見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二一七

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 知っている。
ハンスさんはゾンビーの定義とは全く当てはまらない。
突然発症したりしないし、人を襲うこともない。
そもそもゾンビーには監督する使役者が必要だ。

「今のハンスはまるでグールのようだ。しかしグールはグール。人間が途中からグールになるなんて話は聞いたことがない。他に似たような事例をワシは知らん」

 グールではなく、もはや人間でもない。
だが、それならゾンビーも違うだろう。
やはりライカンスロープが近いのではないか。

「ハンスさんの外見に変化は?」

「ない。血色が無くて正気を失っている以外はな」

 外見に変化が見られないからライカンスロープの線は外しているのか。

「村長、その前に、俺はミーアを探している。どこに居るか知っているんでしょう?」

 最初のみんなの反応が気になる。

「レオ、落ち着いて聞いてくれ。ミーアは……」

 くそ、嫌な言い回しをする。
死んだなんてのはやめてくれよ。

「ミーアはハンスと一緒に風車小屋に閉じ込めている」

 なんだと。

「どういう事だ」

「判るじゃろ。発症したからじゃ」

 くそ。
やっぱりロクでもない話だったか。

 俺は考えた。
今の俺にはネオジョルトを含めて、様々な力がある。
せっかく手に入れた力、有意義に使わせてもらおう。
オオムカデンダルも『何でも出来る、もっと自由にやれ』と言っていた。

 俺は村長に向き直った。

「村長。ミーアに会わせてくれ」

「それは……」

「大丈夫だ。問題ない。それに治療できるかも含めて見てみたい」

 そうだ。
俺はまだ諦めない。
彼らなら治せるかもしれない。
彼らは石化だって治すのだ。

「治療……できるだろうか」

「やってみなくちゃ判らない。俺はこのままミーアを見殺しになんてしない」

 村長の眉間に深いシワが刻まれる。

「判った。会わせよう」

 村長は覚悟を決めたようにそう言うと、俺を風車小屋へと連れていった。

 風車小屋は静かで何の物音も聞こえない。

「ミーア、居るか。俺だ、レオだ」

 俺はドアの前でミーアに声をかけた。
その瞬間。

 ドンッドンッドンッドンッ!

 激しく内側からドアを叩く音が聞こえた。
村長が驚いたようにビクッと震える。

「あああああああ開けろおッ!出せェッ!このクソジジィああああッ!」

 効いたことも無いような汚い罵声だが、間違いなくミーアの声だ。
野太くしわがれているが聞き間違える筈もなかった。

「レオ、やはり……」

「大丈夫。俺はこの村一の冒険者、最速にして最年少ミラーナイトの記録を持つレオだ。任せて」

 俺はそう言うと、村長から鍵を受け取りドアに挿した。
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