見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
279 / 826

二七九

しおりを挟む
 俺が下男かよ。
用があるのは俺なんだが。
まあ、文句を言っていても仕方がない。
とっとと、先を急ごう。

 俺は後ろへ周り荷車を押した。
積んである荷物は本物だ。
本当に納入もするのか。
そんな事を考えながら再び城へと向かった。

 城の周りには堀がある。
場内には跳ね橋を渡してもらい、そこを通って入城するしかない。
俺ならひとっ飛びなんだが、今は言っても始まらない。
大人しく業者を装い入城する。

「止まれ」

 衛兵がカルタスを制止した。

「へい、なんでやしょ?」

「積み荷の確認だ。屋号は?」

「え?」

「屋号だよ」

「ああ、えーっと……」

 店の名前を知らないのか。
看板をちゃんと読まなかったな。

「すいやせん。勤め始めたばっかりなんで、店の名前ど忘れしちまいました」

 俺はずっこけた。
そんな言い訳があるか。

「なに?そんな訳があるか」

 そりゃそうだ。
衛兵があからさまに訝しむ。

「あ、カルネ・ロッソです」

 俺は後ろから顔だけ覗かせて衛兵に言った。

「すんません。そいつ、顔の割りにまだ新入りなんで勘弁してください」

「新入りと顔は関係ねぇだろ!」

 カルタスが怒鳴る。

「はっはっはっはっ、違いない。カルネ・ロッソは精肉店だな。よし、積み荷を見せろ」

「へい」

 俺は荷車の上の木箱を開けた。

「ご覧の通り、晩餐用の子羊肉です」

 子羊かどうかは知らないが適当だ。

「ふむ、陛下は今晩は子羊肉を召し上がるのか。旨そうだな」

 衛兵が喉を鳴らした。

「ええ、今日のはなかなか上物ですよ」

「そうか、ではそっちの寸胴鍋はなんだ?」

 そう来るよな。
俺は困った。
だが開ける訳にはいかない。
中にはそれぞれ、オレコとトラゴスが入っている。

「ああ、旦那、それはその……今日はお日柄も良く散歩するには最適ですな」

 カルタスがごまかしに掛かった。
もう余計な事は言うな。
話がややこしくなる。

「……お前はさっきから何を言っているんだ。新人は先輩の仕事を見て少しは覚えろ」

 衛兵がカルタスを叱った。
いいぞ、もっと言ってやってくれ。
ついでに故郷へ帰れと言ってやれ。

 カルタスはしどろもどろになって声が小さくなった。
少しそうしていろ。

「それが、こっちは羊の臓物が入ってましてね」

「臓物が?」

「へい、なんでも下処理して使うんだそうですが、俺も良くは知らねえんで」

 衛兵は臓物と聞いて顔をしかめた。
嫌がっているな。

「臓物なんか何に使うんだ?まさか陛下に提供するのか?……まあ、いい。もう行ってよし」

「確認はされないんで?」

「ああ、料理になってるならまだしも、生の臓物なんて見たくない。晩酌が出来なくなる」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者断罪物語

ちば防蟲
ファンタジー
「頼む!勇者達を何とかしてくれ!!」 「え?お断りします」 元上司が頼み込んできたが、俺はやんわりと断る。 「そう言わずにさ、助けてくれよ~~」 「いやいや、もう民間人なんで義務ないですし」 断り続けると・・・・ 「貴様!国王からの勅命だぞ!それを......否定するというのか!!」 声を荒らげる元上司。 「否定はしてないですって。そもそも、どうして自分なのか分かりません」 「それはだな・・・・。各国に散らばっている勇者達は国民から高い支持を得ているんだ。 悪行は見えないところで・・・って感じだ。だから、国や軍が直接動くわけにはいかないんだよ で、民間で秘密裏に対応してくれる所はって考えたときに・・・サイト君が浮かんだわけだ」 う~~~む。と考え込むサイト君。 「条件があります。それを飲んでくれれば、考えましょう」 「貴様!!まだ言うか!?」 「ブレグジット殿、落ち着いてください。ここは我慢です」 貴族激高!元上司が宥める構図。なかなか見応えがある。 「分かった。条件だな。今、述べられるか?」 「えっと・・・まず、一つ。経費は国持ちで、あと報酬はこっちで決める。大丈夫、破格な値は出さないので」 うむと元上司。貴族は顔真っ赤。 「次、え~~二つ目!うちの孤児院と学校に協力金を出すこと。未来永劫ね」 むむむと元上司。貴族は・・・血管切れるんじゃないか? 「で!最後に・・・・。これが一番重要です。これを飲んでくれなければ、仕事を受けない」 「申してみよ」 「では、それは・・・・・」 「「それは・・・・?」」 この会談後、貴族が救急医療チームよって運ばれていくのを多くの国民が目撃することとなった。 ・・・・となるような正夢を見せられた。今日は波乱な一日となりそうだ。 軍を引退して民間生活を堪能しているサイトが各国の勇者達を成敗!していく。多くの人間を巻き込み、様々な事件に自ら絡んでいく。 さらに勇者とは?という根本的な問題にも絡んでいく。 異世界を舞台にした魔法×現代科学が織り成す断罪ロード!

元悪の組織の怪人が異能力バトルなどに巻き込まれる話(旧題:世の中いろんなヤツがいる)

外套ぜろ
ファンタジー
 狼谷牙人は、いわゆる「悪の組織」に改造手術を受けた「悪の怪人」だった。  その組織が正義のヒーローに敗れて滅亡してからはや一年。正体を隠してフリーター生活を送っていた彼は、ひょんなことから路地裏で「異能力」を操る者たちの戦闘に巻き込まれる。 「君の力も、異能力だ」 「違うな」  謎の勘違いをされた牙人は、異能力の世界へと足を踏み入れることになる……。  どうやら、この現代社会には、牙人のように「不可思議な事情」を抱えた者たちがそれなりに暮らしているらしい。  ——これは、そんな彼らの織り成す、少し変わった青春の物語。  不定期更新。  カクヨム、小説家になろうでも連載中。

傭兵少女のクロニクル

なう
ファンタジー
 東部戦線帰りの英雄、凄腕の傭兵、武地京哉(たけちきょうや)は旅客機をハイジャックした。  しかし、そのもくろみは失敗に終り旅客機は墜落してしまう。  からくも一命を取り留めた彼だったが、目を覚ますと、なぜか金髪碧眼の美少女になっていた。  運がいい、そう思ったのも束の間、周囲には墜落を生き延びた乗客、修学旅行中の高校生まるごと1クラスがいた。  彼がハイジャック犯だとばれたら命はない。 「わ、私はナビーフィユリナ11歳。ハイジャック犯ですか? し、知らないですねぇ……、くっ……、くっころ……」  そう、こんな少女の身体ではすぐに捕まってしまう……。  だが、しかし、 「え? これが、私?」  そう、痛んだ髪をしっかりトリートメントされ、汚れた服も白いワンピースに着替えさせられてしまったのだ。 ※小説家になろう様、ハーメルン様、カクヨム様にも投稿しています。

ホメオティック仮面ライダー

十八十二
ファンタジー
2009年、当時七歳の少年が100メートル走にて12秒06という驚異的な記録をたたき出した。  その少年の名は奥播磨。  同年、またも彼は世間を騒がせた。『行方不明になった未来のオリンピック選手』として。  この事件をキッカケに次々と明るみになる少年少女の失踪事件。その誰もが何か一つの事に秀でた、いわゆる神童達ばかりであった。  連日の報道、世間はその話題で持ちきりになった、その年だけは。  十年後。  闇の中を疾走する大小二つの影。  支配者の時代を二つの影は突き破る。  命の灯火を燃やしながら。

ただ、愛を貪った

夕時 蒼衣
恋愛
SNSの掲示板で知り合った男性に会い、その日のうちに私は彼の愛人になる。どんだけ酷いことをされても、あなたが好き。彼には奥さんと息子がいる。一生、愛人止まりだとしても構わない。私は彼を愛している。そんな私を愛している。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

Angel's Ring

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
おっちょこちょいの天使ディディエの冒険ストーリーです。 【天使の探しもの10題】 01 探し物は見つかりますか 02 強大な力の使い道 03 分けられた自分と試練 04 石が告げた言葉 05 人の体と天使の心 06 はじめて経験したこと 07 知らない場所の生活 08 どこにもいない 09 人間の愛をもてあそぶ 10 二人がいなくなった世界 お題配布元 ぴんくのもも様 ※このお題は「ぴんくのもも」様の「あなたのオリキャラお題企画」にて、作っていただいたものです。 「天使の探しもの」の登場人物・ブルーとノワールで作っていただいたのですが、それを今回は天使・ディディエで書いていこうと思っています。 お題は順不同で消化していきます。 ※ものすごく長い間、途中で放置していた作品をなんとか仕上げようと思います。(;^_^A ややコメディ。

辺境の最強魔導師   ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~

日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。 アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。 その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。

処理中です...