいい。呪いよりも恐ろしい目にあわせてやる」

 しゅっ!

 俺はそう言って再び手刀を振るった。

 ズバシュッ!

 今度はレイスの腹が裂ける。

「ぎゃああああっ!」

 ラボにレイスの絶叫が響き渡る。

「肉体を持った感想はどうだ?生身の肉体を傷付けられる感覚は?痛みは初めてか?どうなんだ!」

 俺は更にレイスを斬り裂いた。

「ぐぬぅぅ……っぐ!」

 肉体を持たない事を良いことに、今まで散々人々を苦しめてきただろうに。
惨めな奴だ。

「もう一度言う。女はどこだ。答えんと永遠に終わらんぞ?お前は不死のレイスなんだからな」

 レイスの体が、ガタガタと恐怖に震えている。

「し……知らん!本当に知らぬッ!」

「……嘘をつけ。俺はそんな嘘は信じないッ」

 ズバアッ!

「ぐああああっ!」

 体を斬り裂かれるたびに、レイスは叫び続けた。

「へえ、なかなかのいたぶり方だな。こいつは恐れ入った」

 オオムカデンダルが感心したように言った。

「お前、俺が何も知らないと思うなよ。俺はお前らの神殿を探して突き止めた事がある。そこにはついさっきまで何者かが居た痕跡があった。キメラが送った女を何者かが受け取ったのだ。横の繋がりは無い?嘘をつくならもっと上手くやれよ」

 そう言って俺はレイスの腹に手首を突っ込んだ。

 ぐちゅる! 

「アアアアアアッ!」

 レイスが絶叫に絶叫を重ねる。

「うわあ……痛そうだな……さすがに俺もそこまでは出来んな」

 オオムカデンダルがそう言いながらカメラを覗き込んだ。

「ぐぐぅぅ……」

「さあ言え。妹はどこだ」

 レイスがゆっくりと俺の方を向いた。

「……くくく……くっくっく。そうか……お前の妹なのか」

 しまった。
余計なことを教えてしまったか。
だが、そうは言っても今のレイスに出来ることなど無い。

「……余計な事は言わんでいい。聞かれた事だけ答えろ」

 俺はレイスに更に迫った。
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