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一九八
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「さて……」
オオムカデンダルが一息ついた。
「今の声はなんだ?」
間髪入れずにサルバスが口を開く。
「あー、面倒だから説明はしたくないんだが……」
いつものオオムカデンダルならそのまま話を打ち切る。
だが、今回は少し勝手が違う。
非協力的だとこちらも協力してもらえない可能性がある。
しかも賢者だからなのか、好奇心の旺盛具合と来たら蜻蛉洲に勝るとも劣らないと言った雰囲気だ。
「予備知識も無いものには、説明するのは難しいな。おいおいって事じゃ駄目かい?」
オオムカデンダルは両手を広げて肩をすくめた。
「むう……おいおいって事は、私はここに居ってもいいって事だな?」
さすがは賢者、目ざといな。
しかも居ることを嫌がってる様子もない。
むしろ居たそうな感じさえする。
「是非そうしてもらいたいね。その為に招いたと言っても過言じゃないし」
「ほお。私に何か用かな?」
オオムカデンダルの気持ちを知っているかの如く、サルバスは話をどんどん進めていく。
「ふ。話の早い爺さまだ。だったら単刀直入に言おう。うちは今、アドバイザーを求めている」
「アドバイザー?」
サルバスが首をかしげる。
「俺たちはこの世界の事をよく知らん。だから色々教えてくれる生き字引みたいな者が欲しい」
オオムカデンダルがアッサリと真意を明かした。
面倒くさい駆け引きは御免らしい。
オオムカデンダルらしいと言えばらしいが。
サルバスは『ふむぅ』と言ったまま沈黙した。
髭をいじるのは考えるときの癖なのか。
「……お主は私が誰なのか知っているのか?」
サルバスがオオムカデンダルを見た。
その目は深く鋭い。
俺は背筋が伸びた。
「いや。知らん」
対してオオムカデンダルの回答も正直そのものである。
「ならば、私でなくても良いのではないか?」
「そのとおりだ」
オオムカデンダルの失礼な返事にサルバスはまた沈黙した。
「では、なぜ私を連れてきた」
サルバスの言葉にオオムカデンダルは俺をあごで指した。
「コイツに一任してある。コイツが選んだのがアンタだって事だ。それだけだ」
その通りだがそんな言い方もあるまい。
サルバスはゆっくりと俺の方へ視線を移した。
「……なるほどな。確かにこの男も大した男だったが」
サルバスにそう言われて悪い気はしない。
伝説のドラゴンクラス、『賢者』にそう言われては。
「この男の上役がお主と言うことか」
「そう言うことだ」
サルバスは少し沈黙していたが、やがて肩を震わせた。
「はっはっはっはっ。この私を知らんとはな。はっはっはっはっ。」
「い、いや……っ!サルバスさま!ご尊顔を拝見した事のない者はたくさんおります。なにせ貴方は伝説の賢者なのですからっ!」
何故かマズルが取り繕った。
オオムカデンダルが一息ついた。
「今の声はなんだ?」
間髪入れずにサルバスが口を開く。
「あー、面倒だから説明はしたくないんだが……」
いつものオオムカデンダルならそのまま話を打ち切る。
だが、今回は少し勝手が違う。
非協力的だとこちらも協力してもらえない可能性がある。
しかも賢者だからなのか、好奇心の旺盛具合と来たら蜻蛉洲に勝るとも劣らないと言った雰囲気だ。
「予備知識も無いものには、説明するのは難しいな。おいおいって事じゃ駄目かい?」
オオムカデンダルは両手を広げて肩をすくめた。
「むう……おいおいって事は、私はここに居ってもいいって事だな?」
さすがは賢者、目ざといな。
しかも居ることを嫌がってる様子もない。
むしろ居たそうな感じさえする。
「是非そうしてもらいたいね。その為に招いたと言っても過言じゃないし」
「ほお。私に何か用かな?」
オオムカデンダルの気持ちを知っているかの如く、サルバスは話をどんどん進めていく。
「ふ。話の早い爺さまだ。だったら単刀直入に言おう。うちは今、アドバイザーを求めている」
「アドバイザー?」
サルバスが首をかしげる。
「俺たちはこの世界の事をよく知らん。だから色々教えてくれる生き字引みたいな者が欲しい」
オオムカデンダルがアッサリと真意を明かした。
面倒くさい駆け引きは御免らしい。
オオムカデンダルらしいと言えばらしいが。
サルバスは『ふむぅ』と言ったまま沈黙した。
髭をいじるのは考えるときの癖なのか。
「……お主は私が誰なのか知っているのか?」
サルバスがオオムカデンダルを見た。
その目は深く鋭い。
俺は背筋が伸びた。
「いや。知らん」
対してオオムカデンダルの回答も正直そのものである。
「ならば、私でなくても良いのではないか?」
「そのとおりだ」
オオムカデンダルの失礼な返事にサルバスはまた沈黙した。
「では、なぜ私を連れてきた」
サルバスの言葉にオオムカデンダルは俺をあごで指した。
「コイツに一任してある。コイツが選んだのがアンタだって事だ。それだけだ」
その通りだがそんな言い方もあるまい。
サルバスはゆっくりと俺の方へ視線を移した。
「……なるほどな。確かにこの男も大した男だったが」
サルバスにそう言われて悪い気はしない。
伝説のドラゴンクラス、『賢者』にそう言われては。
「この男の上役がお主と言うことか」
「そう言うことだ」
サルバスは少し沈黙していたが、やがて肩を震わせた。
「はっはっはっはっ。この私を知らんとはな。はっはっはっはっ。」
「い、いや……っ!サルバスさま!ご尊顔を拝見した事のない者はたくさんおります。なにせ貴方は伝説の賢者なのですからっ!」
何故かマズルが取り繕った。
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