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一六三
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「てめえ、この状況でえらい落ち着いてるな。強がってみせても駄目だぜ?」
男Aが薄ら笑いで言った。
だが、本人の方が強がっているのは明らかだ。
薄ら笑いも強がりの表れ。
貼り付けたような表情がそれを物語っている。
こんな人数の真ん中に一人でやって来るヤツを、普通とは思うまい。
警戒して当然だ。
こいつらは馬鹿ではない。
面白い。
もう少し様子を見てみよう。
男Bは、悟られないように手を後ろへと回している。
一言も発しない。黙っている。
そう言う時こそ怪しいもんだ。
この状況でこいつらが出来ることと言えば、せいぜい刃物を抜くことくらいか。
鉄砲を持っているとは考えにくいが、持っていたとしても鉄砲が限度だ。
なんの問題もないように思えた。
「眉なし。テーブル挟んだ席でナイフ抜いても届かんぜ」
俺はそう言ってからエールを飲んだ。
もうジョッキは空だ。
お代わりはまだか。
男Bは『眉なし』と言われて動揺した。
気にしているのか、一応自覚はあるらしい。
「だ、誰が眉なしだ」
「アンタ以外に眉なしがいるか?全員立派に生え揃っているぞ」
そこへお代わりのエールが届く。
「エールお代わりお持ちしましたぁー……」
ウェイトレスは作り笑顔でエールを置いた。
「料理はもうしばらくお待ちを……」
それだけ言うと、そそくさと退散する。
「貴様……何者だ」
手首を押さえられたリーダー格が苦々しそうに言った。
「そんなことはどうでもいい事だ。俺は面倒ごとが嫌なんだよ。それをこんな所で物騒な話しやがって」
俺は苛立ち混じりに言った。
実際、少しはムカついている。
こっちだって無理な仕事で頭を痛めていると言うのにだ。
「てめえには関係ないだろ、引っ込んでろよ」
「関係ないけど、女子供虐めようって言うんだろ?それは無視できないだろ。普通ならな」
自分で普通と言って鼻白む。
もう普通ではないくせに。
「……わかったよ。もうしねえ。大人しく帰る」
リーダー格の男が肩を落として言った。
普通の男も安堵の表情を浮かべる。
男A、Bは驚いてリーダー格の顔を見た。
「駄目だね」
「は?」
駄目だねと言ったのは俺だ。
リーダー格の男は驚いた顔で俺を見た。
普通の男も同じ顔をしている。
いや、みんな同じ顔で俺を見ていた。
「悪党の言葉など信じられるか。お前らが約束なんて守るわけないだろ」
「な、なんて言い草だ。俺たちだって……」
「俺たちだって約束を守るってか?約束を守った相手を裏切るくらい朝飯前だろ?じゃなかったら悪党など務まるかよ」
図星だったか。
リーダー格の男が唸った。
男Aが薄ら笑いで言った。
だが、本人の方が強がっているのは明らかだ。
薄ら笑いも強がりの表れ。
貼り付けたような表情がそれを物語っている。
こんな人数の真ん中に一人でやって来るヤツを、普通とは思うまい。
警戒して当然だ。
こいつらは馬鹿ではない。
面白い。
もう少し様子を見てみよう。
男Bは、悟られないように手を後ろへと回している。
一言も発しない。黙っている。
そう言う時こそ怪しいもんだ。
この状況でこいつらが出来ることと言えば、せいぜい刃物を抜くことくらいか。
鉄砲を持っているとは考えにくいが、持っていたとしても鉄砲が限度だ。
なんの問題もないように思えた。
「眉なし。テーブル挟んだ席でナイフ抜いても届かんぜ」
俺はそう言ってからエールを飲んだ。
もうジョッキは空だ。
お代わりはまだか。
男Bは『眉なし』と言われて動揺した。
気にしているのか、一応自覚はあるらしい。
「だ、誰が眉なしだ」
「アンタ以外に眉なしがいるか?全員立派に生え揃っているぞ」
そこへお代わりのエールが届く。
「エールお代わりお持ちしましたぁー……」
ウェイトレスは作り笑顔でエールを置いた。
「料理はもうしばらくお待ちを……」
それだけ言うと、そそくさと退散する。
「貴様……何者だ」
手首を押さえられたリーダー格が苦々しそうに言った。
「そんなことはどうでもいい事だ。俺は面倒ごとが嫌なんだよ。それをこんな所で物騒な話しやがって」
俺は苛立ち混じりに言った。
実際、少しはムカついている。
こっちだって無理な仕事で頭を痛めていると言うのにだ。
「てめえには関係ないだろ、引っ込んでろよ」
「関係ないけど、女子供虐めようって言うんだろ?それは無視できないだろ。普通ならな」
自分で普通と言って鼻白む。
もう普通ではないくせに。
「……わかったよ。もうしねえ。大人しく帰る」
リーダー格の男が肩を落として言った。
普通の男も安堵の表情を浮かべる。
男A、Bは驚いてリーダー格の顔を見た。
「駄目だね」
「は?」
駄目だねと言ったのは俺だ。
リーダー格の男は驚いた顔で俺を見た。
普通の男も同じ顔をしている。
いや、みんな同じ顔で俺を見ていた。
「悪党の言葉など信じられるか。お前らが約束なんて守るわけないだろ」
「な、なんて言い草だ。俺たちだって……」
「俺たちだって約束を守るってか?約束を守った相手を裏切るくらい朝飯前だろ?じゃなかったら悪党など務まるかよ」
図星だったか。
リーダー格の男が唸った。
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