見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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一一〇

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「ぐはっ!」

 しかしルドムはたまらず、たたらを踏んで後ろへ下がる。
一方、フィエステリアームの体は剣を受け付けていない。

 一撃目はフィエステリアームが優勢勝ちか。

 藍眼鉱の鎧をルドムは過信しすぎた。
無理もない。
俺でも藍眼鉱の鎧を身に付けていれば、ダメージの心配はほぼしないだろう。

 それほどに藍眼鉱の防具は信頼性が違う。
伊達に高価な訳ではない。
それでも致命傷になっていないのを見れば、その防御力がどれ程の物かは一目瞭然だ。

 もし、今のが藍眼鉱の防具でなかったら……
想像しただけで背中が寒くなる。

「くっ……!馬鹿馬鹿しい……!」

 ルドムの言いたい事はよく判る。
こんな馬鹿馬鹿しい力を持った相手など、見たことも無いのだろう。
素手で藍眼鉱の上からダメージを与えてくる。
それ以前に、ルドムに一撃入れてくる相手などそうは居まい。

 それが子供だとは。

 いや、もはや目の前に居るのは子供ですらない。
化け物だ。

「防いだ……」

 フィエステリアームが呟く。

「それなら」

 フィエステリアームは再び突っ込む。
ルドムはまだ体勢を立て直せていない。

「やあーっ!」

「くっ!」

 フィエステリアームの渾身の一撃を、ルドムは苦しそうに何とかかわす。
あれをかわすルドムを讃えたい。
確実に顔面にヒットするタイミングだった。

「体の末端はかわされやすいぞ。かわしにくい中心部を狙え」

 オオムカデンダルがアドバイスする。
指導しているのだ。
フィエステリアームに学習させている。

「わかった」

 オオムカデンダルのアドバイスもまた的確だった。
フィエステリアームはそのアドバイスを聞いて、戦い方を修正する。

「やあ!」

 踏み込んで腹にパンチを繰り出す。
ルドムはそれを体をひねってかわす。
距離を開けずにかわす方法だ。
この間合いはルドムのものでもある。

 瞬時に攻守が入れ替わる。
ルドムの剣がフィエステリアームの首を切り落としに掛かっている。
早めに決着させたいルドムの気持ちが表れていた。

 ルドムは恐れている。

 心臓を貫いても何のダメージもないこの子供を。
藍眼鉱をものともしない攻撃力を。
そして、その成長の速さを。

 シュバッ!

 剣が空を切る。
風切り音がここまで聞こえる。
フィエステリアームの動きは次第に良くなっている。
ルドムの剣を見切っていると言ってもいい。
まったく信じられない。

 この近距離で、剣を持った帝国将軍と互角にやりあっている。

 フィエステリアームに恐怖心は恐らくない。

 だが。

 明らかにルドムにはそれがあった。
これでは互角とは言えない。
いや、やがて互角ではなくなるだろう。
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