見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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九九

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「君がモンスターの情報をまとめたらしいな。本当か?」

 ロック鳥を運び終えたオニヤンマイザーが戻ってきた。
何故そんな事まで知っているのか。
想像だが、おそらく動物や虫などあらゆる物を放って、俺の見聞きした事を共有しているのだろう。
いわゆる『使い魔』と言うヤツだ。

「実に素晴らしい。この世界の学者よりもモンスターについて詳しくまとめられていると聞いたよ」

 オニヤンマイザーがいつになく好意的な態度を見せている。
どういうつもりだ?

「そこでだ、君さえ良ければ僕に君の知識を貸してくれないか。僕の新たな研究対象に貢献できると思うんだが」

 なんだと。
あれほど屋敷に人間を近付ける事を嫌っていた蜻蛉洲が、自らナイーダを招き入れると言うのか。

「お前の言いたいことは判る。だが、こいつは究極のエゴイストだからな。自分の研究的好奇心には逆らえないんだ」

 オオムカデンダルはそう言ってオニヤンマイザーを見下すように鼻で笑った。

「……ふん、何とでも言うがいい。人間には二種類あるのだ。すなわち役に立つ人間と、役に立たない人間だ」

 なるほど。
究極のエゴイストとはこう言うことか。
俺はこれ以上ないほどに納得した。

「でも……」

 ナイーダが俺を横目でチラリと見た。
不安なのは当然だ。
こんな得体の知れない連中に誘われても、はい判りました、とはすぐに言えまい。

「レオ。君からも頼んでくれ」

 オニヤンマイザーが言う。

「心配ない。俺も彼らには世話になっている。彼らが君を必要だと言うのなら、君をぞんざいには扱わないだろう」

 俺はナイーダに優しく言って聞かせた。

「それに、ひょっとしたら彼らなら石化も治せるかも知れない」

 俺は自分の固まった右肘を持ち上げてオオムカデンダルに見せた。

「なんだそれ?」

 オオムカデンダルが興味深そうに俺の右肘を持ち上げる。

「石化魔法だ。コカトリスにやられた」

 俺がそう言うと、オオムカデンダルは『へぇ』とか『ほぅ』とか言いながら石化した部分を撫で回した。

「本当?」

 ナイーダが俺に掴みかかった。

「本当に石化を治せるの?」

 本当に治せるかどうかは俺にも判らない。
ただ、治せないと俺の右肘も一生このままだ。
ここは治せると言ってもらわなければ困る。

「……ふむ。これは」

 オニヤンマイザーが割って入ってきた。

「詳しく調べなければ判らないが、恐らく遺伝子異常だな」

 イデンシ異常?
なんだそれは。

「つまり病気だと言うことだ。やってみなければ判らんが、多分治せる。僕ならばな」

 やはり。
彼らなら何とかすると思っていた。
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