見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二一八

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 俺は意を決して鍵を開け、ドアを開いた。

 ガチャ……ギィ……

 わずかにドアが開いた瞬間。

「おせぇぇぇんだよおおおお!」

 言葉と同時にミーアの手が飛び出てくる。
俺の喉元にガッチリと指が食い込んだ。

「レ、レオッ!」

 村長が叫ぶ。

「大丈夫だ。問題ない」

 俺はそう言うと、ミーアの手首を掴んでそのまま部屋の中へと押し込んだ。

 ガチャリ

 後ろ手にドアを閉める。
部屋の中にはハンスさんも居た。

「ゲゲゲゲゲ」

 やはり一目でおかしいと判る。
ミーアの後ろで機会をうかがっている。
何の機会か。
そんなの決まっている。

「ミーア、判るか。俺だ、レオだ」

 俺はもう一度ミーアに聞いた。

「うるせぇ、うるぜええ」

 瞳孔が開ききっている。
俺を見ているが、見えているのか、認識できているのかは疑問だ。

「管理人、この症状判るかい?」

 俺の問いに、管理人はすぐに反応する。

「いえ。該当するデータがありません」

 そうか。
いくら管理人でも知らないことは対処しようがない。

「蜻蛉洲を呼べるかい?」

「はい。少々お待ちください」

 数秒あって蜻蛉洲の声が聞こえた。

「なんだ」

「俺の妹が化物になってしまった。治せるか知りたい」

 蜻蛉洲が溜め息をつく。

「石になったり、モンスターになったりお前の周りは何なんだ」

「別に俺のせいじゃない」

 遠くからオオムカデンダルが近付いて来るのが判る。
段々と声が近くなってくる。

「いいんだよ、それで。そう言うハプニング込みでレオは泳がせてるんだから」

 知ってはいるが、本人に聞こえるように堂々とは言わんでくれ。

「なんだ、今度は怪物化か?何になった。ゴーレムか?スケルトンか?」

 ゴーレムはともかく、スケルトンはもう骨じゃないか。
何を言っているんだこの男は。
いや、ゴーレムもただの岩だが。

「よく判らない。グールのようなゾンビーのような。見た目はそのままだが、狂暴になっている。瞳孔は開いていてよだれを垂らして興奮状態だ」

 俺は自分の見ている物をそのまま彼らに送った。
とても便利な能力だ。
ウィザードが水晶を通して遠くの映像を見るような感じか。

「ふむ。なるほど……」

 蜻蛉洲がうなずく。

「へえ、これがレオの妹ねぇ。変わった趣味をしているな」

 オオムカデンダルが隣でうるさい。
最初からこんな妹が居るか。

「狂犬病に似ているが何か別の病気だな」

 病気。
治るのか。

「判らんが治るんじゃないか。ウィルスか寄生虫か調べてみよう」

 さすが、蜻蛉洲。
頼りになる。

「じゃあ連れていくよ」

「いや、そのままでいい」

 どういう事だ。

「俺がいく」
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