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一八一
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「なんだ……あの動きは」
マズルが呆気にとられて呟いた。
「ほっほお。こりゃ凄い」
サルバスは対照的に感嘆の声をあげた。
それぞれどちらに対して言っているのかは判らない。
俺はこの間にもどんどん攻め立てた。
ヒュッ!ヒュッ!スヒュッ!
剣が風を切ってヴァンパイアを襲う。
しかし、ヴァンパイアの動きも相当な物だった。
「むぅ……!生意気だな……!」
ヴァンパイアがイライラした口調で言った。
どうやら以前のように余裕と言う訳にはいかないようだ。
その事もまた、俺に自信を与えた。
魔王と同等の力を得たのだと。
「むんっ!」
突然ヴァンパイアが攻撃に転じた。
振り下ろした剣を拳で弾いた。
「!」
一瞬の隙を突いてそのままヴァンパイアの爪が俺の体を切り裂く。
ビッ!
俺はたたらを踏んで後ろにさがる。
転倒はなんとか免れたか。
だが、服が切れた。
軽装備ながら身に付けていた金属製の胸当てに、爪痕が刻まれる。
爪で引っ掻いてこの切れ味か。
チェーンメイルも気休めだな。
俺は気を引き締めて再び斬りかかる。
「驚いたがもう慣れたぞ。今度はこちらの番だ」
ヴァンパイアも同時に前に出た。
切り払った一撃をヴァンパイアは素手で捕まえた。
「なんだと!」
間髪入れずヴァンパイアの爪先が、俺のみぞおちにめり込む。
「ぐっ!」
俺の体は、くの字に曲がって頭が前に出る。
「ははははは!」
ドカッ!
笑い声と共にヴァンパイアが俺の後頭部を痛打した。
雨でぬかるんだ地面に、顔面から突っ込む。
「どうした!まだ三分と経っていないぞ」
ヴァンパイアが嬉しそうな声で言いながら、俺の頭を蹴り続ける。
ドカッ!
ガッ!
ガシッ!
くそっ。
好き放題蹴りやがって。
俺はヴァンパイアの足が頭に当たった瞬間に、その足を掴まえた。
「むおっ!?」
ヴァンパイアの驚きの声と共に、攻守が入れ替わる。
ヴァンパイアをそのままひっくり返して今度は俺がヤツの顔面を蹴り上げた。
ドカッ!
「……くそっ。お返しだ!」
続けて蹴ろうとした足をヴァンパイアが素早く避ける。
「貴様……よくも!この私の顔をぉ……!」
「うるせえっ、お前が先に蹴ったんだろうが」
魔王との死闘とは思われない、ガキ大将同士の喧嘩の様相を呈してきた。
「これは……なかなか」
「なんなんだ。こいつら……」
サルバスとマズルの声が聞こえたが、もはやそんな事はどうでも良くなっていた。
その時。
『おい。何やってんだ、お前』
耳の奥で突然言葉が聞こえた。
いきなりで驚いたが、同時にオオムカデンダルの声だと判った。
「何って……ヴァンパイアだ」
『へぇー。で、何苦戦してるんだよ』
俺の答えにオオムカデンダルは面白くなさそうに絡んできた。
マズルが呆気にとられて呟いた。
「ほっほお。こりゃ凄い」
サルバスは対照的に感嘆の声をあげた。
それぞれどちらに対して言っているのかは判らない。
俺はこの間にもどんどん攻め立てた。
ヒュッ!ヒュッ!スヒュッ!
剣が風を切ってヴァンパイアを襲う。
しかし、ヴァンパイアの動きも相当な物だった。
「むぅ……!生意気だな……!」
ヴァンパイアがイライラした口調で言った。
どうやら以前のように余裕と言う訳にはいかないようだ。
その事もまた、俺に自信を与えた。
魔王と同等の力を得たのだと。
「むんっ!」
突然ヴァンパイアが攻撃に転じた。
振り下ろした剣を拳で弾いた。
「!」
一瞬の隙を突いてそのままヴァンパイアの爪が俺の体を切り裂く。
ビッ!
俺はたたらを踏んで後ろにさがる。
転倒はなんとか免れたか。
だが、服が切れた。
軽装備ながら身に付けていた金属製の胸当てに、爪痕が刻まれる。
爪で引っ掻いてこの切れ味か。
チェーンメイルも気休めだな。
俺は気を引き締めて再び斬りかかる。
「驚いたがもう慣れたぞ。今度はこちらの番だ」
ヴァンパイアも同時に前に出た。
切り払った一撃をヴァンパイアは素手で捕まえた。
「なんだと!」
間髪入れずヴァンパイアの爪先が、俺のみぞおちにめり込む。
「ぐっ!」
俺の体は、くの字に曲がって頭が前に出る。
「ははははは!」
ドカッ!
笑い声と共にヴァンパイアが俺の後頭部を痛打した。
雨でぬかるんだ地面に、顔面から突っ込む。
「どうした!まだ三分と経っていないぞ」
ヴァンパイアが嬉しそうな声で言いながら、俺の頭を蹴り続ける。
ドカッ!
ガッ!
ガシッ!
くそっ。
好き放題蹴りやがって。
俺はヴァンパイアの足が頭に当たった瞬間に、その足を掴まえた。
「むおっ!?」
ヴァンパイアの驚きの声と共に、攻守が入れ替わる。
ヴァンパイアをそのままひっくり返して今度は俺がヤツの顔面を蹴り上げた。
ドカッ!
「……くそっ。お返しだ!」
続けて蹴ろうとした足をヴァンパイアが素早く避ける。
「貴様……よくも!この私の顔をぉ……!」
「うるせえっ、お前が先に蹴ったんだろうが」
魔王との死闘とは思われない、ガキ大将同士の喧嘩の様相を呈してきた。
「これは……なかなか」
「なんなんだ。こいつら……」
サルバスとマズルの声が聞こえたが、もはやそんな事はどうでも良くなっていた。
その時。
『おい。何やってんだ、お前』
耳の奥で突然言葉が聞こえた。
いきなりで驚いたが、同時にオオムカデンダルの声だと判った。
「何って……ヴァンパイアだ」
『へぇー。で、何苦戦してるんだよ』
俺の答えにオオムカデンダルは面白くなさそうに絡んできた。
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