見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二二九

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「くっ……令子さん!」

 俺は何とか近づこうと試みたが、さすがに竜巻の強風に体を持っていかれる。
パワーでは如何ともしがたい。

「どうやってあの中に身を置いているんだ……?」

 俺は竜巻の中で平然とたっている令子を見た。

「危ないわよ。無理しないで離れていなさい」

 令子がこちらを見ずに言う。
戦闘中だと言っていたな。
相手は何処だ。

 俺は辺りを見渡す。

グオッ!ドシャーアンッ!

 大木が風に乗って飛んでくる。
俺の真横にそれが突っ込んで来た。
地面に激突し、そのまま大地をえぐる。
生身の人間では一溜りもない。

 俺は変身した。
このままでは立っているのもやっとである。

 変身したことで、多少は風の影響に抵抗できる。
しかし、一向に敵が見当たらない。

「令子さん、敵はどこに?」

「森の中にいるようだけど、姿を見せてくれないのよ。シャイねぇ」

 令子はそう言うと、うふふと笑った。
どこまで本気なんだ。

 とすると、この竜巻は森の中から何者かの攻撃と言うことか。
魔法使いか。

 そもそもが竜巻召喚など、上級魔法だ。
この規模の竜巻はハイパーナイト級以上のウィザードでなければ無理だ。

 なぜ令子を襲う。
ひょっとしてゾンビー化の一件、こいつの仕業なのか。
だとしたら引っ込んでいる訳にはいかなかった。
何としても鉄拳を食らわせなければ。
これは敵討ちでもあり、俺の怒りでもある。

 俺は感覚を鋭敏にする。
感度を上げて辺りを探った。

 居るな。
人間大の大きさだ。森の結構深いところに居る。
あの場所からこちらが見えているのか。

 とにかく、見えているのは貴様だけではない。
こっちからも見えているのだ。
プニーフタールの信者だったなら、捕まえて色々喋ってもらおう。

 俺はそう決めると、猛烈に吹き荒れる風の中を走った。
令子を捉える竜巻以外にも、大小合わせていくつかの竜巻が存在している。
その間を縫って、俺は走った。

 令子には次々に石や大木や、様々な物がぶつかっていた。
だが、それら全てが令子には無意味だ。
巨大な大木が直撃しても、全く微動だにしていない。
恐るべき防御力だ。

 令子には令子の考えがあっての事だろうが、ここは俺に譲ってもらう。
そうしなければ、どうしても気が済まないのだ。

 びょおぉぉっ!
ごおおおおっ!

 強風が、突風が、壁のように立ち塞がる。
それをかわし、または突っ切って、俺は森の中へと駆け込んだ。

「動いた……逃げ出したか」

 レーダーに映った人影が、移動を開始した。

「逃がしはしない!」

 俺はさらにスピードを上げてヤツを追った。
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