見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二七六

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「俺はふざけている訳ではない。大真面目だ。殿下の頼み事とは言え、今から帝国に喧嘩を売る。邪神にもだ」

 俺は語気をやや強めた。

「お前たちを軽んじる訳ではないが、一般人であることに変わりはない。帝国とやれるのか?邪神ともやれるのか?」

 俺の言葉にオレコは言葉を呑み込んだ。
そうだ。
それでいい。
俺はもう普通の人間ではない。
ネオジョルトと言う居場所もある。

 しかし彼らは帝国から目を付けられれば、一生流浪の身だ。
そんな目に遭う必要など無い。
第一、これは彼らには関係のない話である。

 俺は三人の顔をゆっくりと見渡してから踵を返した。
ドアを開ける。
外にはもう、衛兵たちの姿は無かった。

 さて。
どこから手を付けようか。
と言っても、俺にはレンジャーのような特殊な侵入技術は無い。
情報も酒場で集めるような、一般的な冒険者の方法しか知らない。

 となれば仕方がない。
正面から行くか。
別にオオムカデンダルのように全てを強引に突破しようとか、そう言う訳ではない。

 こう言う時は改造人間で良かったと思える。
俺は、変身して一人ずつ排除しながら侵入する事にした。

「変……」

 変身しようと回転しかけた時。

「レオ」

 俺は驚いて声の方向を向いた。

「どうやって入るつもりだ?」

 カルタスだった。
オレコもトラゴスも全員いる。

「何しに来た。もう付いてくるなと言った筈だ」

「ま、そう言うなよ」

 俺の言葉など少しも意に介していない。

「どうせ入れなくて途方に暮れてるんじゃないかしらと思ってね」

 オレコがそう言って肩をすくめた。

「大きなお世話だ」

「あら、じゃあどうやって入る気だったか言ってごらんなさいよ」

「……別にそんな事を言う必要など」

「どうせあれでしょ。力業で全て倒しながらとかそんなところでしょ?」

 それは違うぞ。
一人ずつ排除しながらだ。

「同じ事を違う言葉で言ってるだけじゃない」

 いや、倒すのは必要最低限だけだ。

「でも見つかったら殺すんでしょ?」

 それは……仕方あるまい。

「あーあ。これだから素人は」

 オレコがため息をつく。

「あのねえ。例え一人だろうが百人だろうが、死体を出した時点で失敗なのよ。判る?潜入を甘く見ないで」

 なぜか怒られている。
なぜだ。

「まだ判らんのか。後に引けなくなると言っている」

 俺は三人に対してもう一度強く言った。

「うふふふ。優しいのよねえ、レオは」

 オレコが目を細めて言った。
何を言い出す気だ。

「私たちの事を心配してそこまで言うなんて。もう、ジュンとしちゃう」

 いや、ジュンとはならないだろお前は。
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