見知らぬ世界で秘密結社

二五〇

 ジュララララララララッ！

 手首の中へと触手が引き戻される。

 ゴオッ！

 同時に背部から炎が噴射され、体を強く押す。
二つの力により、体は高速で地面へと接近した。

 ドオオオンッ！

 轟音と共に巻き上がった大量の土砂が降り注ぐ。
両足に込められたエネルキーが、巨大なハンマーのように大地を打った。

 ドグワララッ！

 えぐれた地面がそのまま崩れ、蟻地獄のように地下へと沈みこむ。
崩落か。狙い通りだ。

 土砂ごと地下に降り立った俺は辺りを見渡した。
確かに人工的な通路だ。
人の手が加わっている。

 だが明かりはない。
暗い通路が奥へと続いている事だけが判る。

しかし、変身している間は暗闇も関係が無かった。
この目は暗闇でも昼間のように見通せる。
俺は迷うことなく通路を進んだ。
聴覚も、視覚も、レーダーも、感度を最高まで上げる。
どんな反応も異変も見逃さない。

 通路はなだらかに下っている。
どんどん地下へと向かっていた。
奥は広くなっているようだ。
かなり広い空間を感知している。

「おかしい。何の反応もない」

 せめてミーアの反応くらい無ければ話が違ってくる。
俺は大広間へと辿り着いた。
だが人はおろか、ネズミ一匹居やしなかった。

 やはり騙されたのか。
俺は舌打ちした。

「レオさん。熱感知はどうでしょう」

 管理人の声がした。

 熱感知。
 
空間や物体の温度を視るあれか。
俺は初めて熱感知センサーなるものを使った。
視界が独特の物に変わる。
温度の高さを色で視るのだ。

「ん？」

 これは、何人か人間らしき形が見える。
人肌の温度だ。
五人……いや、六人いる。
俺は祭壇の近くへ寄った。

 祭壇には小柄な人間の温もりが見えた。
これは、だいたいミーアの体型に当てはまる。

「わずかな時間ながら、ここに居たようですね」

 管理人が言った。
つまり逃げられたと言うことか。
例の異界の門とやらか。

 くそっ、サフィリナックスカタラクトの衝撃か。
そりゃそうだ。
地面を崩落させるような衝撃ならバレない方がおかしい。

 それにしても異界の門と言うのは相当に厄介だ。
慎重を期さないと簡単に逃げられてしまう。

「ミーア……」

 俺は拳を強く握りしめた。
いったい奴らは、ミーアをどうするつもりなんだ。
少なくとも、今はまだ生きてはいる。
だが、それもいつまでの話なのかは判らない。

 きっと怖い思いをしているに違いない。
一刻も早く助け出してやる。

 ともかく、手がかりはゼロになってしまった。
一度戻って、キメラをもう一度締め上げるしかなさそうだ。

 俺は走って地上へと戻った。
すぐにボードへと飛び乗ると、一路村へと飛んだ。

「令子さん、キメラは？」

 俺は村へ戻ると、メタルシェルへと飛び込んだ。