見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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三〇八

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 そんな魂胆だったのか。
だが何故、急に方針を転換するような事を。

「良いから乗れよ。話は後でしてやる」

 そう言ってオオムカデンダルは乗り込むように促した。

「お前たちも来るがいい。俺の上官の要望だ」

 俺は振り返りカルタスたちを招いた。

「……大丈夫なの?」

「ま、行けば判るって!」

 オレコとカルタスでは反応が真逆だった。
らしいと言えばらしいが。

「よし!帰るぞ!」

 オオムカデンダルが叫ぶと、全員を乗せたメタルシェルはゆっくりと離陸した。

「うおっ!なんだこれ!スゲエ!」

 カルタスが叫ぶ。
無理もない。

「……あの、お招き頂きありがとうございます。ですが」

 オレコがオオムカデンダルの顔色をうかがいながら挨拶した。
変身しているオオムカデンダルはマスクを被ったような状態だ。
ハッキリ言って、うかがってもあんまり意味はない。
俺は自分もそうだと思いだし、変身を解いた。

「おおー……お前もスゲエな、それ」

 カルタスが俺を見て感嘆の声を発した。
何にでも感動するなコイツ。

 オオムカデンダルは俺が変身を解いたのを見て、自分も解いた。

「すまんな。気が付かなかった。あのままじゃワケが判らんだろ?」

 そう言ってオオムカデンダルは笑った。
この屈託の無いところが今一つ憎めないところなのだろう。

「……それで、私たちに一体何のご用でしょう?」

 オレコが途中で止まっていた言葉を続けた。

「ああ。んじゃ単刀直入に言おう。お前らうちに来ないか?」

 は?
何を言い出すのか。
ネオジョルトの事は他言無用だとあれだけ俺に念を押しておいて、なんだそれは。

「俺は誰も彼もを引き込もうとしているんじゃない。有能な奴だけだ。今でも秘密は秘密だし、断ったら記憶だけは消させてもらうが」

 オオムカデンダルはさらりと言った。
記憶を消すだと。
そんな恐ろしいことを、よく事も無げに口にするな。

「……どうして、私たちに?」

 オレコが尋ねる。

「まず、強いことが条件だ。出来れば強いほどいい。それから信用できそうな事。最後に打算的で無いことだ」

 そう言ってオオムカデンダルは俺をアゴで指した。

「レオは死にかけてたのを助けてやったんだ。そして、あることを条件にウチの一員になった。お前たちも希望するならあんな風にしてやるぞ」

 カルタスとオレコは互いに俺を見た。

「今の話は……」

「……本当だ」

 俺はカルタスの質問に答えた。

「ウチは少数精鋭だ。無能は要らん。別に断っても何のペナルティーも無いが、この件は忘れてもらう。ただそれだけだ。今の暮らしを捨てられないと言うならそれも良いだろう。何なら二足の草鞋でも構わんぞ。このレオだって、未だに冒険者名乗ってるしな」
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