115 / 826
一一五
しおりを挟む
「俺たちには愛国心があった。だからこそ個人のエゴで国を食い物にする豚どもが許せなかった。自由とわがままをはき違える馬鹿ども、平等と公平を混同する愚か者ども、そういった奴らを滅ぼして祖国を建て直す志が俺たちにはあった」
オオムカデンダルはハッキリとした口調でそう語った。
いつものオオムカデンダルとはどこか違う、確かな意志のような物を感じる。
「……だが、結果は我々の敗北で幕を閉じた。非常に残念だが仕方がない。これも運命だ。国民は俺たちよりも、政府とその先兵である『ベクターシード』の勝利を願ったのだからな」
オオムカデンダルの『ベクターシード』という言葉に、蜻蛉洲の表情がわずかに反応した。
「俺たちは元の世界には戻れない。いや、遠い未来にはどうか判らんが、少なくともこの世界では『科学』よりも『魔法』が発達している。いくら待っても俺たちが必要とする科学的な下地は発展しないだろう。俺たち自身が自ら発見でもしない限りな」
「……それが結社を再開するのと何の関係があるんだ」
蜻蛉洲はまだ懐疑的だ。
表情も言葉もオオムカデンダルの意見に納得していない。
「隠居はやめだ。この世界を俺たちの手で理想の世界にする」
「貴様……!」
「あら、大胆」
蜻蛉洲と令子はそれぞれの反応を見せた。
「ここは確かに俺たちの祖国ではないが、どこでもいい。理想郷を創る。一から歴史を創るのだ。数千年後、俺たちの名前が記された新たな『古事記』が語り継がれているだろうよ」
蜻蛉洲もさすがに口が開きっぱなしになっている。
「世界征服に破れたから今度は創世記だと?馬鹿かお前は!?」
ようやく蜻蛉洲はその言葉を吐き出した。
「もう、諦めろ。大人しくしていろよ……!」
「いやなこった」
オオムカデンダルが即答で拒否する。
「百足君、なぜ急にそんなことを?」
令子が疑問を口にした。
その質問はもっともだ。
俺も是非聞きたい。
「ここがクソみたいな世界だからさ。他に理由があるか?」
またずいぶんな言い草だな。
俺はこれでも、ここで二〇数年生きている訳だが。
「何だか判らないアザが体にあるから赤ん坊を殺す?国家の繁栄に貢献する国民だぞ。それが例え王族でもだ。人口が激減して存亡の危機だったどっかの国が聞いたら噴飯ものだ」
オオムカデンダルの言葉には怒気がこもっていた。
怒っているのだ。
「自分の国の人間を愛をもって守れない奴らなどに、国などもったいない。ましてや帝国を名乗るなど片腹痛いぜ。だったら俺たちがもらってやる。世界征服の足掛かりにでもさせてもらおう」
オオムカデンダルはハッキリとした口調でそう語った。
いつものオオムカデンダルとはどこか違う、確かな意志のような物を感じる。
「……だが、結果は我々の敗北で幕を閉じた。非常に残念だが仕方がない。これも運命だ。国民は俺たちよりも、政府とその先兵である『ベクターシード』の勝利を願ったのだからな」
オオムカデンダルの『ベクターシード』という言葉に、蜻蛉洲の表情がわずかに反応した。
「俺たちは元の世界には戻れない。いや、遠い未来にはどうか判らんが、少なくともこの世界では『科学』よりも『魔法』が発達している。いくら待っても俺たちが必要とする科学的な下地は発展しないだろう。俺たち自身が自ら発見でもしない限りな」
「……それが結社を再開するのと何の関係があるんだ」
蜻蛉洲はまだ懐疑的だ。
表情も言葉もオオムカデンダルの意見に納得していない。
「隠居はやめだ。この世界を俺たちの手で理想の世界にする」
「貴様……!」
「あら、大胆」
蜻蛉洲と令子はそれぞれの反応を見せた。
「ここは確かに俺たちの祖国ではないが、どこでもいい。理想郷を創る。一から歴史を創るのだ。数千年後、俺たちの名前が記された新たな『古事記』が語り継がれているだろうよ」
蜻蛉洲もさすがに口が開きっぱなしになっている。
「世界征服に破れたから今度は創世記だと?馬鹿かお前は!?」
ようやく蜻蛉洲はその言葉を吐き出した。
「もう、諦めろ。大人しくしていろよ……!」
「いやなこった」
オオムカデンダルが即答で拒否する。
「百足君、なぜ急にそんなことを?」
令子が疑問を口にした。
その質問はもっともだ。
俺も是非聞きたい。
「ここがクソみたいな世界だからさ。他に理由があるか?」
またずいぶんな言い草だな。
俺はこれでも、ここで二〇数年生きている訳だが。
「何だか判らないアザが体にあるから赤ん坊を殺す?国家の繁栄に貢献する国民だぞ。それが例え王族でもだ。人口が激減して存亡の危機だったどっかの国が聞いたら噴飯ものだ」
オオムカデンダルの言葉には怒気がこもっていた。
怒っているのだ。
「自分の国の人間を愛をもって守れない奴らなどに、国などもったいない。ましてや帝国を名乗るなど片腹痛いぜ。だったら俺たちがもらってやる。世界征服の足掛かりにでもさせてもらおう」
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
スキル【海】ってなんですか?
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜
※書籍化準備中。
※情報の海が解禁してからがある意味本番です。
我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。
だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。
期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。
家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。
……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。
それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。
スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!
だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。
生命の海は思った通りの効果だったけど。
──時空の海、って、なんだろう?
階段を降りると、光る扉と灰色の扉。
灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。
アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?
灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。
そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。
おまけに精霊の宿るアイテムって……。
なんでこんなものまで入ってるの!?
失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!
そっとしておこう……。
仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!
そう思っていたんだけど……。
どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?
そんな時、スキルが新たに進化する。
──情報の海って、なんなの!?
元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
探偵災害 悪性令嬢と怪人たちのギリギリな日常と暗躍
鳥木木鳥
ファンタジー
探偵は間違えない。怪人は間違い続ける。
「名探偵」彼方より降臨し、旧き神々を葬り、新世界を生み出した存在。神のように災害のように、世界を変容させる者。
「怪人」異形へ変じ、異能を操る存在。神に仇なす者。
これは名探偵配下の探偵であり、同時に怪人たちを束ねる組織の首魁である「悪性令嬢」芦間ヒフミと配下の怪人たちによる「探偵殺し」の物語。
「カクヨム」様及び「小説家になろう」様の方にも掲載しております。
【リクエスト作品】邪神のしもべ 異世界での守護神に邪神を選びました…だって俺には凄く気高く綺麗に見えたから!
石のやっさん
ファンタジー
主人公の黒木瞳(男)は小さい頃に事故に遭い精神障害をおこす。
その障害は『美醜逆転』ではなく『美恐逆転』という物。
一般人から見て恐怖するものや、悍ましいものが美しく見え、美しいものが醜く見えるという物だった。
幼い頃には通院をしていたが、結局それは治らず…今では周りに言わずに、1人で抱えて生活していた。
そんな辛い日々の中教室が光り輝き、クラス全員が異世界転移に巻き込まれた。
白い空間に声が流れる。
『我が名はティオス…別世界に置いて創造神と呼ばれる存在である。お前達は、異世界ブリエールの者の召喚呪文によって呼ばれた者である』
話を聞けば、異世界に召喚された俺達に神々が祝福をくれると言う。
幾つもの神を見ていくなか、黒木は、誰もが近寄りさえしない女神に目がいった。
金髪の美しくまるで誰も彼女の魅力には敵わない。
そう言い切れるほど美しい存在…
彼女こそが邪神エグソーダス。
災いと不幸をもたらす女神だった。
今回の作品は『邪神』『美醜逆転』その二つのリクエストから書き始めました。
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~
桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。
そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。
頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります!
エメルロ一族には重大な秘密があり……。
そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。
秘密集会
櫂 牡丹
SF
ソラは兄が幹部を務める秘密結社ニアーの集会に初参加した。ニアーの目的は支配階級である『ヤツら』へのクーデターである。そこで聞かされた地球の真の歴史はソラにとって驚くべきものだった。▼ショートショートです。空き時間にお気軽に読んで頂きたいお話です♪全2話
週末は迷宮探検
魔法組
ファンタジー
『週末は冒険者』から改題。 神代聖は、普段はアル大陸ファンタジウム王国に暮らすごく普通の女子高校生だけれど。週末になると仲間たちと共に邪竜の地下迷宮にともぐり、魔物と戦い冒険を繰り広げるという週末冒険者なのだ!
職業はレベル四の僧侶と、まだまだ未熟者で半人前だけれど。こう見えてもちょっとは名前の知られたパーティー『スカイ5』のサブリーダーとして時には防御に、時には治療に、また時には肉弾戦にと日夜頑張っているのだった。
だけどリーダーである脳筋朴念仁侍の砂川賢悟や、パーティー仲間の毒舌キショメン魔法使い、吉田敦也には色々苦労と面倒をかけられっぱなし。
冒険者アドバイザーとしてパーティーに参加してくれている、元・本職冒険者の戦士、熊さんこと熊谷雄一さんがことあるごとにフォローしてくれるからまだなんとかなっているけれど。
そんな聖の冒険中の癒しは、絵に描いたようなショタ系美少年である、召喚士の八島愁貴。
年下美少年大好きの聖はことあるごとに愁貴にアピールして、なんとかモノにしてやろうと……もとい、優しく可愛がってあげようとしているのだが。空気の読めない賢悟や敦也に、いつもいつも邪魔されてしまう。
そんな頼りになるような、ならないようないつもの仲間たちと共に、今週もまったりと冒険を楽しむはずの聖だったけれど。一匹狼の盗賊少女、芹沼小夢と出会ったことがきっかけで、とんでもない事件に巻きこまれることになる。
どうやらこの少女、なにか秘密があるようなのだけど……?
剣と魔法と魔物と迷宮がいっぱいの正統派(?)、ウィザードリィー風ファンタジー小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる