見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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「全身骨になってしまう病気や、皮膚が石のように変質してしまう病気は実際にある。かなり珍しい病気だがどれも遺伝子情報の異常によって引き起こされる病気だ」

 オニヤンマイザーが説明する。が、まったくと言って良いほど何を言っているかは判らなかった。
要は、とても珍しい病気の一種だと言うことか。

「何らかの方法で遺伝子に傷を付け、驚くべき速さで病気を進行させていると思われる。それも、これは本物の石のようだ。これはかなり珍しい」

 オニヤンマイザーの声がウキウキしているのが伝わってくる。
好奇心の対象として見ているのか。変態め。

「彼は生物学と遺伝子研究の天才と言われた人間なの」

 令子はそう言ってナイーダの頭を撫でた。
俺でも理解できんのにナイーダに言っても無駄だろう。

「じゃあ、そうと決まれば早速我らが屋敷に案内しよう」

 オニヤンマイザーは嬉しそうにそう言うと、『家』へと向かった。
この際だ、俺も一緒に行こう。
彼女の様子も気になるし、この肘も治してもらいたい。

 ナイーダはすでに覚悟を決めていた。
自ら進んで『家』へと乗り込む。

 俺も乗り込もうとした時だった。

「貴様ら!待てェい!」

 野太い 怒鳴り声が聞こえた。
俺は声のする方を見る。

「待たんか貴様ら!何者だ!」

 声の主が剣を抜いて近づいてくる。
全身に甲冑を着込み、真っ赤なマントを身に付けている。
兜の装飾を見る。
これまた真っ赤な鳥の羽が装飾されていた。

 国軍の隊長か。
それも大隊長クラスだ。

「怪しい奴らめ。名を名乗れ」

 大隊長が眉間にシワをよせて凄んだ。

「だったらお前から名乗れよ。誰だお前」

 オオムカデンダルがいつもの調子で口を開いた。
俺は急に目眩がしてきた。

「なぁにい?」

 大隊長の形相が鬼の面相になった。

「私は冒険者。名をレオと申します。大隊長とお見受け致しますが我々に何か?」

 俺は目眩に耐えながら、何とか間に入った。

「冒険者だと?」

 大隊長は俺たち全員を、なめ回すように見渡した。

「そんな怪しい冒険者がいるか。まるでモンスターではないか」

 オオムカデンダルとオニヤンマイザーを見て、大隊長は訝しげな表情で言った。

「それはどういう装備だ。悪趣味な」

 頼むからこれ以上余計な事は言わないでくれ。
俺は心の中で大隊長に懇願した。

「それで、その大隊長様が私たちに何のご用かしら?」

 話がまったく進まないのを令子が先へとうながす。

「……まあいい。貴様ら赤子を見なかったか。ロック鳥が連れていただろう」

 やっぱりそうか。
赤ん坊を取り返しに来たのだ。

 だが。
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