見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一二五

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 なんの音もしなかった。
ただ強い光が一直線に、エクスキューション・ジェイルの中へと飛び込んだ。

カキンッ!カキンッ!キンカキンッ!

 聞いたこともない甲高い音が聞こえた。
何がどうなっているのか。

「あれはなに?」

 フィエステリアームが呟く。
だが俺にも判らない。

「多少低温になっているが……百足も困惑してるな」

 オニヤンマイザーが答えた。
見えるのか?
俺には真っ白で何も見えない。

「俺たちの目は特別だからな」

 オニヤンマイザーが事もなげに言い切った。

「おい。これはなんだ?」

 オオムカデンダルの声が聞こえた。
本当だ。
オオムカデンダルは無事だった。

 一方、ライエルは対称的な表情だ。

「セント・ホーリー・レイがまったく効いていないだと……!」

 セント・ホーリー・レイ。

 魔法職の中でも『マギ』か『カーディナル』などの上級聖職者にしか使えない、神罰系の魔法だ。

 俺も初めて見た。
いや、今日は初めて見る魔法ばかりだ。

「その馬鹿げた力、悪魔の物ではないのか……」

 ライエルの言葉に俺はピンときた。
確かに彼らの力を見れば、それが普通の魔法や魔導具によってもたらされた物ではない事は明らかだ。

 悪魔の力。
そうとしか思えないほどの馬鹿馬鹿しい力。
ならば『聖なる力』が対抗策になると思うのは当然と言えば当然か。

「誰が悪魔だ。コノヤロー」

 白い闇が晴れた。
その中からオオムカデンダルが再び現れる。
まったくダメージを受けていない。
しいて言えば、表面にうっすらと霜が張っていた。

 神罰系の魔法は、悪魔うんぬんは抜きにしても、まったくダメージがない事はない。
魔に浴するような邪悪な存在には特別に効果が高いと言うだけで、セント・ホーリー・レイそのものはどんな物や相手にも一定の効果はある。

 ましてや、上位の高等魔法だ。
まともに食らえば頑強な人間の衛士でも、ひとたまりもあるまい。

 それが無傷。
味方といえども嫌になる。

「お前らは……本当に……いったい何者なのか……?」

 ライエルが心底知りたいと言う顔で呟いた。

「我々は秘密結社ジョルト……いや、『ネオ・ジョルト』だ」

 オオムカデンダルが高らかに宣言した。

 ネオ・ジョルト?
俺も初耳だが。

 何気なくオニヤンマイザーの顔を見た。

「……俺に聞くな。俺も初耳だ」

 ウロコフネタマイトも顔を反らした。

「僕は秘密結社初めてだ」

 フィエステリアームだけが素直に事態を受け止めている。

「……ネオ……ジョルトだと……!?」

 ライエルが混乱しながらも必死に理解しようとしているのが伝わる。
何故か笑えるのだが、俺はそれを顔には出さなかった。
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