見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一五〇

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「ちなみに、僕はフィエステリアと言う『藻』の一種らしい」

 いつの間にかフィエステリアームが部屋に入ってきている。
これで幹部が四人、全員が揃ったことになる。

「藻だって?」

 俺は思わず甲高い声が出た。
驚いたのだ。

「フィエステリア・ピシシーダと言う藻がいてな。僕たちの世界ではバイオハザード・レベル3に指定されている」

 蜻蛉洲が説明する。
実は他人に物を教えるのが好きなタイプなのかもしれない。
教師向きだ。

「バイオハザード・レベル?」

「簡単に言えば、生物による災害レベルを表している。3と言うのはかなり高い。四段階中の三だからな」

 と言われてもピンとこない。

「1とか2は、いわゆる風邪とかだ。運が悪けりゃ死ぬ可能性もあるが、基本的にはじっとしていれば治るような病気、その元になる小さな生き物さ」

 風邪は生き物によるものなのか。
さっぱり判らなかったが、彼らが言うならそうなのだろう。

「だが、3とか4になってくると話が変わってくる。3は死ぬ可能性が段違いに高く、4に至っては治療法もない」

 つまり病気になると、ほぼ死ぬと言うことか。
だが、3なら治療法はあると言うことではないか?

「いや、ない」

 蜻蛉洲は即答した。

「お前はなかなか察しが良いな。頭は悪くない」

 蜻蛉洲はそう言って笑った。
どうやら褒められたらしい。

「4に指定される条件の中に、人から人へ簡単に広がる事。直接接触しなくても間接的にもうつる事、と言うものがある」

 なるほど。
簡単にうつる、つまり広がっていくのが速く、それを止めるのが難しいと言うことか。

「フィエステリアは毒を撒き散らし、空気を吸うだけでも毒にやられる。だが、通常の条件下では人から人へはうつらない。だから3なのだ」

 触れなくても同じ場所にいるだけで毒に掛かると言うのか。
まるで毒ガスだ。

「フィエステリアは俺の知り得る限り最強だよ。目に見えないほど小さく、強力な毒をもち、二十四の形に変化する。何らかの行動を起こす時、もっとも適した形になれる。もちろんフィエステリア本体その物も獰猛だ。ハッキリ言って手がつけられない。間接的に広がらないのが唯一の救いだよ」

 そう言った蜻蛉洲の顔は、言葉とは裏腹に嬉しそうだった。

 フィエステリアームが変身した姿を俺も見た。
何だか判らない、見たこともない不気味な姿だった。
目に見えない小さな『藻』だったからなのか。

 いくら最強でもあんな不気味な姿はちょっと遠慮したい。
考えれば考えるほど決められなくなっていく。
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