見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二七三

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「……いや、知らぬ」

 ソル殿下はそう言って首を横に振った。

「だが、古の怪物たちを呼ぶと聞いている。奴らが本当の事を言っておれば、だが」

 古の怪物。
それはやはり、俺が戦ったサイクロプスやキメラだろうか。
ひょっとすると、他にも喚べるのかもしれない。
決めて掛かるのは止めた方がいい。

「最後にもう一つ。ソル殿下はなぜ私にこの話を?」

 そうだろう。
ネオジョルトはあの時、帝国に敵対したのだ。
それを皇族が忘れる筈はない。
ましてや無かった事になど出来る訳がないのだ。

 皇帝陛下に弓を引いたも同然。
俺をその一味とハッキリ認識しているのに、なぜ俺に頼むのか。

「そんなに不思議かのう」

 ソル殿下は微笑んだ。
こんな表情もするのか。
俺は意外に思った。

「訳は簡単じゃ。お前たちは強いからのう。ワイバーンを蹴散らすなど未だに信じられぬ」

 そんな理由で?
俺たちだって、十分に得体の知れない怪しげな奴らだと思うが。

「……そんな簡単に信用して良いのですか?私だって怪しい者には違いないと思うのですが?」

 俺はソル殿下の表情を確かめながら言った。

 ドンッ!

「ちょっとアナタ!また何を言ってるのよ!」

 オレコが俺の背中に肘打ちを見舞った。

「ホッホッホッホッホ」

 ソル殿下が笑った。

「確かにのう。お前の言いたい事はわかるぞ。だが、敵はネオジョルト討伐の為の軍じゃ。ネオジョルトの一味であるお前は適任だと思うのじゃが?」

 そう言ってソル殿下はまた笑った。

「なに!」

 カルタスが短く叫んだ。
オレコも息を呑むのが判る。

 いずれバレるとは思っていたが、別に隠していた訳ではない。
面倒だから言わなかっただけである。

「アナタ……ネオジョルトなの?」

 オレコが動揺した声で言う。
だがそれは今、どうでも良い。

「それだけでしょうか?殿下、他にも理由はあるのではないですか?」

 それだけの理由ならお互いをぶつければ良いだけだ。
わざわざ俺を呼ぶ必要も、理由を明かす必要もあるまい。

 『助けてくれ』と言う理由にはならない。
なぜ協力を俺たちに仰ぐのか。

「あの赤子はまだ生きておるのじゃろ?」

「はい」

 ソル殿下の言葉に俺は頷いた。

「だからじゃ」

 うん?
よく意味が判らない。

「あれは兄上の子じゃ」

 なんだと。

 第一皇子の子?
それを帝国が殺すと言うのか?
なぜだ。

「あれはのう、忌み子じゃ。お前も背中のアザを見たのであろう?」

 確かに見た。
背中にはナイーダと同じく、動くアザがあった。

「お前は知らぬかもしれぬが、あれはややこしい。特に帝国にとっては邪魔な物」

 ソル殿下は真顔になって俺を見た。
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