見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
272 / 826

二七二

しおりを挟む
 オレコが後ろから俺の背中をつついた。

「何とか言いなさいよ」

 小声で言う。
言えって何をだ?
俺だって訳が判らないのだ。

 あまり発言したくないが仕方がない。
俺は皇子に尋ねた。

「私が殿下をお助けするとはどう言う事ですか?」

 ソル殿下はゆっくりと顔を上げた。

「頼みを聞いてくれるかえ?」

 聞いたらたぶん断れまい。
だから返事を渋っていたのだが。

「それは聞いてみなければ何とも……」

 バシッ!

 言い掛けたところで頭を叩かれた。
何しやがる。

「そこは、『何なりと』でしょ!」

 オレコが小声で叫ぶ。
他人事だと思いやがって。
俺には俺の事情と言う物があるのだ。
あれだけ事を構えたのに助けてくれと言われては、素直に話を聞くのは難しい。
ましてや皇族の揉め事ならば首を突っ込むのは得策ではない。

「ふふ……まあよい。聞け」

 ソル殿下は少し笑ってから話し始めた。

「実はの、お前たちと出会うた後、兄上がお前たちの討伐を思い立ったのじゃ」

 兄上とは、第一皇子か。
名前は何と言ったか。

「あれだけの手勢でこっぴどくやられたからのう。しかも目的も果たせなんだ」

 目的とは、例の赤子か。
やはり始末する気だったか。

「父上は何も言わなんだが、兄上は気性が荒い。だが猪突猛進と言う訳でもない。話を詳しく部下から聞いたようじゃ。それで特別に戦力を編成しようと言い出した」

 オレコが言ってた、対ネオジョルト軍か。

「帝国軍の人員を温存する為、外部から精鋭を集めたらしいが、怪しい奴が多くての。ブラックナイト級冒険者が四人、素性の知れない魔法職が三人、それから将軍が二人、兵士は三千じゃ」

 俺たちの為にそれだけ揃えたか。
それでも足りないだろうが、普通に考えればやり過ぎなくらいの規模だ。
それに帝国の将軍は確か七人居た筈だ。
二人は撃破しているが、また別の将軍がお出ましなのか。
それとも。

「冒険者も中々怪しいがの。ハイパーナイト級からブラックナイト級へ上がったばかりの者たちらしいが、実力はドラゴンナイト級だと言う。にわかには信じられぬのう」

 そんな怪しい連中をなぜ選んだのか。

「兄上が連れてきたのじゃ。その連れてきた魔導士が冒険者を連れてきた。栄えある帝国にそんな怪しげな連中を招き入れるなど余は反対じゃ」

 ソル殿下は穏やかな喋り方とは裏腹に、怒りを滲ませた。

「殿下。一つお聞きしたく存じますが、よろしいでしょうか」

 俺はただ一つの聞きたい事を口にした。

「なんじゃ」

「その魔導士は、召喚術を使うのですか?」

「よう知っておるな。その通りじゃ」

 ここまではオレコに聞いた内容だ。

「では何を召喚するかご存知でしょうか?」
しおりを挟む
感想 238

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

魔王城の面子、僕以外全員ステータスがカンストしている件について

ともQ
ファンタジー
昨今、広がる異世界ブーム。 マジでどっかに異世界あるんじゃないの? なんて、とある冒険家が異世界を探し始めたことがきっかけであった。 そして、本当に見つかる異世界への経路、世界は大いに盛り上がった。 異世界との交流は特に揉めることもなく平和的、トントン拍子に話は進み、世界政府は異世界間と一つの条約を結ぶ。 せっかくだし、若い世代を心身ともに鍛えちゃおっか。 "異世界履修"という制度を発足したのである。 社会にでる前の前哨戦、俺もまた異世界での履修を受けるため政府が管理する転移ポートへと赴いていた。 ギャル受付嬢の凡ミスにより、勇者の村に転移するはずが魔王城というラストダンジョンから始まる異世界生活、履修制度のルール上戻ってやり直しは不可という最凶最悪のスタート! 出会った魔王様は双子で美少女というテンション爆上げの事態、今さら勇者の村とかなにそれ状態となり脳内から吹き飛ぶ。 だが、魔王城に住む面子は魔王以外も規格外――そう、僕以外全てが最強なのであった。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...