見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
98 / 826

九八

しおりを挟む
 一時、羽ばたこうと抵抗を試みるロック鳥も、すぐに力を失った。
あの馬鹿デカい巨体が、まっ逆さまに降ってくる。

「お、おい!」

 俺は慌てふためいた。
しかし、突然ロック鳥の落下はゆっくりした物になった。

 オニヤンマイザーがロック鳥の足を掴まえて、ゆっくりと降下してきた。
俺はまだ信じられずに目を皿のように見開いていた。

 こんなにもあっさりとロック鳥を捕獲できるのか。
国軍総出でも下手すれば全滅覚悟だというのに。

「ふっ。さすがに大きいな。象用の麻酔を10リットル使ったんだがまだ抵抗していたよ」

 オニヤンマイザーはそんなことを言いながらも、どこか満足げだった。

「さて、これで帰れるな。まったく面倒くさいったらないぜ」

 オオムカデンダルはそう言うと軽く伸びをした。
アンタはミスリル銀を受け取りに来たんじゃないのか。

「レオ……これ」

 ナイーダがバケツを差し出した。
ミスリル銀がバケツ一杯に入っている。

「拾ってくれたのか」

 俺がバケツを受け取るとナイーダは無言でうなずいた。

「ありがとう」

 俺はナイーダに礼を言うと、オオムカデンダルにバケツを差し出した。

「ミスリル銀だ。これで足りるだろう?」

 超稀少な解禁前のミスリル銀だ。
一人で持てる量としては最大量だろう。

「お、これがミスリル銀かぁ。軽いとは聞いていたが、まるでアルミだな」

 アルミとは何か。
どうせ聞いても教えてはくれまいが。

「この量で満足か?」

「ああ、満足だね。ご苦労」

 オオムカデンダルはそう言ってバケツを『家』へと運び込んだ。

 これで任務は取り敢えず終了だ。
宿に戻ってゆっくりしたい。
いや、まず風呂だ。ずいぶんと汚れたし汗もかいた。

 それから防具も新しく新調しなければ。
使いなれたスモールシールドと剣を失った。
同じものは中々手に入らないだろうが、気に入るものを見つけなければ。

 あと腹も減った。
朝飯もまだなのに、もう夕暮れ前だ。
次から次へとやりたいことが思い浮かぶ。
とにかく早く休みたい。

 俺は何気なくナイーダを見た。
特に、どこがどうだと言う訳ではなかったが、何だか表情に元気がない。
これだけの出来事の後なのだから仕方がないと言えばそうなのだろうが。

「ナイーダ。これからどうするんだ?」

 ナイーダはしばし沈黙してから、判らないと言った。
両親に会うことは出来た。
残念な結果だったとは言え、本人も生きているなどとは思っていなかった筈だ。

 だが、このあとどうすれば良いのか、まだ子供のナイーダには心の整理がつかないようだった。
しおりを挟む

処理中です...