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一四七
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その後、数週間が経った。
何もない日々は過ぎるのが早い。
これがあの化け物揃いの連中と共に過ごす日々だとは到底思われなかった。
「レオ」
ある時、オオムカデンダルに呼び止められた。
俺は内心、ドキッとした。
「そろそろ拠点も完成する。その前にお前の改造の件を片付けておかんとな」
やっぱりその件か。
全く気乗りはしないが、どうにか断る術はないのか。
「来い。プランについて話そう」
俺はオオムカデンダルにそう言われて、後ろに着いて歩いた。
「そこへ座れ」
いつもの広間のいつもの席にオオムカデンダルは座った。
俺には向かいの席に座るよう促す。
「俺としてはこれを予定しているんだが……」
そう言うとオオムカデンダルは本のような物を取り出した。
それをテーブルの上を滑らせて俺によこす。
中には書類が綴られていた。
『改造案一』と書かれたページをめくる。
これは……
「それは『リオック』だ」
リオック?
聞いたことがない。
だが、この見た目はどう見てもコオロギだ。
「そうだな。見た目はコオロギと大差ない。だがコイツは肉食でな、かなり強いぞ」
オオムカデンダルは嬉しそうに言った。
強いったって、コオロギとは……
予想していたゴキブリよりはだいぶマシだが、どうしても虫でなければならないのか。
「そう言う訳じゃないが、強さを求めれば必然的に節足動物になるってだけだ」
セッソクドウブツ?
「面倒だから簡単に言う。昆虫とかだ」
昆虫とか。
『とか』の部分が気になるが、面倒な部分がおそらくソコなのだろう。
気にしてもあまり意味はなさそうなので、俺も気にしない事にした。
「もっと、熊とか狼とか隼とか、そう言うのはないのか?」
せめてイメージの良さそうな物にしてもらいたい。
狼や隼でももちろん嫌だが、虫はもっと嫌だと言うだけだ。
「チッチッチッチッ。あんなもん弱すぎる。意味ないね」
オオムカデンダルは人指し指を立てて左右に振った。
何故だ。
狼のどこが弱いのか。
「お前、狼と虫を比べて虫が弱いと思ってるんだろ?」
実際そうだろう。
「じゃあ聞くが、ムカデと狼が同じ大きさだったらどっちが強いと思うんだ?」
俺はハッとした。
同じ大きさならムカデの方が強いのは、誰の目にも明らかだ。
「お前は何もコオロギになる訳じゃない。コオロギの力を持った『戦士』になると言うだけだ」
言われてみれば確かにその通りだった。
しかし……
それでもコオロギになるのに喜びは感じない。
やっぱり嫌だ。
俺は残りの書類も手に取った。
期待はしないが、一応見ておいて損はないだろう。
俺はワラにもすがる思いでページをめくった。
何もない日々は過ぎるのが早い。
これがあの化け物揃いの連中と共に過ごす日々だとは到底思われなかった。
「レオ」
ある時、オオムカデンダルに呼び止められた。
俺は内心、ドキッとした。
「そろそろ拠点も完成する。その前にお前の改造の件を片付けておかんとな」
やっぱりその件か。
全く気乗りはしないが、どうにか断る術はないのか。
「来い。プランについて話そう」
俺はオオムカデンダルにそう言われて、後ろに着いて歩いた。
「そこへ座れ」
いつもの広間のいつもの席にオオムカデンダルは座った。
俺には向かいの席に座るよう促す。
「俺としてはこれを予定しているんだが……」
そう言うとオオムカデンダルは本のような物を取り出した。
それをテーブルの上を滑らせて俺によこす。
中には書類が綴られていた。
『改造案一』と書かれたページをめくる。
これは……
「それは『リオック』だ」
リオック?
聞いたことがない。
だが、この見た目はどう見てもコオロギだ。
「そうだな。見た目はコオロギと大差ない。だがコイツは肉食でな、かなり強いぞ」
オオムカデンダルは嬉しそうに言った。
強いったって、コオロギとは……
予想していたゴキブリよりはだいぶマシだが、どうしても虫でなければならないのか。
「そう言う訳じゃないが、強さを求めれば必然的に節足動物になるってだけだ」
セッソクドウブツ?
「面倒だから簡単に言う。昆虫とかだ」
昆虫とか。
『とか』の部分が気になるが、面倒な部分がおそらくソコなのだろう。
気にしてもあまり意味はなさそうなので、俺も気にしない事にした。
「もっと、熊とか狼とか隼とか、そう言うのはないのか?」
せめてイメージの良さそうな物にしてもらいたい。
狼や隼でももちろん嫌だが、虫はもっと嫌だと言うだけだ。
「チッチッチッチッ。あんなもん弱すぎる。意味ないね」
オオムカデンダルは人指し指を立てて左右に振った。
何故だ。
狼のどこが弱いのか。
「お前、狼と虫を比べて虫が弱いと思ってるんだろ?」
実際そうだろう。
「じゃあ聞くが、ムカデと狼が同じ大きさだったらどっちが強いと思うんだ?」
俺はハッとした。
同じ大きさならムカデの方が強いのは、誰の目にも明らかだ。
「お前は何もコオロギになる訳じゃない。コオロギの力を持った『戦士』になると言うだけだ」
言われてみれば確かにその通りだった。
しかし……
それでもコオロギになるのに喜びは感じない。
やっぱり嫌だ。
俺は残りの書類も手に取った。
期待はしないが、一応見ておいて損はないだろう。
俺はワラにもすがる思いでページをめくった。
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