見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三一二

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「ほらよ。これが欲しかったんだろ?」

 オオムカデンダルがレイスをサルバスの足下へと放った。

「おお!これがレイスか!なるほどのぅ、こんな姿をしておったのか!」

 サルバスが子供のようにレイスを眺めた。

「く……!やめんか、人間の魔導士風情が!」

 レイスはサルバスを威嚇する。

「ところで、向こうの男がレイスに真似られたのですが、どうすれば?」

  俺はサルバスにカルタスの事を尋ねた。

「ふむ。そうさのう、おそらくレイスが死ねば呪いは解けるだろうが、そもそもレイスは死んでおるからのぅ」

 サルバスが髭を触りながら答えた。

「クククク……!その通りよ!貴様らなど結局私に抗うことは出来んのだ!」

 レイスが再び騒ぎ出す。
それに比べてワイトは気を失ったままだ。
まさか、死んでるんじゃないだろな?

「死んでようが何だろうが、コイツ実体化してるからな。全身を細かくバラバラにすればいずれ死ぬだろ」

 オオムカデンダルが興味無さげに言う。
全身を細かくバラバラに……
よくそんなおぞましい事を思い付くな。

「原子レベルまでバラバラにしてやりゃ、呪いもへったくれも無くなるだろうぜ」

 そう言って笑った。

「原子と言うのは目に見えない極小の粒じゃな?なるほどのぅ。」

 サルバスが感心したように頷いた。
もうオオムカデンダルの話に付いていけるのか。
さすがは賢者だ。

「待ってくれ、その前にコイツからは聞き出さなければならない事が……」

 俺はレイスを今すぐにでも処分しそうな雰囲気に待ったを掛けた。

「判ってるよ。妹だろ?それなら蜻蛉洲が準備してる。例のキメラと合わせて全部データにして保管するらしい」

 オオムカデンダルはレイスの前に立ちはだかる。

「俺が用があるのはコイツの細胞だけだ。遺伝子でも手に入りゃ御の字だがな。サンプルになるならこの際何でも良い」

 オオムカデンダルはニヤリと笑みを溢した。

「ワシはレイスを徹底的に調べて研究したいのじゃ」

 サルバスも嬉しそうに笑う。

「そして僕はそいつのデータが欲しいと言う訳だ」

 突然、蜻蛉洲の声がした。
見ると蜻蛉洲が小さなケースを持って現れた。

「な、何を言っている貴様ら!我はレイスぞ!?」

 うわずった声でレイスが叫ぶ。

「はいはい。判ったから少し大人しくしましょうね?」

 いつの間にか令子もやって来て、レイスを後ろから羽交い締めにしている。

「よし、令子さんそのままだ」

 蜻蛉洲はケースを開くと何やら操作した。

 ヴ……ンッ

 小さな音がして、突然レイスが騒ぎ出す。

「ぐああっ!」

 令子は素早くレイスから離れた。

「これで捕獲完了。放っておいてももう逃げられもしなければ、暴れる事も出来んよ」

 蜻蛉洲が冷たく良い放った。
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