見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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二〇九

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 町にはすぐ着いた。
この足だ。
ものの数分だった。

 さて、なるべく人の目を避けて斡旋所へ向かおう。
俺は早足で斡旋所へ向かうと、そのまま中へと飛び込んだ。

「済まない。ミラーナイトのレオだ。俺宛に何か無いか確認を頼みたい」

 俺はカウンターで自分宛の用件が無いか確認を要請した。

「かしこまりました。では、こちらにサインを」

 俺は確認の申請書にサインをして、それを受付嬢に渡した。

「確認には四日掛かります。よろしいですね」

「判った。四日後にまた来る」

 俺はそそくさと斡旋所を離れた。
四日間どうするか。
宿に引きこもるのが良いだろうが、あまり部屋から出なくても何とかなりそうな宿がいい。

 となると、少し高めの宿で色々頼めそうな所か。
危険だな。
人目につきそうだ。
しかし、食事もろくに出来ないような安普請では四日も引きこもるのはキツイ。

 ここは、思いきって高めの宿を探そう。
部屋にこもってしまえば、こっちの物だ。

 俺はすぐそこの大通りを探した。
大きな宿屋はメインストリートにあるのは定石だ。
問題はこのメインストリートに警備隊の詰所もあると言うことだ。
しかも、割りと近い。
俺は一本入った路地から宿屋の入り口と、詰所の入り口を見比べた。

 二軒隣じゃないか。
しかも斜向かいだ。
こんなに近かったのか。
誰だ、割りと近いなんて言った奴は。
俺は目頭を指で押さえた。

 やはり別の宿にするか。
いや、入り口に到達しさえすれば良いのだ。
ほんの数メートル。
サッと入ってしまえばいい。

 それで四日間こもっていれば良いのだ。
俺は覚悟を決めて、路地から大通りへと出た。
足早に宿屋のドアを目指すと、サッと中へ身を投じた。

 ふう。
ちょっとしたサスペンスだった。
俺はこの体を手にいれて以来の緊張感に、思わず苦笑いが込み上げる。

 さて、カウンターでチェックイン手続きをしなければ。
俺はカウンターで呼び鈴を鳴らした。

 チリンチリーン

 ハンドベルを二回鳴らす。
中から上品そうな親父さんが顔を出した。

「はいはい。お泊まりですね」

「ああ。すぐ部屋へ入りたい」

「かしこまりました。ご希望の部屋などは?」

「特に無いが四日ほど部屋にこもりたい。目立たない角部屋があれば頼む。無ければ構わん」

「空いていますよ。二階の上がって右奥です」

「何か頼みたいことがある時は降りてこなければ駄目か?」

「そうですなぁ。後はうちの従業員がその辺に居ればお申し付け下さい」

「判った」

 俺はそう言うと記入欄に名前を書いた。
レオではマズイか。
しかし、わざわざここの宿帳を確認する用件など、警備隊には無いだろう。

 俺はそう判断してレオと書いた。

 ガチャッ

「失礼。親父さん。何か変わった事はないかい」

 背後で顔馴染みらしい客が入ってきた。
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