見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一四六

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 明日も治療を受ける事を了解して、俺は与えられた自室に戻った。
部屋はいくつもあるのだ。

 世界征服を企てる秘密結社が、幹部も部下も同じ屋敷で暮らすと言うのは普通なのだろうか。
たぶん普通じゃないような気がする。
それでも特に誰も何も言わないので、俺が何かを言う立場でもあるまい。

 それから数日経ち、蜻蛉洲の言った通り俺の右肘は元に戻った。
今さら信じられないとは言うつもりは無いが、それでもやはり驚いた。

 俺の肘が治ったのを見て、ナイーダが特に喜んだ。
次は自分の両親の番だ。
期待は高まるのも無理はない。

 ナイーダは拠点が出来るまでの間、令子と蜻蛉洲に毎日呼び出されていた。
例の背中のアザである。
たぶん、あの赤ん坊も同じだろう。

「何らかのエネルギーの触媒になっている風だが、何の触媒なのかが判らん」

 蜻蛉洲が腕を組んでそう言った。
ずいぶん考え込んでいるようだった。
彼が悩むと言うことは、よほどの案件なのだろう。

 そんな中、今度はオオムカデンダルが俺を呼び出した。

「お前、改造手術を受けろ」

 は?

 なんだ、改造手術とは。

「俺達みたいになれって事だ。今のままじゃ弱すぎる」

 簡単に言ってくれる。
確かに一時は強くなった自分に自信を持っていたが、あの後、度重なる強敵に出くわし力不足を痛感していた事は間違いない。

 しかし……

 俺は別に人間を辞めたい訳ではない。
実力だって、俺はこれからまだまだ伸びる余地は十分にあるはずだ。

 第一、化け物になるのは抵抗がある。

「まあ、改造人間になるって言っても、俺たちほどに強くなるのは無理だが」

 オオムカデンダルが話を続けた。
俺の意見は聞いていないらしい。

「残念ながら、この世界では手に入らない素材が多い。先端素材や特殊な合金などだが……それでもお前はかなりの適合性を持っているからな。かなりいい線行くと思うんだよなあ」

 確かに最初、そんな事を言われた記憶はある。

「お前に任せる任務も増えるし、難しい注文も増えるだろう。覚悟を決めて怪人になれ」

 ずいぶんとハッキリ言ったな。
俺もオオムカデンダルみたいになるのか。
これはかなり悩む。

「……さすがに心の準備がつかない。少し考える時間をくれないか?」

「いいぞ。ま、でもたぶんお前は怪人になる選択肢しかないと思うがね」

 オオムカデンダルが意味深な言い方をする。
どう言う意味だ。

「あ、ちなみになんだが……その、もし俺が、もしも、その、怪人になるとしたら……どんな怪人になるんだ?」

 俺は一応聞いてみた。
さすがにゴキブリとかは無いと思いたいが、当の本人が『オオムカデ』だから油断はできない。

「なんだ、そんな事か。心配するな、ちゃんと強そうなの選んでやる」

 オオムカデンダルはそう言って笑った。
だが、何故か不安だった。
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