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二七二
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オレコが後ろから俺の背中をつついた。
「何とか言いなさいよ」
小声で言う。
言えって何をだ?
俺だって訳が判らないのだ。
あまり発言したくないが仕方がない。
俺は皇子に尋ねた。
「私が殿下をお助けするとはどう言う事ですか?」
ソル殿下はゆっくりと顔を上げた。
「頼みを聞いてくれるかえ?」
聞いたらたぶん断れまい。
だから返事を渋っていたのだが。
「それは聞いてみなければ何とも……」
バシッ!
言い掛けたところで頭を叩かれた。
何しやがる。
「そこは、『何なりと』でしょ!」
オレコが小声で叫ぶ。
他人事だと思いやがって。
俺には俺の事情と言う物があるのだ。
あれだけ事を構えたのに助けてくれと言われては、素直に話を聞くのは難しい。
ましてや皇族の揉め事ならば首を突っ込むのは得策ではない。
「ふふ……まあよい。聞け」
ソル殿下は少し笑ってから話し始めた。
「実はの、お前たちと出会うた後、兄上がお前たちの討伐を思い立ったのじゃ」
兄上とは、第一皇子か。
名前は何と言ったか。
「あれだけの手勢でこっぴどくやられたからのう。しかも目的も果たせなんだ」
目的とは、例の赤子か。
やはり始末する気だったか。
「父上は何も言わなんだが、兄上は気性が荒い。だが猪突猛進と言う訳でもない。話を詳しく部下から聞いたようじゃ。それで特別に戦力を編成しようと言い出した」
オレコが言ってた、対ネオジョルト軍か。
「帝国軍の人員を温存する為、外部から精鋭を集めたらしいが、怪しい奴が多くての。ブラックナイト級冒険者が四人、素性の知れない魔法職が三人、それから将軍が二人、兵士は三千じゃ」
俺たちの為にそれだけ揃えたか。
それでも足りないだろうが、普通に考えればやり過ぎなくらいの規模だ。
それに帝国の将軍は確か七人居た筈だ。
二人は撃破しているが、また別の将軍がお出ましなのか。
それとも。
「冒険者も中々怪しいがの。ハイパーナイト級からブラックナイト級へ上がったばかりの者たちらしいが、実力はドラゴンナイト級だと言う。にわかには信じられぬのう」
そんな怪しい連中をなぜ選んだのか。
「兄上が連れてきたのじゃ。その連れてきた魔導士が冒険者を連れてきた。栄えある帝国にそんな怪しげな連中を招き入れるなど余は反対じゃ」
ソル殿下は穏やかな喋り方とは裏腹に、怒りを滲ませた。
「殿下。一つお聞きしたく存じますが、よろしいでしょうか」
俺はただ一つの聞きたい事を口にした。
「なんじゃ」
「その魔導士は、召喚術を使うのですか?」
「よう知っておるな。その通りじゃ」
ここまではオレコに聞いた内容だ。
「では何を召喚するかご存知でしょうか?」
「何とか言いなさいよ」
小声で言う。
言えって何をだ?
俺だって訳が判らないのだ。
あまり発言したくないが仕方がない。
俺は皇子に尋ねた。
「私が殿下をお助けするとはどう言う事ですか?」
ソル殿下はゆっくりと顔を上げた。
「頼みを聞いてくれるかえ?」
聞いたらたぶん断れまい。
だから返事を渋っていたのだが。
「それは聞いてみなければ何とも……」
バシッ!
言い掛けたところで頭を叩かれた。
何しやがる。
「そこは、『何なりと』でしょ!」
オレコが小声で叫ぶ。
他人事だと思いやがって。
俺には俺の事情と言う物があるのだ。
あれだけ事を構えたのに助けてくれと言われては、素直に話を聞くのは難しい。
ましてや皇族の揉め事ならば首を突っ込むのは得策ではない。
「ふふ……まあよい。聞け」
ソル殿下は少し笑ってから話し始めた。
「実はの、お前たちと出会うた後、兄上がお前たちの討伐を思い立ったのじゃ」
兄上とは、第一皇子か。
名前は何と言ったか。
「あれだけの手勢でこっぴどくやられたからのう。しかも目的も果たせなんだ」
目的とは、例の赤子か。
やはり始末する気だったか。
「父上は何も言わなんだが、兄上は気性が荒い。だが猪突猛進と言う訳でもない。話を詳しく部下から聞いたようじゃ。それで特別に戦力を編成しようと言い出した」
オレコが言ってた、対ネオジョルト軍か。
「帝国軍の人員を温存する為、外部から精鋭を集めたらしいが、怪しい奴が多くての。ブラックナイト級冒険者が四人、素性の知れない魔法職が三人、それから将軍が二人、兵士は三千じゃ」
俺たちの為にそれだけ揃えたか。
それでも足りないだろうが、普通に考えればやり過ぎなくらいの規模だ。
それに帝国の将軍は確か七人居た筈だ。
二人は撃破しているが、また別の将軍がお出ましなのか。
それとも。
「冒険者も中々怪しいがの。ハイパーナイト級からブラックナイト級へ上がったばかりの者たちらしいが、実力はドラゴンナイト級だと言う。にわかには信じられぬのう」
そんな怪しい連中をなぜ選んだのか。
「兄上が連れてきたのじゃ。その連れてきた魔導士が冒険者を連れてきた。栄えある帝国にそんな怪しげな連中を招き入れるなど余は反対じゃ」
ソル殿下は穏やかな喋り方とは裏腹に、怒りを滲ませた。
「殿下。一つお聞きしたく存じますが、よろしいでしょうか」
俺はただ一つの聞きたい事を口にした。
「なんじゃ」
「その魔導士は、召喚術を使うのですか?」
「よう知っておるな。その通りじゃ」
ここまではオレコに聞いた内容だ。
「では何を召喚するかご存知でしょうか?」
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